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ソフィアと協会

 新しい街についた時は協会の場所を探すのが鉄則だ。何をするにも協会に行っておいた方が得だし、行かないことによって不利益を被る可能性もあるのだし、行った事で損をする事も何もないのだ。

 ソフィアは僕達とは別の組織に所属しているため中に入ることは出来ないのだが、姉妹組織であるためなのか、出入りは自由だった。何より、この街ではソフィアの事を知らない者はいないくらいの活躍で、ソフィアを真似して金髪になるものが多くいるほどである。


「ねえ、この街での登録も済んだことだし、良かったらご飯食べに行かない?」

「そうね、今日は朝に軽く食べてから何も食べていないし、ソフィアのお勧めの店でご飯食べようよ」

「辛いのと辛くないのならどっちが好きかな?」


 食べ物で悩むときは僕に選択権は与えられないのだ。サクラは僕の食べたいものを予想したうえで、自分が本当に食べたいものを選んでくれる。今回も僕がそんなに食べたくない辛いやつが選ばれてしまった。

 辛いのは苦手ではないんだけど、自分から進んで食べに行く事はほとんどなかった。辛いものは程々が一番なんだけど、今回はどれくらい辛いのか試してみないといけない。


 ソフィアさんが選んでくれたお店は海鮮のお店らしく店内には新鮮な魚介類が所狭しと並んでいる。ここから選べるのかと思ってみたら、ここは魚介類を見ることが出来る施設らしい。

 何が出てくるかはメニューを見ればだいたいわかると思っていたのだけれど、メニューに書いてあるのは名前と金額だけである。どんなものが出てくるか想像できそうなのもあるけど、そのほとんどが独創的な名前になっていて全く伝わってこない。


 わからないモノは冒険しないのが一番だと思うのだけれど、サクラは持ち前のチャレンジ精神で新しい扉を開けようとしていた。僕はソフィアに全部お願いしたのだけれど、辛さはほぼ無いやつにしてもらった。

 料理が来るまでの間に店内を見回してみると、どことなくアジアテイストな家具が目立つのだけど、働いている人はアジア人どいうよりも人間じゃない人が多い。


 この店に入る前からの事ではあるけれど、ソフィアは色々な人に話しかけられていた。そのほとんどがお願い事だったり愚痴だったりするのだけれど、ソフィアはイヤな顔一つせずに丁寧に対応していた。

 そんなわけなので、料理を待っている間に近付いてきた男もソフィアの事が気になる人なのかと思っていた。実際は僕に話があったのだ。どんな事を聞かれるのか構えていたソフィアは少し恥ずかしそうに体を小さくしていた。


「やあ、どうもどうも。今回はこちらの世界にいらっしゃったのですね。私も旅は好きなのですが目的の無い旅になりがちでして、今回はどうなる事かと思っていたのですが、あなたに会えたことが何よりの土産になると思いますよ」

「あの、申し訳ないんですけど、人違いじゃないですかね?」

「おや、それは失礼いたしました。あまりにも知人に似ていたもので思わず声をかけてしまいました。申し遅れましたが、私の名前はクエリアと申します。何か困ったことなどございましたらお力添えいたしますので、気軽にお尋ねくださいませ。料金の方はお勉強させていただきますので、その点はご安心くださいませ」

「僕はルシフェルです。こっちはサクラで、こちらはソフィアです。困った事とかは思い浮かびませんが、僕達は魔物退治なら得意なのでその点で困ったことがあれば協会まで連絡してください」

「おお、なんと。私の知人とお名前も似ていらっしゃる。ルシフェル様は冒険者様と見受けられますので、もしどこかでルシフェル様によく似た方を見かけたらクエリアが探していたとお伝えいただけると幸いでございます。ちなみに、私の知人はルシファー様と申されますので、よろしくお願いいたします」

