4/8 ナッくんに学習能力はない……と、思ってた
ナッくんは同じ失敗をよくする。
何回も高いところに昇って降りれなくなったので、仕方なく階段を作ってあげた。
入って出られなくなった袋の中に何度でも入りたがる。
何よりあれほど私に踏んづけられてるのに、平気で私の足が着地する先にチョロッと横から出てくる。
私の足を怖いものだと学習していない。
先代のハルくんに学習能力があったかどうか、正直覚えていない。
ただ、『学習能力がないなぁ』と思った記憶はまったくない。
シャンプーや耳掃除をされるのだとわかると逃げようとした。
ナッくんは何も疑わずにされるがままになり、事が始まってからようやく逃げようとする。
ハルくんのほうが、より私の足元に絡みついてきた。
一度、蹴飛ばしてしまったことはあった。しかし、踏んづけたことは、踏んづけそうになったことすら、一度もなかった。
昨日、私がお風呂に行こうとすると、ナッくんが既に浴室前に待機していた。
やってくる私を、おすわりして呑気に眺めている。
踏まないように、ナッくんから目を離さないよう、いきなり足の下にへそ天でスライディングしてきても大丈夫なように、気をつけて歩いた。
私の足がバスマットの上に乗ろうとしたその時だった──
ナッくんが突然、嫌なことを思い出したように後ずさり、私の横を距離をとりながら勢いよくすり抜けていった。
めちゃめちゃビビった顔をしていた。
なんなんだ? と考えた。
そういえばこのバスマットの上でナッくんを踏んづけたことがあった。
よそ見しながら気づかずにやって来て、へそ天になったナッくんのお腹を踏んづけたのだった。
結構前のことだが、あの時のことを思い出したのだろうか……。
もしかしてナッくん、場所で覚えてるの……?





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