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リンネテンセイ

 世界を創りかえる事に何の感情も持たなくなるほどの回数をこなすと、僕は悪魔だけを生み出す世界を創ってみることにしてみた。混沌の世界になるかなと思っていたけれど、悪魔だけの世界だと序列がはっきりしているせいなのか、自然と規律正しい世界になっていき争いも生まれることはなかった。天使だけの世界も作ってみたのだけれど、当然のように規律正しい世界が出来上がっていた。


「ルシファー様が創る世界はどこか規律正しくしなくてはいけないという思いがあるように思えますね。もっともっと色々なタイプの人を育てる必要があると思うんですけど、リンネの力を借りて人間をたくさん集めてみましょう」

「リンネはまだ僕に協力してくれるのかな?」

「それは当然ですね。リンネはルシファー様に協力する理由がありますので、リンネが離れることはあり得ない事ですよ」

「リンネの世界為の世界も作った方がいいのかな?」

「それは必要ないかと思いますよ。リンネはどこにでも移動できる代わりにどこにも定着することが出来ないんです。彼女の世界を創ったとしても彼女がいられないのでは意味がないですからね」

「定着できないってどういうことなのかな?」

「リンネはその能力の特殊さ故、一か所に長くとどまるとその影響を受け過ぎてしまって生き返らせるときに余計な情報が入り込んでしまうんですよ。そうなってしまうと依然と違うモノとして蘇る事になってしまうんです。ルシファー様の場合は強力な力を持っていたためそれでもよかったのですが、それ以外の多くの場合は影響を受けてしまうと以前とは別人のようになってしまうんですよ。サクラの場合は極端に変わりすぎてしまっているんですけど、あそこまで別人になる事は稀な事態だったりするんですが、それでも変化は少ない方がいいと思うのです。全く変わらないって事も無いんですが、変化しすぎる必要も無いという事なんです」

「じゃあ、リンネは自由にさせておいた方がいいってことなのかな?」

「そうですね。リンネの力を上手い事使って強い人たちをたくさん育てるのも大事だと思います。弱い人を強くするよりも強い人をより強くする方が負担も少なく済むと思いますし、弱い人が強くなるのって思っているよりも大変なんですよ」


 エリスが教えてくれた場所に向かったのだけれど、そこにリンネはいなかった。あたりを見回してみてもリンネの姿は無く、彼女のいた痕跡も見られなかった。誰もいないようなこの森のどこかにリンネがいるという話ではあったけれど、どこにもリンネの姿は見えなかった。そこにあったのは苔生した大きな岩だけだった。

 その岩には何かが書いてあるようだったけれど、僕はソレの意味を理解することが出来なかった。そもそも文字なのかどうかも判別できないくらい崩れていて苔に覆われていたので、読める文字だったとしても今の状態ではその言葉の意味を理解するのは難しい話だ。


「あれ、神を殺すのに失敗したルシファーじゃない。あんたがちゃんと神を殺していたら私達の王様も帰ってこれたと思うんだけどな。神の居場所に乗り込んで今度こそちゃんと殺してきてね。でも、神の居場所がわかれば私達の王様の居場所も判明するかもしれないわね。あんたがしっかりしてればもっと簡単に物事は解決したと思うんだけど、それはいまさら言ってもどうしようもないけどさ。とりあえず、あんたの力になってあげるけど、それはエリスの力になるわけじゃないからね。あんたがどう思っているかはわからないけど、あの女はどうも好きになれないのよ。あの女って火の無いところに煙をたてるって言うか、火の無いところに大きな火種をつけるのが好きみたいだしね。あんまり唆されないように気を付けるのよ。あんたは他の人を信じすぎちゃうところがあるんだからね」

「僕はリンネが協力してくれるならそれで嬉しいんだけど、エリスの事はあんまり信じない方がいいって事かな?」

「それはあんたが決める事だと思うけど、サクラを蘇らせるのに世界を混沌の渦に巻き込む必要があるって意味が分からないのよね。なぜか私がサクラの魂を見つけることが出来ないんだけど、それって変なのよね。サクラの魂がどこかに隠されているのか、もともと存在しなかったって事しか考えられないんだけど、そのような魂があんたに深く影響を与えているとは思えないのよ。サクラって何者なのかしら」

「サクラはサクラだと思うけど、僕にとっては大事な人って事だけどね」

「あんたはサクラがどういう意味で大事なのか説明できるのかな?」

「もちろん、それが出来なかったらこんなに必死になる事も無いでしょう。そうだな、サクラは僕に幸せな時間を与えてくれる人だよ」

「他には?」

「他にって、それだけじゃ不十分なのかな?」

「ええ、それだけじゃそんなに必死になる理由がわからないのよね。この世界とあんたのもとを創った神に反逆してまで求めるには理由が弱すぎると思うけど、あんたはそれで全ての理由を説明して納得させることが出来ていると思うのかな?」

「そう言われても、僕にはそれ以外は考えていないかも」

「サクラの事は追々考えるとして、あんたはこれからこの世界をどうしたいのかな?」

「サクラを元に戻すために出来る事があればソレをやりたいんだけど、やっぱり混沌渦巻く世界にした方がいいのかな?」

「それはあんたが決めなさいよ。私が出来るのは肉体を再生させて魂を呼び戻すことだけなんだからね。でもね、出来る事ならあんたじゃなくて弱い人間の方が助かるのよね。あんたを蘇らせるのに必要な力って普通の人間なら世界中の人間を蘇らせる方が負担が少ないし、普通の転生者を蘇らせるのなんて欠伸をするよりも簡単だったりするのよ」

「そういうもんなんだ」

「今のあんたを蘇らせるのには私一人の力では難しそうだけど、今のあんたを殺せる奴なんてどこにもいないんだし問題ないわね。でもさ、出来る事なら蘇らせる人はある程度は決めておいて欲しいと思うのよ。多くても三十人くらいの転生者にしてほしいわ」

「それは何か理由があるのかな?」

「私の能力が天性のものだとしても出来るだけ負担はかけて欲しくないのよね。それに、サクラを完全な状態で蘇らせるのは神がこの世界に再び強い影響力を持つことにもなりかねないのよね。完全な状態でってのは諦めて違う形で転生させるのも良いかもしれないわよ。例えばだけど、神に仕える身でありながら神を否定する者として過ごすとかね」

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