「そのルシファーさんは僕と名前も似てますけど、顔もそっくりなんですか?」

「ええ、双子かと思うくらい瓜二つですね。もしかしたら、生き別れの兄弟なんて可能性は、ないですよね。そんな話は聞いたことございませんからね。そうだ、せっかくの食事の邪魔をしてしまいましたので、私にデザートを一品ご馳走させてくださいませ。お連れ様の分も私が負担いたしますので、お好きなモノをお楽しみくださいませ。では、私はこれで失礼いたします」


「ねえ、今の人ってなんか不自然じゃなかったかな?」

「私もそう思います。どうも、人の姿をしているのですが、人でもないし、魔物が化けている様子も見られないです。それに、ルシフェルさんに似ている方って本当にいるんですかね?」

「さあ、僕に似ている人がいてもおかしくないけど、この世界に住んでる人なのか、僕らみたいに他の星から来た人なのか、どっちにしても会えばわかるってもんだよね」

「私達がルシフェルとそのルシファーさんの見分けがつかなかったらごめんね」

「確かに、そんなにちゃんと見た事無いから間違えちゃうかも」


 僕達は食事を終えてからデザートを頂いたのだが、今すぐスイーツショップを作っても確実に成功すると思われる。甘いものがそれほど好きではない僕がそう思うのだから間違いないだろう。

 それにしても、僕に似ている人がいるとしても、僕の活躍を知っているのならば、会いに来てくれてもいいのになと思いを寄せてしまう。


 さあ、これから泊まるところを確認しに行くのだけれど、この手の紹介は微妙な物件をあてがわれることが多いのだけど、今回の家はなかなか住み心地もよさそうな感じだった。


「さあ、今日は掃除をして明日から本格的に室内のレイアウトを変えていくことにしよう」

「そう言えば、魔法協会の移籍は出来そうかな?」

「移籍自体はそんなに複雑な手続きではないんですけど、私が移籍しちゃうと組織の力関係が変わってしまって大変な事になりそうなのよね」

「そうだよね。ソフィアって私達より一瞬の火力は高そうなんだけど、それよりも凄いのは、単独で行動してちゃんと結果を出しているところよね」

「僕とサクラは魔王と雑魚が混ざった編成だと何も出来ずに一人で死んでいくと思うんだけど、サクラはそんな状況でも気にせずに戦っているんだから凄すぎるよ」


 荷物を部屋の中に放り込んで組合の斡旋所に行ってみる事にしたのだけれど、そこでもクエリアさんが何かを待っている様子だった。


 敢えて話しかけはしなかったのだけれど、僕達に気付いたクエリアさんは嬉しそうに駆け寄ってきた。


「いやいや、再び皆さんにお会いできるとは思ってみませんでした。」

「僕達も同じく嬉しいですよ」

「そう言えば、皆さんに渡しておきたいものがあるので受け取っていただけませんかね?」

「変なモノじゃなければ大丈夫です」

「この魔除けの鈴なんですがね、ちゃんとした職人が作って他の職人が魔力を注いだのですよ。持っているだけで効果はあると思うんだけど、鈴を持っていたら隠密行動は出来ないんじゃないかな?」


 僕達は何気ない一言でそこについてしまった。それだけでは終わらずに、自分のコンサートでも好きな事を楽しそうにやっているのを見てるのは楽しい。そんな時間がもっと増えていけばいいなと思ってしまった。


「そう言えば、今回は妖精のリンネは一緒じゃないんですね」

「妖精ですか?」

「はい、いつもルシファー様の周りを飛んでいる妖精です」

「妖精に会ってみたいけどどこに行けばいいのだろう?」

「リンネがその場にいたかわかりませんが、使い方も独学でマスターしているようだった」


 リンネという名前も聞いたことがある気がしていた。僕の中に何が封印されているのかわからないけれど、恐ろしいような気配がするのはなるべく見ないようにしておくよ。サクラがいればなんてことは無いと思うのだけれど、頼りっぱなしでいいのだろうか?

 その答えは出ないと思うので、僕は次の試合に向けて気合を入れ直していた。


 相手がどれくらい強いのかわからないけれど、僕とサクラがいればきっと大丈夫だと思うよ。

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