4/11 ナッくんのアカンとこ
すっかり春になり、外が気持ちのいいこの頃──
ハルくんは外に連れ出すのが楽しい子でした。
外に出ること自体を喜びはしないけど、外で知らないひとたちや犬たちに出会うことをとっても楽しんでいました。
出会うひとたちや犬たちの前に出ていって、挨拶してました。
ポケットを見つけたら遠慮なく潜り込んで、愛嬌を振りまいてみんなを笑顔にしてました。
抱っこしてもらったらかわいい顔で相手をじっと見つめ、指を出されたら愛想よくペロペロしてました。
飼い主が抱っこすると嫌がるくせに……。
ナッくんのアカンとこは、外に連れ出しても楽しくもなんともないとこです。
玄関の扉を開けるとタッ! と駆け出して、『おい、行くぞ』みたいにこっちを振り返るくせに、公園とかに連れて行った途端、生気がなくなります。
知らないひとたちや犬たちと出会うと、自分の存在を消そう消そうとします。
けっして彼らと目は合わさず、ぐにゃんぐにゃんのヌイグルミみたいになって、ただ撫でられるがままになります。
ハルくんは小学生に出会うとなかなか離してもらえませんでしたが、ナッくんはひとしきり撫でたらもう飽きられるみたいで、結構すぐあっちへ行かれてしまいます。
広いところに放して「さぁ、遊べ」とか言っても、すぐに飼い主の足元にすり寄ってきて、ズボンの裾から入り込んで、立ち上がって飼い主のスネにしがみついて、隠れよう隠れようとします。
飼い主がベンチに座ると必死によじ登ってきて、膝の上でおとなしくお座りして、プルプル震えながら周りを見ています。
……もう少し、部屋の中にいる時みたいにのびのびしてくれんかなぁ。