1/11 だ……、誰が来たんだ?
仕事から帰って、すぐにまた仕事なので、バタバタと準備をはじめた。
ごはんを用意して、お風呂を洗って沸かして──
色々しているうちに、ナッくん顔を見せるかな? と思ってるけど、なかなか引き戸の隙間から姿を見せない。
「ふー……。ちょっと休憩しよう」
そう呟いて、居間へ入ると──
部屋の中央で、ナッくんが立ったまま、固まっていた。
「ただいま、なっきゅん」
私が声をかけても、固まったまんま──
怯えたようにキッチンのほうを見ている。
やがてようやく動き出したと思ったら、引き戸のほうへ行き、隙間からそーっとキッチンの様子を窺った。
隙間から少しだけ顔を出し、ゆっくりと左右に動かしている。
まるで『だ……、誰が来たんだ?』というように──
どうやら帰ってきた私がなかなか居間に入って来ないので、泥棒でも来たのかと思ったようだ。
ようやく誰もいないとわかると、こっちを向いた。
「ナッくん、おいで」
呼んでも何かを考え込んでいるような顔をして、なかなか来ない。
「ナッくん、ミルクあげよう」
そんな魅力的なことばにも反応せず、じーっと虚空を見つめている。
「ナッくん……」
思わず笑うと、やっと私の顔を見て、とたとたと歩いてやって来た。





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