5/7 ナッくんにキュンとする瞬間
私がナッくんにキュンとする瞬間などありはしない。とにかくうざい。大事なことをしている時に限って邪魔しに来る。まとめておいたゴミを開けて中身を引っ張り出す。うざい。何より毎日見ていたらキュンなんてしなくなる。見慣れてどうでもいい存在になるものだ。
そんなことを考えながら私がアパートの鍵を開け、ドアを開くなり、どこかから視線を感じた。
洗濯機の横からだ。そこにナッくんがひょこっと立って、小さな顔のつぶらな瞳でこちらを見つめていた。
ナッくん『おかえりー』
私「キュン!♡」
いや、今のはたまたまだ。たまたま見た目がオコジョみたいで可愛かっただけだ。騙されるものか。
仕事で疲れていた私はお風呂にお湯を入れ始める。どうどうと激しくお湯の音が響く浴室の扉を閉めると、荷物の片付けを始め、制服を脱ぎ、そろそろお湯が溜まった頃なので再び浴室へ──
ナッくんが足拭きマットの上で寝そべり、こちらにお尻を向けて、浴室の中にじっと聞き耳を立てていた。
クスクス笑いながら「何しとん」と声をかけると、びっくりしたようにこちらを振り向いた。
ナッくん『あれっ!?(恥)……だってお前が中にいるんだと思って、待ってたんだもん……』
私「キュンキュンっ!♡」
いやアホなだけだ。アホにキュンしてどうする。
お風呂を上がった私は足に飛びかかって来るうざいイタチの攻撃を受けながら、髪を拭きながらビールを飲む。ビールと言ってもイオンの320mlのが1本80円ぐらいのやつだ。
ナッくんが足元にぴったり寄り添って、まったりし始めた。見上げて来た。
ナッくん『好きだ』
私「キュンっ!!!♡」
思わずミルクをあげた。
それからというもの、ひょっこり毛布の間から小さな顔を覗かせたり、スーパーのレジ袋の中に入ってへそ天でこっちを見上げて来たり、しつこく遊びに誘って来ながら目が眠そうにとろんと閉じそうな顔をしたり、爪切りをしてあげたら赤ちゃんみたいな甘えた格好を見せてくれたりと、
結局今日も何回もキュンキュンさせられた。