11/11 ホンマおもろいやつ……
ナッくんがミルクを飲み終えた。
飲み足りなかったようだ。
わたしにグイグイおかわりを求めてくる。
「もうミルクはだめだよ〜」
あげたくなるのを必死で抑え、毛玉除去剤をお皿に入れてあげた。
薬とはいえ甘い味がついているらしく、ナッくんはこれも大好きだ。夢中でペロペロし終えると、また私の前にやってきた。
「ごはんを食べなさい」
おやつばっかり欲しがる彼をたしなめる。
でも彼の目はキラキラしてる。私の手から次のおやつが出てくるのを期待している。
「……ジャーキーあげよう」
私も甘い。甘すぎる。
ハムスター用のお肉ジャーキーがナッくんは大好きだ。久しくあげてなかったので、これならいいだろう、と私は自分で自分を甘やかした。
小さなサイコロ型のジャーキーだ。チーズ入り。
手のひらの上にコロンと置いて、ナッくんの前に差し出した。
「はい、どうぞ」
ナッくんは急いで近づいてきて、フンフンと匂った。
顔を傾けて、口を横にして、私の手を噛んでしまわないようにしながら、ジャーキーを取ろうとする。
これが受け取れないんだ、ナッくんは……
私の手を噛んでしまうことを異常に恐れるのか、ナッくんは人の手からおやつを取ることができない。
口の横から必死で受け取ろうとするが、唇をすべってしまって、ずっとコロンと落ちてしまう。
知っていながら手のひらに乗せた私は意地悪である。
頑張っておやつを取ろうとしながらコロン、コロンを繰り返すナッくんをクスクス笑って鑑賞する。
あきらめたようだ。
名残惜しそうにジャーキーを横目で見ながら、背を向けかけた。
「ごめん、ごめん。ほら」
私がジャーキーをお皿に入れると、すぐに口にくわえ、夢中で食べはじめた。
ホンマ、おもろいやつ……。





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