5/30 ナッくんはアホではないのかもしれない
ナッくん日記を最初のほうからお読みくださっている方はご存知と思うが、私はナッくんのことをアホだと思っている。
彼のIQはほぼゼロだと認識している。
オープンにしてあるおやつ箱を見ていつもそう思う。
その中には彼の大好きなチューブのおやつがむき出しで入れてある。
先代ハルくんならこんなことはできない。
高いところの引き出しに隠してあったこのおやつを、彼は見つけ出し、盗み出し、チューブを穴だらけにして中のおやつにありついた。
ナッくんはチューブを見ると舌を出す。中に大好きなおやつが入っていることはわかってるようだ。
でもチューブにキバで穴を開けたりはしない。
飼い主が蓋を開けてくれるのをひたすらに待っている。
私が留守のあいだもチューブはずっと無事だ。
それを私はナッくんがアホだからだと思っていた。
最近、思うようになった。
もしかしてナッくんは、アホなんじゃなくて、優しいだけなのでは?
むき出しになっているチューブのおやつを盗んだり穴を開けたりしないのは、私のことを気遣ってくれているのかもしれない──と。
そう考えたら愛しくなった。
ミルクをあげたい気持ちになった。
「ナッくーん! ミルクあげよう」
たたっと駆けてきた。
私が缶の中からスプーンでミルクの粉を掬い出すと──
背伸びをして、スプーンに鼻でアタックしてきた。
とぅーん!
スプーンの中の粉が、半分絨毯の上にこぼれた。
「あーあ……。半分になっちゃったよ?」
私がそう言ってもグイグイ背伸びで迫ってくる。
仕方なくそのまま、粉を足すことなく水を入れた。
満足そうに半分量のミルクを飲んでいる彼を見ながら、私は思った。
やっぱりこの子はアホかもしれない。