12/21 白い影【怖くないホラー】
キッチンで仕事の準備をしていると、誰かの気配を感じた。
振り返ると、しかし誰もいない。居間とを仕切る引き戸の陰からナッくんがこっちを見ているだけだ。
『気のせいか……』
再び準備を続けると、やはり誰かがいる。
白い影だ。目の端に確かに映っている。
私に、近づいてくる!
素速くそちらのほうを見たが、消えてしまった。ナッくんがいそいそと歩いてきているだけだった。
動物には霊感があるという。私はナッくんに聞いてみた。
「この部屋……私以外にも、誰か……いる?」
『いるだろ、そりゃ』
ナッくんは私のふくらはぎに抱きつきながら、そう言った。
やはり……いるのだ! 一体、何が?
お風呂で浴槽を洗っていると、後ろから足音が近づいてきた。
とても微かで、まるで小動物が肉球をフローリングにつけて歩くような音だが、確かに聞こえた。
また素速く振り向いてみたが、誰もいない……。
楽しそうに入口の段差を乗り越えて浴室に入ってくるナッくんを守って、胸に抱きしめた。
息を殺しながら、周囲を見渡す。
浴室の鏡に、不気味なものが映った。
はっきり見えた。
白い蛇のようなものが、私の首に巻きついている!
「あっ。でも、白い蛇は縁起がいいっていうから……いっか」
私の肩まで上がってきて、マフラーみたいに首に巻きついて遊んでるナッくんにそう言うと、『は?』みたいな顔をされた。
それ以来も白い影は頻繁に私の部屋の中に現れている。





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