忍び寄る悪意
2日目、俺達は朝食を食べてから動き出した。するとリーナがふと気づいたように言った。
「他のパーティーの人達はどこまで進んだのかな? 私達も結構進んだと思うんだけど」
「そういえば昨日は誰にも会わなかったね」
「大体今半分位来たよね? ハル」
「ああ、思ったよりも順調に進んだな。もしかすると前に入ったパーティーを抜かしているかもな」
実際1日目は思ったよりも敵も弱くて順調に進んでいた。
「しかしゴブリンならもう余裕だな」
「そうだな、足さえ止めてやれば攻撃もそんなに怖くないしな。俺達も次は攻撃してみるか?」
前衛2人が意気揚々に話していると、もう1人の前衛役が気を引きしめろと窘めていた。確かにゴブリン相手だと余裕をもって倒せるのは昨日の戦闘で解っていた。そんな時、前衛2人が早速ゴブリンの群れを発見した。
どうするかと相談をする前に前衛2人がゴブリン達に静かに近づいていき、剣を振りかぶりゴブリンに襲いかかった。
グギャー、グギャギャギャギャー!
1匹のゴブリンが叫ぶと、ゴブリンに迫っていた前衛の2人の体が横から体当たりされた。ゴブリンはこちらに気づいていて、まんまと作戦にはまってしまったようだ。
「うぐっ、あっあれ?」
「痛っ!」
意識外から体当たりされた為に、何が起こったのかと慌てふためく2人。すると体当たりしたゴブリン達がそれぞれ2人に飛びついた。
ザクっ!
ゴブリンが持っていた手斧が、攻撃を庇おうとした1人の腕を切りつけた。
「痛っ!! 痛い痛い痛い! 血が、血が出てる!」
初めての劣勢に前衛2人は混乱し周りが見えておらず、逃げようとやみくもに走り出した。するとそこには回復役の2人が立っていた。
「キャッ」
「うわっ!」
前衛役と回復役が勢いよくぶつかり倒れてしまった。そこにゴブリン達が襲いかかる。
グギャッグギャー!
これはまずいと俺がゴブリン達に体当たりをした、するとリーナが叫ぶ。
「ファイヤーボール!」
「行けーー!」
吹き飛ばされたゴブリン達にタイミングよくリーナとミアが魔法と矢を放つ。ゴブリンに命中したが、すぐさま残っていたゴブリン3匹が倒れている仲間に向かってくる。俺は立上り仲間の前に立ち、自分に身体強化魔法をかける。相変わらずオーラの形がイビツだ。でも無いよりましだ。
持っていた盾でゴブリン達の攻撃を受け止めるとゴブリン達が弾け飛んだ。
「皆落ち着け! 怪我した奴は後ろに下がって回復、それ以外は立ってリーナとミアのそばによれ!」
「俺も付き合うぜ!」
残っていた前衛1人が俺の横を通り過ぎ、倒れているゴブリン1匹に剣を振りかぶりなぎ倒す。
「あと2匹!」
俺がそう言うと再度リーナとミアが魔法と矢を放つ!ゴブリン達に命中すると戦いが終わった事を認識する。
「ハァハァハァ・・・・・・ちよっと危なかったな」
正直かなり危なかった。やはり混乱することは非常に危険だと皆が悟った。すると相談もなしに切りかかった前衛2人が謝罪して来た。
「皆ごめん! 俺達のせいで危険にあわせてしまった。あれだけ言われてたのにゴブリンだからと舐めてかかってしまった」
「まぁ無事だったんだし良かったじゃん」
ミアがそう言うと、リーナが首を振って否定した。
「確かに無事だったけど、相手がもっと大勢だったら今頃皆死んでたかもしれないよ」
「・・・・・・本当にごめん」
「私達は自分の命もそうだけど、皆の命も守ってるって事を忘れないで! これは私にも全員にも言える事だけど、決して魔物を舐めてかからない事。偶発的に遭遇した場合は仕方ないけれど、こちらが先手を打てる場合は相手が何匹なのか? どう攻めるのか? しっかり作成を共有してからにしましょう」
