6/3 飼い主が動きだすと……
飼い主は部屋にいる時、ほとんどの時間を座椅子にお尻をくっつけている。
まるで根を張った森の樹木みたいだ。
ナッくんはその木のたもとにくっついて、じぃっと木が動きだすのを待っている。
「そろそろ……洗い物しなきゃ」
木がたまにそんなことを呟く。
「あー……そろそろ洗い物しなきゃなぁ……」
そう呟きながら、ずっとスマホをいじっている。
「よしっ! 洗い物、するぞっ!」
飼い主がダラダラと立ち上がると、ナッくんか喜んだ。
『遊ぶのか!?』
ピョンピョン跳ねる。
「洗い物だよー」
『遊ぶのか!? プロレスごっこだな!?』
ダラダラ歩く飼い主の足に元気に飛びついてくる。
「洗い物だってばー」
洗い物をしているあいだ、飼い主の足のあいだで白いイタチが仰向けに寝転び、ずーっと見上げている。
『まだかー?』
「もうすぐ終わりだよー」
洗い物を済ませ、飼い主が歩きだすと、ナッくんが先に居間へ飛んでいき、マットの上でくるっと振り返る。
『さぁ、やるぞ!』
楽しい追いかけっこが始まった。





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