11/26 ナッくんレベルアップ
最近、いつも気になっていた。
居間を出て、引き戸をぴっちり閉めて、キッチンで何かをしていて──
ふと振り向くと、引き戸が少しだけ開いている。
ぴっちり閉めたはずなのに。
それは音もなく、いつの間にか開いているのだ。
何度も書いたが、先代ハルくんはこの引き戸をダイナミックに開けた。
四本の足ぜんぶを使って、一瞬でスパーン! と、豪快な音を立てて開いた。
ハルくんが引き戸をあげるたび、私はビクッとかしていた。
これも何度か書いたが、ナッくんは腕の力だけで開けるので、遅かった。
しかもガタガタと激しく音が鳴る。
ナッくんが引き戸を開けるのを見るたび、私はふぅ、とため息をつきながら、開けるのを手伝ってあげていた。
最近はまるで幽霊が開けでもしたかのように、音もなく開いている。
どうやって開けているのだろう?
キッチンに移動した私はすぐに振り返り、その様子を観察してみることにした。
磨りガラスのむこうに白い影が浮かぶ。
そのまま、四本の足で立っている姿勢で、引き戸に横から前足をかけた。
それをすべらせるように動かす。
すると──
引き戸が音もなく、スルスルと、自動ドアのように開き、ナッくんが平常心の表情で顔を覗かせた。
どういう原理なのかはさっぱりわからない。
まるで超能力でも使っているかのように、まるで歩くように引き戸を開けられるように、ナッくんはなっているようだ。(『ように』多っ…)
人間の年齢でいえば50歳を超えて、何かがレベルアップしたのだろうか……。





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