1/10 ナッくんが『出来ないフリ』を始めた
私のアパートは1K。ワンルーム+キッチン。
部屋とキッチンの間を重たい引き戸が仕切っている。
先代ハルくんはこれを4本の足すべてを使い、勢いよくスパーン!と開けた。
ナッくんは2歳近くになるまでこれが開けられなかった。
しかしなんとか、たどたどしくながら、なんとか開けられるようになった。
最近ではハルくんでも出来なかった『音もなく開ける』ということまで出来るようになっていた。
さらについ最近では『閉める』ことまで……(いやこれは私がボケて勘違いしているだけかもしれないが)……出来るようになった。
しかもワープまでする(これは間違いなく私のボケ)。
そしてここ3日間ぐらいは、一歳ぐらいの頃に戻った。
引き戸が閉まっていると、磨りガラスの向こうにお座りして呆然としているナッくんの姿が透けて見える。
『開けてくれ』と言っているようだ。
『おれ、これ開けられないから……』とアピールしているようだ。
開けてあげないと諦めてキッチンで寝る。
……なぜ、そんなフリを始めたのだろう……。





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