ゴブリンキング
グギャ、グギャー!!
勢いよくゴブリン達が俺達に向かって襲って来た。とっさに前衛2人が盾を前にしてなんとかゴブリンの襲来を防ぐ。しかし次々とゴブリンが襲いかかってくる。リーナがファイヤーボール、ミアが矢を放つが、それよりもゴブリンの数の方が多い。
ガゴッ!!
一瞬音がした方を見ると、ミアがゴブリンキングの大刀により吹き飛ばされた。
「ミアッ!」
リーナが倒れているミアのそばに行こうとするが、ゴブリンがその背後から襲いかかった。
グギャー!!
俺はとっさにリーナにスピードアップを付与する。するとリーナはミアを引き連れ後退する。
「ハル、ありがと!」
「それより早く回復を!」
俺が回復薬を渡すとリーナがミアに回復薬を使う。その間にもゴブリン達が襲いかかってくる。死に物狂いだ。恐らくこいつらはゴブリンキングに自分達は敵じゃない、敵はあいつらだと解らせる為に俺たちを襲いかかって来てるんだろうなと思い始めた。しかしゴブリンキングはおかまい無しに周りにいたゴブリン達を次々と葬って行く。
皆立って必死に攻撃をしのぐが、ゴブリンがその手を緩めない。このままではいずれ体力が底をついてしまう。その前になんとかこの状況を打破しないとっと考えていると、ゴブリンキングが再度咆哮した。
グオー!!!
けたたましい音に体は硬直してしまう。するとゴブリンキングがこちらを向いて笑いながらやってくる。筋肉質な大きな体がより一層俺達に恐怖を与える。俺達はゴブリン相手にはなんとか凌いでいたが、ゴブリンキングが近くに来た瞬間殺されると実感してしまう。その為、理性がなくなりそれぞれが我先にと走り出す。
いやーーーー!!!
走り出す回復役2人に対してゴブリンキングが大きな大刀を振るう。
ドガッ!!
鈍い音と共に2人が吹き飛ばされ地面に叩きつけられた。それを見て俺はすぐさま助けに行こうとするが、ゴブリンキングは待っていたとばかりに俺の方に大刀を振って来た。しかし爆発音がする。リーナがゴブリンキングに攻撃を仕掛け、腕に命中する。
俺はその隙に回復役2人のそばに行き、回復薬を使う。そのまま彼女らの前で身体強化魔法を使い盾で守ろうとする。しかし多勢に無勢、ゴブリンキングの他にゴブリンも襲いかかって来た。
「おい、起きろ! 死ぬぞ!」
そう2人に伝えるが、激しく吹き飛ばされた影響か意識が戻っていない。近寄るゴブリンを振りほどこうとするが、ゴブリン数匹に俺は取り押さえられてしまった。するとその瞬間、ゴブリンキングが俺とゴブリンごと、大刀でなぎ払う。
「アガッ! ウグッ!」
吹き飛ばされながらもなんとか受け身を取り立ち上がる。痛い、痛い痛い、脇腹あたりに激痛が走る。すぐに回復薬を使おうと腰袋に手を伸ばすが感覚がない。
!!
吹き飛ばされた時に腰袋を落としてしまった。あたりを見回すと腰袋を見つけた。
ダンッ!
あっ・・・・・・腰袋に近寄ろうとした瞬間にゴブリンキングが腰袋に入った回復薬を踏みつけた。ニターっと悪意しか感じない笑みを浮かべ、よだれを垂らしながら俺の方を見るともう諦めろと言わんばかりに咆哮する。
グオー!!
轟く咆哮に死を感じた。死ぬ・・・・・・そう思ってふと横を見るとリーナがまだゴブリン達と戦っていた。そうだ、まだ死ぬわけには行かない。冷静になれ、何かこの状況を打破する方法を考えろ。その時一つの可能性を思い出した。
「皆、なんとか1箇所に集まれ!」
ゴブリンに襲われながら死に物狂いで皆が回復役2人のそばまで集まった。服は切り裂かれ、顔にはそうとう疲労が見えて来て居る。もう限界が近い。
「リーナ、俺と前衛で時間を稼ぐ! 煙玉を使え!」
「!! そうだった! なんとか護衛をお願い!」
意味を理解した皆が煙玉を用意するリーナを守ろうとする。しかし回復役2人が倒れたままの状態で、回復薬ももうない。しのぎ切れるか?と思っていた時、後方から爆発音が聞こえて来た。
ドガーン、ダーン!!
