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2/28 微妙に違う名前で呼んでみた
ナッくんが私のベッドの上に立って何かを探している。たぶん、ロールケーキだ。
この間あげたロールケーキがめっちゃ美味しかったらしく、あれからずっとそれを探して部屋中を旅している。
ニヤニヤしながら私が見つめていても、まったく気づいていない様子──
ここで名前を呼べば、いつも振り向く。
『何か用か?』と、やって来る。
でも今日は微妙に違う名前で呼んでみた。
「とんでもなくかわいいナッく〜ん」
こっちを向いた。
しげしげと私の顔を見ている。
やがて『聞き間違いか……』みたいにあっちを向いた。
「夏次郎くん」
まったく無視された。
「夏男くん」
そんな名前のやつは知らないみたいに向こうへ行きかける。
本名で呼んでみた。
「夏!」
ぴくりとも反応せずに背中を向けた。
「ナッくん!」
『なんだよ?』みたいに振り向いた。
おもむろにこっちへやって来た。
膝の上に前足を乗せて、『ミルクくれるのか?』みたいにじっと見てくる。
やっぱりこの子は『ナッくん』だ。