10/27 こうすればミルクがもらえるんだぜ?
私が座椅子でスマホゲームをしていると──
左側の死角から、ズボンをチョイチョイしてくるものがある。
見ると、ナッくんが私の顔をまっすぐ見ながら、右前足でチョイチョイしていた。
頭を撫でると、プロレスごっこが始まった。
私の親指を両前足でロックして、関節技を極めようとしながら、口をおおきく開けて噛みつき攻撃を同時に仕掛けてくる。
難なく私が抜けて、背中を撫でる。悔しそうな表情でナッくんが身体をよじり、反撃してきた。
「アハハ、ナッくん」
『くくくっ…! 飼い主!』
おっとスマホゲームの途中だった。
私がそっちに戻ると──
左肘に噛みついてきた!
『もっと! もっとだ!』
『そんなものよりおれに構え!』
「うっざ!」
そう言いながら肘から引き剥がし、マウントをとって、人差し指でストンピング攻撃。
仰向けのナッくんの頭の下に手を入れて、ぐりぐりしてやると、両前足でそれを掴みながら、ナッくんが面白い顔をする。
「アハハ、ナッくん!」
『くくくっ! 飼い主!』
飽きた。
あまりにしつこい、うざい。
この永遠に続くかと思われるようなプロレスごっこから逃れるには──
ミルクを作りはじめると、急にナッくんが真面目な表情になり、プロレスごっこはあっという間に終了した。
『くくく……。こうすればミルクがもらえるんだぜ?』
そんなナッくんが癪に触るけど、仕方がない。





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