ふと見上げると奥から王子パーティーが向かって来た。
「リーナ嬢、大丈夫か!」
なんと王子パーティーが助けに来てくれたようだ。
「王子!」
王子パーティーが後方のゴブリン達を次から次へと殲滅していく。実際俺達とは装備も実力も違うのは解っていたが、これほど差があるのかっと思いながらも、皆の顔から悲壮感が少し薄れる。
グオー!!
ゴブリンキングが咆哮する。
「なっなんだ、こいつは!!」
「王子、そいつはゴブリンキングです! 手を出してはダメです。皆で逃げましょう!」
リーナがそう叫ぶが王子は笑いながら答える。
「そうかこいつがゴブリンキングか! 我らにとって不足は無い。おい! お前ら行くぞ!」
そう王子が叫ぶと呼応するかのようにパーティー全員がゴブリンキングに攻撃を開始し始めた。ゴブリンキングはその手に持つ大刀でなぎはらおうとするが、俺達とは装備も違う彼らはなんとかその衝撃を受け止める。
しかしゴブリンキングの攻撃は止まることを知らず、なかなか近づけない。時間だけが過ぎて行く中、周囲にいたゴブリン達は王子達がゴブリンキングと戦っている間に、我先にと逃げ出して行く。
膠着した状態の中、王子が死角から切りつける。
ズバッ!
やったか!っと皆が思ったが、ゴブリンキングは痛がりながらも致命傷にはならなかった。
「やっぱり攻撃しちゃだめなんだ、早く皆で逃げないと」
そうリーナが呟くが王子達には届かない。
「体は固そうだ、頭を狙え!」
王子が叫ぶと、いっせいに攻撃役が飛びかかる。
ズバッ!
ゴブリンキングの耳が削がれた。
グォーーーーーーーー!!!
痛みに堪え兼ねてゴブリンキングが叫ぶ。初めての劣勢、初めての激痛。ゴブリンキングは叫びながら、その大刀をやみくもに振り回し始めた。するとその大刀が攻撃役の1人に当たってしまった。
ドガッ!!
当たりどころが悪かったのか、吹き飛ばされた後動かなくなった。
「クソッ! おい何をしている、お前らも手伝え!」
すると俺達にも攻撃しろと王子は指示してきた。しかしこちらも満身創痍の状態。なんとかミアが矢を放つが、ゴブリンキングに当たらない。
「やはり逃げるべきです、王子!!」
リーナがそう言うが、王子は聞く耳を持たない。せっかく王子達が助けに来てくれたのに、このまま死んだら目も当てられない。なんとかしないとと考えていると、ゴブリンキングが・・・・・・飛んだ!
その巨体が空を飛ぶ、そんな可能性を微塵も考えていなかった全員が止まる。飛んだ先には王子パーティーの攻撃役2人がいて大刀で薙ぎ払われる。
ズバッ!!
明らかに致命傷な一撃が2人に入る。
ダダン、ダン、ダン・・・・・・
吹き飛ばされた2人の姿を見て王子パーティーの一人が逃げ出そうとする。
「ヒィッ、こっ殺される!」
しかし逃げようとするが足が絡まって、つまづいてしまう。ゴブリンキングはそれに気づき、攻撃しようとする。
「チッ!」
俺はつまづく彼のそばに走り抱えながら、攻撃を避ける。
「あっあっ・・・・・・助かった」
「早く起きろ!」
俺がそう言うが腰が抜けた様に、彼は立ち上がれない。そんな中残ったパーティーメンバーがゴブリンキングに牽制をかける。
「ううっ、やっぱり手を出しちゃだめだったんだ」
涙目になりながら、動けない彼が呟く。
?
「どう言う意味だ!」
震える彼は何も言わない。しかし俺に振り向かせて、おいっしっかりしろと叫ぶと彼はこう答えた。
「・・・・・・あのゴブリンキングは俺達が連れて来たんだ」
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