3/29 出るんだってば
仕事の途中で家に帰った。
1時間足らずでお風呂に入ってお弁当をして、その他色々しないといけない。
ナッくんのお世話ももちろんしなければ。
お風呂を入れながら冷蔵庫を開けていると、引き戸の陰からナッくんが顔を出してじっと見てきた。
かまってる暇はない。お風呂のお湯を止めに行くとついて入ってきて、じっと私を見上げてくる。
かまってる暇はない。居間へ歩くとついてきて、じっと隣で見つめてくる。
「はい、かわいい、かわいい!」
オコジョのようなかわいい生き物につきまとわれる力に負けて、頭を撫でてしまった。
「くくく、くくくく!」
ナッくんがご機嫌な声を出す。
「かまってあげてる暇はないんだよっ!」
そう言いながらも私の顔は笑い、手は白くて細長い体をがしっ! と掴んでしまう。
「くくくくく! くっ! くくくっ! くくくくくっ!」
ナッくんの嬉しがる声が騒々しくなった。
結局ナッくんとしばらく遊んでしまった。
「はっ!? いかん! もう出なければ……!」
立ち上がった私の足に、手を広げてナッくんが抱きついてきた。
だめ、だめ。もう出るんだってば!
結局、1時間ぐらい寝る時間が削られてしまった。





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