少しきつくリーナが言うと、皆は頷く。
「でも良い経験が出来たな。俺の身体強化でもある程度耐えれる事が解ったし、しっかりと対処すれば緊急時でも問題なく対応できることが解った。まだ2日間しかパーティーを組んでいないけど、攻撃のタイミングもあってきたしな」
俺がそう言うと皆少し顔が和らぐ。
「ハル君、あの時は私達の前で守ってくれて本当にありがとう」
「えっ? いや、当たり前の事しただけだから」
「そんな事ないよ、私達はあの時混乱してて体が動かなかったもん。本当にありがとう」
「・・・・・・ああ」
「ああじゃないでしょ、ハル! もう人見知りなんだから。確かにあの時はとっさに動いたのハルだけだったもんね」
そう言われながら人に感謝されるってのも良いもんだなっと俺は考えていた。クラスでもリーナ以外とはほとんど誰とも話さない。でもこうやって仲間と助け合うのも悪いもんじゃないなと思ってると、少し顔がにやけた。その時俺は何か視線を感じた。しかし振り向くと何もなかったので、気のせいかと思い俺は前を向いた。
その後俺達は昼食をとった後も探索を続けていると、遠くの方でドガーンっと爆発音が聞こえた。皆も驚いた様に立ち止まる。特に近くではないのだが先程の事があるからか慎重になっている。
「もしかして先に入ったパーティーが魔物と戦ってるのかな?」
ミアがそういうとリーナが答えた。
「そうかもね、でも思ったよりも大きな爆発音だったわね。あれだけの火力となると結構強い魔物相手なのかもね」
「助けに行った方がいいかな?」
「やめておこう。結構遠いのもあるけど、まずは自分達の探索が第一だし万一の場合は先生達も助けに行くと思うから」
そうリーナとミアが話しながら歩いていると、先程より近くで音が近づいて来た。んっ?こちらに向かって来てるのか?と思った矢先、突然ゴブリンの群れが草むらから飛び出して来た。
「なっなんだ?』
「ゴブリン多数発見!・・・・・・って数が多すぎる!」
「皆バラバラにならずに背を向けずに固まるのよ!」
グギャグギャグギャー
ゴブリン達は何かから逃げて来た様に慌てた様子だ。しかしこちらも急にゴブリンの群れに襲われて混乱しかけている。そこにもう一つバキバキと木々をなぎ倒し、大きな影が出て来た。
グォー!!!!!!
つんざく雄叫びに体が硬直する。明らかに今までの相手と迫力も体型も違う。
「あれはダメだわ、ゴブリンキングよ。今すぐ逃げるわよ」
しかしなかなか体が硬直して動けない。周りは全て敵とでもいうようにゴブリンキングは、ゴブリン達でさえも持っていた大刀で薙ぎ払って行く。
グギャ、グギャー!
ゴブリン達も必死に逃げるが、その大きなゴブリンに次々と捕まって殺されて行く。なんとか体を動かそうと俺たちも一目散に背を向けて走ろうとした時、ゴブリンキングが死体となったゴブリンを投げつけて俺達の逃げ道をふせいで来た。
「ヒィっ! こっ殺される!」
涙目になりながら皆必死に逃げようとするが、次々にゴブリンの死体が投げられ逃げ道を塞がれて行く。
「くそっ! どうするリーナ」
「ダメ、あれはダメよ。決して戦っちゃダメ」
「とは言っても逃げる道もないぞ」
「解ってる! でも明らかに格上、手慣れた冒険者パーティーでも負ける可能性があるのに、私達では絶対に無理」
どうする、どうするっと考えていると、周りにいたゴブリン達がこちらに襲いかかって来た。
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