表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/79

アマツミカボシ

「ルシフェルさんとアマツミカボシって知り合いだったって事無いですよね?」

「そんな事は無いけど、どうしてそう思うの?」

「アマツミカボシと普通に会話していたからそう思ったんですよね。今まで聞いていた話だと、アマツミカボシは会話も成り立たないような相手だって聞いてたんですけど、ルシフェルさんだけ特別なんですかね?」

「うーん、特別何かしてるってことは無いんだけど、もしかしたら過去に何か繋がりとか関係とかあったのかもしれないね」

「その辺は調べればわかると思うんですけど、ルシフェルさんがアマツミカボシと話が出来るなら説得してこちらの味方になってもらいましょう。敵対すると厄介だけど味方になると鉄壁の防御を手に入れたようなもんですからね。ルシフェルさんの交渉術に期待してますよ」

「あんまり自信ないけど頑張ってみるよ」


 本当は何か情報とかもらえないかと思って戻ってみたんだけど、何も知らないみたいで新しい情報は何も入ってこなかった。

 天使たちはあの星には近づかなくなっているのでそこは安心できるのだけれど、もしもアマツミカボシの機嫌を損ねてしまってこちらに向かってくるような事があったら大変だなと思った。他人ごとのように感じているけれど、僕はあの雨に対して耐性があるみたいなので個人的には何の問題も無いのだ。


「じゃあ、もう一回話をしてくるね」


 僕は先ほどいた場所に戻る事にしたのだけれど、アマツミカボシの姿が肉眼でも捉えられるような距離になった瞬間に物凄く強い力で引き寄せられた。あまりの衝撃に意識が飛びそうになってはいたけれど、どうにか堪えることが出来てそのままアマツミカボシの前に降り立った。


「アマツミカボシさんは僕達に協力する気はありますか?」

「君達に? 君達に協力するつもりなんて毛頭ないけれど、君個人にだったら俺は協力してもいいと思っているよ」

「どうして僕個人ならいいと思うんですか?」

「なんていうのかな、君の仲間は信用ならないと思うのだよ。君が信じる仲間だとしても、俺はそいつらを信用することが出来ないのだね。だがな、君は何か俺に近しいものを感じてしまうのだ。もしかしてだけど、君はその体の中に他の力を宿してはいないのかね?」

「宿すという意味でしたら、僕は今まで倒してきた相手の事を取り込んできたりしていますね。アマツミカボシさんも僕の一部になってくれますか?」

「君はたいそうな事を言うね。天使や悪魔ならいざ知らず、神ですら自身の一部に取り込もうというのか。俺はそんな考えのやつは嫌いじゃないね。ただ、君が俺を殺すことが出来ればの話なんだけど、そんなこと出来るのかな?」

「どうでしょうね。武器もこの雨の影響で使うことが出来ないし、僕程度の魔法だと効果も無いでしょうし、直接首を絞めたって死にはしないですよね。というか、アマツミカボシさんって生きているんですか?」

「生きているのかとはどういう意味なのかな?」

「はじめはこの雨のせいかと思ったんですけど、アマツミカボシさんからは生命力が感じられないんですよ。上手く言葉に出来ないのですけれど、僕にはアマツミカボシさんの体がここにあるようには思えないのです。それがどうしてそう感じているのかは説明できませんが、感じることが出来ないのです」

「ああ、それはある意味で正しくある意味で間違っているな。俺は君達と違って神と呼ばれる存在だ。そもそもこの世界は俺ではないどこかの神が創ったものだろう。君は自分でこの世界を創造して俺を召喚したのだと思っているみたいだけれど、世界を創造する事なんてそんなに簡単なモノじゃないのさ。君が創る世界は他の世界を犠牲にする事で成り立っている。では、その犠牲となった世界をゼロから創りだしたのは誰だと思うのかな? それは俺たち神と呼ばれる存在だよ。俺もいくつかの世界を創りだしてはいるけれど、ここのように同じような世界が無数に存在している状態は聞いたことが無いね。君達の神が人間にきっかけを与えたとしても、それは神の領域を逸脱している事になると思うのだよ。そんな神がいるなんて話は聞いたことが無いしあった事もなかった。ここ数百年というわずかな期間にこれだけの世界を作り上げるなんて常軌を逸していると言えるね。ただ、それも様々な条件を重ねて丁寧に下地を積み重ねてきた結果だろう。その結果、君達の世界の神はどの次元においても並外れた力を持つようになっているみたいだね。俺を倒してその身に力を宿すという事は、そんな神に敵対するという事になるのだけれど構わないのかな?」

「神の話はよく分かりませんが、たとえ神と敵対しようとも僕の目的も意思も変わらないです。その目標を達成できるのなら神が相手だって戦いますよ」

「そうか、君の目的は今更聞かなくてもわかると思うんだが、それを成し遂げるだけの力は今の君にだって備わっていると思うんだが、それについてはどう思っているのかな?」

「それってどういう事でしょう?」

「君は他の世界を犠牲にしてまで俺をここに呼びだすことが出来たんだよ。俺を呼び出すことが出来るんだから君が会いたい人だって呼び出すことが出来るんじゃないかな?」

「それはそうかもしれないんですが、ちゃんとした完全な形で蘇らせたいんです。そのためにはもっともっと大きな力が必要だと思うんですよ」

「どうしてそう思うのかね?」

「だって、僕が新しく創った世界に誕生したアマツミカボシさんは実体がないじゃないですか。近くで見ていてわかりましたけど、僕が創れるのは世界だけで本人を呼び出しているわけじゃないんですね。アマツミカボシさんは確かに強力な力を持っていると思うし、天使の軍団が押し寄せても相手にならないってのはわかります。でも、これだけ近くにいて生命力を感じないというのはおかしいと思うんです。魔王って天使だって悪魔だってその力の大きさに関わらず生命の息吹は感じ取ることが出来ました。今目の前にいるアマツミカボシさんからはそれが感じられないのです。どうしてでしょうか?」

「君は確かに凄い力を持っているし、今まで君達の世界を変えてきた人たちとは違って俺を呼び出すことも出来た。と言ってもだ、しょせんは神ではない天使に過ぎないのだよ。そんな天使ごときが神を実体化させるなんておこがましい事だと思わないかな。こうして俺を呼び出せたことだけでも凄い事ではあるんだけれど、それ以上を望むことは傲慢というのだよ。それは君には背負いきれないような重い罪だとは思うのだが、君はそれでも俺の力を欲するのかな?」


 僕はその言葉を聞いて罪を背負いきれるかどうかと考えるよりも早く頷いていた。覚悟なんて後から決めればいい。ちゃんとしたサクラに会えるのならどんな罪だって僕には重くないはずだ。


「そうか、そこまで硬い意志があるのなら何も言うことはないでしょう。脅してはみたけれど、神殺しが罪になることはないので安心していいよ。神殺しが罪にならないってのは、そもそも神を殺せるものは神だけであって、神を罰する事なんて出来はしない。つまり、君達天使や悪魔が神を殺すことなんて出来はしないのだよ。過去に殺された神がいなかったのかと言われると、それはいたとしか言えないのだけがね。その場合は殺された時点で神ではなくなっていたという解釈が取られていたのだよ。だから、安心して君も俺を殺してみるがいいさ。君にはそれを行う力があるはずだよ。“命を奪えないのなら一度与えたうえで奪えばいい”たったそれだけの事だよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