11/10 今日はどんな感じで
仕事から帰るといつも楽しみなことがある。
『ふふ……。今日はナッくん、どんなふうにお出迎えしてくれるかな?』
ドアを開けたらいたずら中で、慌てて逃げ出すこともある。
片付けをしてたら家具の下から顔だけ出して、じーっと見ていることもある。
大抵は寝床から出て来ながら、まだ眠たそうな顔で、あくびをしながら出迎えてくれる。
鍵を開ける音をさせ、ドアを開けた。
しーん……。
まぁ、私が帰ってもしばらく眠り続けていることも、よくあることだ。
荷物を片付け、ガチャガチャとわざと音を立てながら、スーパーの買い物を冷蔵庫に入れた。
しーん……。
ふふふ。よく眠っているようだ……。
しかしこんな時、ナッくんをおびき出す方法はよく知っている。
ミルクの缶を音を立てて取る。
勢いよく蓋をパカッと開ける音を部屋中に響かせる。
ガラスのミルク皿に、ミルクの粉をチンチンチンと必要ない音とともに入れる。
ペットボトルのキャップを必要以上に力を入れて開け、水をトポトポと入れる。
カチャカチャとかき回した。
しーん……。
「ナッくーん? ミルク作ったよ?」
しーん……。
さすがに不安になってきた。
ナッくんは隠れて寝るので、眠っている間に天国に行っててもわからない。
テレビ台の裏を覗いてみた。いない。
衣裳ケースの下を覗き込んでみた。いない。
洗濯機の横にも裏にも、バケツの中にもどこにもいない。
「じゃあ……、あそこかー」
ベッドの頭と壁の隙間にナッくん自作の豪華な寝床がある。私の靴下やティッシュなどをせっせと運び込んで作った王様のベッドだ。
ここを覗き込むのは面倒くさいのである。体を伸ばして、力を込めて、首も伸ばして覗かないといけない。
「ナッくーん?」
いなかった。
「ナッくん!?」
慌てて部屋中を探し回った。
「ナッくん! どこ!?」
探し回っていると、ナッくんとすれ違った。
ナッくんのほうも慌てた顔をしていて、どうやら私を探して動き回っていたようだ。
「ナッくん!」
『飼い主!』
アホなペットとアホな飼い主がようやく出会えた。





by