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6/8 ひとときのたわむれ
仕事で長距離へ出発する前、忘れ物をしたことに気づいた。
スマートフォンを自分のも会社のも、部屋に置いてきていた。取りに帰らねば!
アパートまでほんの10分。
深夜なので道路脇に大型トラックを停めて、駆け足で取りに帰った。
玄関を開け、明かりをつけ、奥の居間へ。
あった、あった。充電にかけたまま置きっぱなしだった。
後ろからナッくんが私を追いかけてきた。どうやら洗濯機の後ろで寝ていたようだ。
両手を広げて飛びついてきた。
その両手を取って、見つめ合って、ふたりでダンスを踊った。
ナッくんはキョトンとした顔をして、私に踊らされるがままになってくれた。
私はにっこり、ナッくんはキョトンとしながら、ひとときのたわむれを楽しんだ。
じゃ、行ってくるね。
出ていく私を寂しそうに見送っていた。





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