11/16 閉まるなよー、閉まるなよー
ナッくんは私がお風呂に入っている間、ずーっと扉の外で待っている。
私が扉を開けると、待ってましたという感じで浴室に入ってくる。
入ってきて何をするわけでもないのに、とても嬉しそうだ。
洗面器の中を覗き込んだり、濡れた私の踵をペロペロしたり。
私はそんなナッくんをニコニコ見守りながら、浴槽の縁に座って、体の水分をあらかたタオルで拭く。暑い時期には開けた扉を開けっぱなしにして、涼しい空気を入れていた。
最近、寒いので、扉を開けてタオルを取ったらすぐ閉める。
ナッくんが入ってきてから、すぐにカチャンと閉めるのだが、そうするとナッくんはパニクる。
『えっ……? ええっ……!? 閉められた……』
『ど、どうしよう……。閉じ込められたっ!』
そんな感じで、浴室の扉のガラスに手をかけて、もがきはじめる。
「ママここにおるやろ」
くすくす笑いながら、私はそれにツッコむ。
「体あらかた拭いたら開けたるから、ちょっと待っとき」
そう言ってもナッくんはあたふたし続ける。
洗面器の中をチェックするのも私の踵をペロペロするのも忘れ、ひたすらにこの密室から脱出しようと試みる。
「はい、開けるでー」
カチャッと開けると飛び出して、すぐに振り向いて私の顔を見る。
『あ、危なかったな! 早くおまえもそこから出るんだ!』
そんな表情である。
そんな目に遭っても、やっぱり私がお風呂を終えてタオルを取るため扉を開けると入ってくる。
今日は暖かかったので、扉を開けたままにしといてあげた。
それでも最近ずっと閉めているせいか、ナッくんは入ってきてからしばらく落ち着かなかった。
扉のほうを何度も振り返りながら、『閉まるなよー、閉まるなよー』と不安がっている。
それなら入ってこなきゃいいのにね……!(*^^*)