初めての世界!
≪うっ……つうっ………いってぇな…≫
突然の、馴染んだマイベッドで寝転がっていたあの安心感から一転、灼熱の太陽から発される太陽光は、尋常ではないほどの熱気を作り上げていたが、そんな事は露知らず、透は母親がキレて、部屋からほっぽり出された程度にしか考えてなかった。
≪部屋から出すにも、もうちょっと手段を選んで欲しいもんだな…≫
と、まるで御都合解釈。ゲーム機が光り輝き機械的な人工音声が流れたことについては、脳が理解する事を拒絶しているのか、微塵も思い出さない様子。
≪……あれ………くそっ!立ち上がれない……まるで何かに縛り付けられているような………さてはあのクソババァ!部屋に入れないよう俺を縄でがんじがらめにしやがったな?!≫
別に縄で縛り付けているわけでも、母親が関与しているわけでもないのだが、実際、手足が動かせないというのは紛れもない事実であった。
しかし、どう足掻いても一向にこの現状を打破出来ずにいる透は、そもそも此処が自宅なのかどうかすら疑問に思っていると、
「初めまして、私はカティファス。貴方の初プレイをサポートする者です」
そう言って脳内に直接語りかけてきたのは、この状況を作り上げた要因であるあの機械的な音声であった。
≪頭に直接ぅ!…………あぁ、やっと思い出した!あのゲームから流れたきた声の人ですよね!すみません、助けてくれませんか?何だか立てないようになっていて…前もよく見えないし……いや待てよ…この訳のわからない状況…てんせい……転生?………………いやそんなのあり得ない…俺はまだまだプレイするゲームは残っているんだ、嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だっ!!おい、ここから出せっ!くそっくそっ出せよ!≫
「最初は誰しも、混乱するものです。貴方は魔物に転生しました。そう伝えてもいるはずです。しかも貴方はチャレンジャーだ。あの砂虫になるなんて。」
≪くそっ何、何を言ってるんだ、悪ふざけはよしてくれ!俺を、部屋に戻してくれよぉ!≫
「貴方も薄々感じてるのでしょう。貴方が立てないのは、縛られているのではなく、手足が無くなっているからだ。貴方の視界がボヤける…いや、モノクロなのは、貴方の目は退化し、発達した聴覚で音を視界として捉えているからだ。」
≪嘘だ嘘だ嘘だ!いいから戻せよぉ!≫
「はぁ、困惑して取り乱すのは分かりますが、話はちゃんと聞いてください。これは貴方の大好きなゲームの世界です。聞くところによると貴方はゲームの天才プレイヤーだそうですね。そのプレイスキルとその頭脳でこのゲームの頂点に君臨して欲しいのですっ!」
そのカティファスのこれはゲームの世界だという言葉を聞くに透はピタリともがくのをやめた。
その様子を観るとカティファスはくすりと笑ったような音を脳内に響かせゆっくりと幼子をあやすように言葉を続けた。
「勿論、貴方がそこまで戻せと仰るなら、貴方の部屋まで戻すのも吝かではありません。しかし、貴方のしたいというゲームは、本当にゲームなのでしょうか?此処には、貴方の言う命の張った本当のゲームが楽しめます。さあ、どうしますか?」
透は躊躇いもなく、そのカティファスのあからさまな挑発に答えた。
≪…そこまで言うなら教えて下さい。このゲームの操作方法を。≫
カティファスは、まるで透がそう答えるのを予知していたかのように、
本当に嬉しそうに嬉しそうに艶めかしい声で高らかに宣言した。
「ふふっ、貴方ならそう仰ってくれると思ってました!さあさあさあさあさあっ!始めましょう!!最弱魔物から始まる王者への道を!!」
こうして幕を開けた最弱魔物からの道。
果たして透は、長く険しい道のりを無事歩めることができるのか?!
続く!!……かもしれない。