9/30 走るナッくん
気づいた。
ナッくんの走り方がカッコいいことに。
ハルは走り方がユーモラスだった。
尺取り虫みたいに背中を盛り上がらせたり、伸ばしたりして、ギクシャク走った。
背中を反らせたまま走ることもあった。
これらは主に部屋の中での走り方。
外でハルに全力疾走されたことがある。
公園で放したら、ちょっと遠くの東屋に子供連れの優しそうなお母さんを見つけたのだ。
楽しそうにお弁当を食べている家族を見つけて仲間に入りたいと思ったのだろう。私を置いて、そっちのほうへ物凄いスピードで走り出した。
「は……ハルっ! 待って……!」
私も全速力で追いかけたが、とても追いつけなかった。
ちっちゃくて手足も短いのに、矢のように速かった。
ちなみにその時は長い体をまっすぐに伸ばして走っていた。
どうやら尺取り虫みたいに走る時は、おどけているというか、飼い主を挑発しているようだ。
動物好きなお母さんでよかった。
東屋にハルが辿り着くと、子供さんともども歓迎してくれた。
ハルは一人一人の前に平等に立ち止まって、得意の愛嬌を振りまき、みんなから可愛がられていた。
ナッくんの走り方はカッコいい。
ナッくんは外では固まる。
よその家族なんかに出会ってしまったら緊張で固まり、ぬいぐるみのように動きを止める。
ゆえに外でナッくんが全力疾走したところなど見たこともないが、部屋の中ではよく駆け回る。
その時は、まるで戦闘機のようにまっすぐ走るのだ。
プロレスごっこをする時でも、背中を反らして尺取り虫のように……あれ?
ナッくんの走り方はハルと比べてカッコいいと思っていたが──
単にハルの時にフェレットの走り方を私が見慣れただけなのかもしれない。





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