5/12 綱引き
座椅子に座り、靴下を脱ぎ──
その靴下を、じぶんのすぐ右横の床の上にぽんと置きました。
しゅるしゅる──
にょろにょろにょろと、何かが後ろからやってくる。
白くて細長い泥棒が、音を立ててしまっていることにも気づかないように、そーっとやってきて、その鋭いキバの生えた口で、私の靴下を咥えました。
「だーめだよ」
私が靴下を掴むと、綱引きが始まりました。
いや、人間様がこんなちっちゃなイタチなんかに負けるわけが……
強い!
『これはおれのふとんにするんだ』という強い意志がそうさせているのか、人間相手にちっとも負けてないナッくん!
このままでは靴下がほつれまくってボロボロに──
いやまぁ、仕事用の靴下はどれももうくたびれきってるから、それはいいか……。
全身を使ってぐいぐい後ろへ引っ張るナッくん!
その強い意志に、飼い主は──
遂にもう片方の手を使った!
首の後ろを掴まれるとフェレットは力が抜けてしまうのだ。
『ファー……』
そんなことばが似合う無念そうな顔をして、ナッくんは綱引きに負けました。





by