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人類と悪魔と神

「俺はあいつに勝てると思うかな?」

「あいつって主の事ですよね。それは無理だと思います。強いとか弱いとかの問題ではなく、ルシファー様はあのお方の前に立つことも出来ないと思いますよ」

「それは何か理由があるのかな?」

「はい、ルシファー様に与えられたあのお方の力は本当にわずかなモノとなっていますが、それでもその力を使ってルシファー様の行動を制限することは出来るでしょう。それを回避するためにはルシファー様の中から完全にあのお方の力を取り除く必要があると思うのですが、それはどう考えても無理な事だと思います。どれほど強くなろうとも取り除くことなんて不可能だと思いますよ」

「じゃあ、その力を越えて制御できるようにしてみたらどうだろうか?」

「今以上の強くなることは出来ると思いますが、ルシファー様が強くなるための相手がもう存在しないと思うのですが」

「確かに、じゃあ、俺が強くなれないのならあいつを弱くすることは出来ないだろうか?」

「一時的に弱体化させることは出来るかもしれませんが、それは人間時間でも一瞬の事で終わると思います。あのお方の力が弱まる事があるとしたら、世界が悪魔で埋め尽くされた時じゃないでしょうかね」

「世界が悪魔で埋め尽くされると言っても、悪魔はもうこの世界に存在しないからな。ん、悪魔で埋め尽くされるとあいつが弱くなるのはなんでだ?」

「はい、あのお方の強さはあのお方が信仰されている力に比例しているのです。あのお方を信仰しているものがいなくなればその力も徐々に失われていくでしょう。ですが、あのお方を信仰することは世界の理となっておりますので、それをなくすことは出来ないと思います」

「うーん、それならいっそのこと人間を消してしまおうか。あいつを消してしまった後にでも戻してあげればいいだろうし、俺の野望の為に多少の犠牲はやむを得ないだろう」

「ですが、そうなりますと私以外にも天使を召喚できるものが障害になると思いますが、いかがいたしますか?」

「エリス以外にも天使を呼び出すことが出来る者がいるのは当然だと思うけれど、そいつらも消すことが出来ればあいつの求心力も衰えるだろう。あいつの力を削りつつ俺の力を上げていく事は理にかなっているな。よし、世界を創りかえるぞ」


 僕は全ての人間の命を使って世界を創りかえようと思ったのだけれど、多少は残しておいた方がいいとエリスに言われたのでいくつかの世界は変えずにそのままにしておいた。悪魔のいる世界を創る事はアマツミカボシを呼び出した時よりも少ない犠牲で済んだのだけれど、僕は今まで戦った事のある悪魔たちしか創造することが出来なかった。見た事も無いような悪魔を一から創造することは出来なかったのだけれど、それは悪魔同士を掛け合わせることが出来るようにしたので解決することが出来た。上手く長所を掛け合わせることが出来た時は強力な悪魔を作ることも出来たのだけれど、イレギュラーな事が起きたり短所が組み合わさった時もあったので必ずしも強い悪魔が産まれるわけではなかった。

 それでも、残された人間に向かって差し向けるのは失敗した悪魔でも十二分に効果が見込まれた。単独で人間を殺すまでの力は無いものの恐怖に駆られた人間が神に助けを求めて天使がそこに駆けつける。天使は苦も無く失敗作を始末するのだけれど、天使とほぼ同時に完成品の悪魔を届けることで天使を始末することも出来た。


 そのような事を繰り返しているのに天使が必ずやってくるのは理由があった。本来なら助けを求められてもそれに応えることなどないのだけれど人類がいる世界も残りわずかとなっているために助けざるを得ない。神を信仰する人類がいなくなればその力も自然と衰えてしまうようだし、残されている人類を救済することは必然だろう。

 そこまで考えていたのかと聞かれると、正直に言って自分に都合が良すぎるように思えてならない。以前に、“この世界は君の都合の良いように進んでいく”と言われたような気がしていたけれど、今の状況でもそれが生きているのが不思議でならなかった。


「なあ、俺はこのまま繰り返していればあいつに勝てるかな?」

「無理じゃないですかね。仮に、あのお方を倒すことが出来たとしてもあのお方を信じる者がいる限り何度でも復活してくると思いますよ。あのお方もルシファー様と同じで何度でも蘇ることが出来ますからね」

「俺が倒せばその力を取り込めるんじゃないのかな?」

「取り込んだとしてもそれを制御することが出来るかが問題ですね。今のルシファー様がそうなっているようにアマツミカボシの力に押され気味なところがありますからね。相性の問題もあるとは思いますが、あのお方の力はアマツミカボシとは比べ物にならないくらい強いと思いますので、完全に乗っ取られてしまう可能性の方が高いと思いますよ」

「そうか、それならもう少し力の差を縮めることが出来ないと難しそうだな。そうだ、こういうのはどうだろうか?」

「どんな事ですか?」

「今までは天使を殺した悪魔はそのまま戻していたのだが、天使を殺した後に人間を襲わせるというのはどうだろう?」

「それだとまた天使を呼ぶだけだと思いますが、どれほど天使を倒したとしても全ての天使を倒しきるよりも天使が増えるスピードの方が早いと思うので意味が無いと思いますが」

「そうじゃないんだよ。天使の代わりに俺が悪魔を倒すんだよ」

「それって同士討ちじゃないですか。それこそ無意味ですよ」

「ところが、それが意味のある事なんだよ。俺が助けに行く事で信仰の対象があいつから俺になるんじゃないかな?」

「そんなにうまくいきますかね?」

「人間は意外と目の前で起こった出来事によって考え方が変えられたりするものさ。助けを求めた神の遣いがあっさりと敗れ去って絶望を感じたものの目の前に俺が現れて助ける。君が人間だとしたら同じことがあった時にどちらに救いを求めるかな?」

「それだったらルシファー様に助けを求めると思います」

「それは当然の事だよな。しかし、それをやろうにも俺は一人しかいないんだよ。どうにかして俺のコピーでも作ることが出来ないかな?」

「それでしたら、いくらでもご用意できますよ」


 エリスは顔も名前も無い天使を呼び出すと、それを僕と同じ顔に作り替えた。力は僕に全然及びもしないのだけれど、顔姿雰囲気のどれを取っても自分を見ているようにしか思えなかった。


「この子達は本来なら戦闘に向いていないんですけど、自作自演で戦うなら問題ないですよね。ルシファー様のお手を煩わさなくてもこの子達がその名声を高めてくれますからね。そのまま信仰心を集めることが出来ればルシファーさんはもっと強くなれると思いますし、あのお方を越えることも出来ると思いますよ」


 エリスの作戦は上手くいったのだった。どんなに強い天使が来てもいくらでも強い悪魔を送り込むことが出来ていたのだ。強い悪魔は人間に対して深い絶望を与えたのだけれど、絶望が深ければ深いほど僕の活躍が強く印象に残っているようだった。今では直接助けられていない者まで僕を信仰する者もあらわれていた。しかし、それでもあいつを信じる者は依然多く残っていたので、僕はさらに一歩進んでみる事にした。


「全ての悪魔に告ぐ。現時刻を持って人間を殺すことを解禁する。ただし、その対象はあの神を信じる者だけだ。殺す際にはそれを伝えることも忘れないように」


 効果は絶大だった。

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