1/18 おかえりを言う前に
仕事から私が帰って、荷物を片付けて、洗い物をして、洗濯物をまとめて、ゴミを整理していると、ようやくナッくんが現れました。
少しだけ開いた引き戸のむこうから、出たり入ったりしてたかと思うと、私のリュックによじ登り、匂いをクンクン嗅ぎながら、ファスナーを口で強引に開け、中に潜り込んで、すぐに出てきました。
次には買い物してきたビニール袋に潜り込み、中をチェック。ペットボトルのウーロン茶しかないのを確認すると、やがて出てきました。
立って玉ネギを切っている私の足元に来て、匂いを嗅ぎはじめました。ズボンの裾からちょっとだけ潜り込んできます。ズボンの中で生足に抱きついてきました。爪が……いたたたた。
この間、一度も私の顔を見ません。
そろそろ『おかえり』って顔つきでこっちを見上げるかな? と思っていると、また少しだけ開いている引き戸の隙間を通って、居間のほうへのそのそと戻っていきました。
すぐにまた戻ってきて、また私の足の匂いをクンクン。外でつけてきた匂いがそんなに気になるのでしょうか。
ふと見ると、私の両足のあいだに仰向けで寝転んで、こちらを見上げていました。
『おかえりー』
そんな顔つきでじっと私の顔を見ています。
ようやく顔を見てくれました。
濡れた手で顔をわしゃわしゃしてやると、喜んで手に抱きついてきて、ガブッと噛まれました。





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