4/21 モナ王大好きなナッくんが帰ってきた
長い付き合いで少しはわかるようになってきたけど、ナッくんは先代ハルくんと比べると、表情に乏しい。
フェレットバイトというおやつがある。
猫のちゅ〜るみたいな存在で、フェレットはみんなこれが大好きだ。
ナッくんも初めて与えた時から好きで、何の疑いもなくチューブから出てくる茶色い歯磨き粉みたいなそれを喜んで舐めた。
ハルくんは初めのうち、これを断固として舐めなかった。
元々『好き嫌い王子』みたいな子だったので、味をみてみることすらせずに、舐めさせようとしてもプイッとそっぽを向いた。
正直、これを好きになってもらわないと困るのである。
薬をあげる時も、爪切りをする時も、フェレットバイトに夢中になっている隙にサッサとやる必要があるからだ。
どうしても口に入れてみようとすらしないので、強硬手段に出た。
首の後ろを掴んで持ち上げると、フェレットはあくびをする。
その、大きく開いた口の中に、指先につけたフェレットバイトを入れ、舌の上に塗りつけてやった。
『うわーっ! なんてことをするんだ!』
とても嫌なものを口に入れられた表情で、ペッ! ペッ! と、吐き出そうとして──
ハルの表情が変わった。
『……ンッ?』
劇的に、変わった。
目を輝かせて、すごく嬉しそうな表情に変わった。
『おいしいね! もっとちょうだい、それ!』
そんな表情だった。
それからハルも、ふつうのフェレットと同じように、フェレットバイトを好きになってくれた。
ナッくんは最近、あれほど以前は好きだったモナ王を食べなくなっていた。
まぁ、フェレットバイトと違って、食べないならそのほうがいい嗜好品なので、困るわけではない。
ただ、あれほど好きだったものを急に嫌いになられるのは、なんだか寂しい気がしていた。
6個入りのファミリーパックの箱から最後のモナ王を取り出した。
一応、本当に嫌いになったのか確かめようと、モナカを割り、断面のアイスをナッくんに匂わせた。
クンクンして、プイッとそっぽを向いた。
やっぱり嫌いになったんだ……。
寂しいけど、最後のモナ王、一人で食べよう……。
そう思いながら食べ進めていると──
『それは何を食べてるんだ?』みたいな顔でナッくんが寄ってきた。
「モナ王やん。さっき匂い嗅いだやろ?」
そう言いながら、もう一度ナッくんに、食べかけのモナ王を差し出してみた。
ペロッ……
一口舐めた。
ペロ……ペロペロペロペロ!
止まらなくなった。
思い出したようだ。
べつに表情は変わらなかった。
お皿に入れてあげると、以前のようにモナ王に夢中。
でも表情は何も変わらなかった。





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