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鬱勃

 魔力を与えられたマヤさんはテンションが高くなるみたいなのだが、その前のローテンションのマヤさんもクールな感じで素敵だと思った。僕はどちらかと言うと、クールな女性が好きなのだけれど、周りにいるのがハイテンションな子が多かったように思っていた。こんな世界なら気分くらい明るくしておかないとやっていられないのかとも思っていたけれど、ハイテンションで怪物を殺し続けていき、魔力が尽きてローテンションになって戻ってくるのは少し狂気じみたものを感じてしまった。


 アスカはここにきて2日目の昼には解放されたのだけれど、僕から転送するだけの魔力を受け取るとそのまま何も言わずに消えていった。無言だったので何を考えているのかはわからなかったけれど、マヤさんを見る目は何か恐ろしいものを見ているようで怯え切っていた。


「ねえ、お兄さんの魔力って凄いんだね。これならママが言っているように、世界を変えることが出来るかもしれないね。そうなったら、お兄さんが一番ってことになるのかな?」

「僕は魔力を提供しているだけだし、マヤさんが一番偉いってことになるんじゃないかな?」

「そんなことは無いと思うけど、お兄さんの方がきっと強いんだと思うよ。私は死んだら終わりだけど、お兄さんは何度でもやり直せるって聞いてるしね」

「マヤさんも新しい体に変わるって聞いたけど?」

「確かに、私も新しい体に変わることが出来るけど、お兄さん達みたいに何もかも全部まとめて映るって感じじゃないんだよね。音の無い映像を見ているような感じで正しい記憶は引き継げないんだよね。私も前の自分の事が全部わかるわけじゃないんでママに色々聞いて教えてもらってるんだよね」

「お互いに大変なんだね」

「あ、私の事はマヤでいいよ。さん付けは禁止ね」


 僕はそんな調子で仲良くやっていると思うのだけれど、僕のやっている事と言ってもマヤさんが闘っているのを眺めているだけなのだ。魔力の注入も朝に一回だけ僕が倒れる限界まで注入すると、それ一回きりで次の日まで持つのだから素晴らしい。僕の魔力は朝に一回空になっているけど、次の日の朝には全快しているのだ。この辺の怪物はほとんど駆除したと思うのだけれど、いくら倒しても絶滅する様子は見られなかった。


「ママが言ってたけど、私はいくらあいつらを倒したところで成長しないし、お兄さんも直接倒しているわけじゃないから成長してないんじゃないかな?」

「確かに、僕はここにきてから魔力を分け与える事しかやってないと思うんだけど、成長しているとは思えないんだよね。マヤも凄く強いとは思うんだけど、他の場所に行ったらどうなんだろうね?」

「本当の事を言うと、朝にお兄さんが私の中に注いでくれるやつも受け止めきれなくて、次の素体に転送されているんだよね。だから、お兄さんの力は私が壊れたとしても次の私が引き継いでいるんだよ。記憶には残ってないかもしれないけど、お兄さんの存在は体の中に感じているから、すぐにお兄さんが味方だって気付くはずだしね」

「いきなり襲い掛かられても困るけど、一番困るのはマヤが死んじゃった時かな」

「それはきっと大丈夫だよ。私が死んでも次の私がいるし、鉱石次第ではもっと強くなる可能性もあるからね。私はこの大きさの鉱石に蓄えられるだけしか魔法を使えないけど、鉱石が大きくなればなるほど強くなるはずだよ。ママも言っていたけど、人間サイズの鉱石も探したらあるみたいだよ」

「それがあったら私はもっと強くなるのかもしれないね。その時は私じゃないんだけどさ」

「それってどこにあるんだろうね?」

「わかんないからママに聞いてくるよ」


 それほど大きな鉱石は皇都で見たと思うのだけれど、アレをなくすと皇都が悲惨な事になってしまう。皇都にあるという事は、他の世界も探してみたらどこかに大きな鉱石があるのかもしれない。


「ねえ、ママに聞いてみたんだけど、一番大きいのはお兄さんが死んだ後に行く場所にあるみたいだよ。あるって言うか、お兄さんはその鉱石の中にある空間に呼ばれているみたいだって聞いたよ。魔力を蓄える空洞があるらしいんだけど、そこのどこかにお兄さんは呼ばれてるんだってさ。後は、何か言おうとしてたのにママが黙っちゃったからわからなかったよ」

「黙っちゃったって、思い出せなかったのかな?」

「それとは違うかもしれないけど、ママは何か気になる事があるのかもしれないね」

「それなら一度話を聞きに戻ってみようか?」

「戻っても会ってくれないと思うし、このまま二人で頑張ってみようよ」

「頑張るにしても、僕はこれからどうしたらいいのかがわからないしね」

「ママが言ってたけど、お兄さんを苦しめてるやつを倒せばいいって。そのためにもお兄さんが死なないといけないんだけど、それが出来るのは私だけって言ってたよ」

「確かに、僕が死んだら行く世界に答えがあるとは思うけど、マヤの力じゃ僕を殺すことは出来ないと思うよ。僕には魔法は効かないからね」

「ママが言ってたけど、お兄さんに魔法は効かないけど大きな岩を載せて湖にでも落とせばいいってさ」

「それはちょっと残酷じゃないかな?」

「じゃあ、物凄い加速して体当たりするとかは?」

「溺れるよりはそっちの方がましかもしれないけど、出来る事なら苦痛なく死にたいもんだね」

「でも、お兄さんだけそっちに行っても意味ないよね。私もいっしょに行ける方法は無いのかな?」

「それなら、アスカに頼めばいいと思うけど、どこに行ったのかわからないしね。今度見かけたら頼んでみようか」


 そんな会話をしていたら、目の前に突然アスカが現れた。

 僕は驚いて声も出なかったけれど、アスカは何かを警戒しているようで物陰に僕らを移動させた。


「隠れたって無駄だとは思うんだけど、今回は本気でまずい事になったかもしれない。あんたらには関係ないんで手伝ってくれなくてもいいんだけど、お兄さんをこの世界に呼んだやつに命を狙われているみたいなんだよ」

「それってどういう事なんだ?」

「わかんないけど、あんたの家に閉じ込められている時に光の姉ちゃんが私の事を殺そうと襲ってきたんだよ。でもさ、私が閉じ込められていた場所が強力な結界に守られていたおかげで無事だったんだけど、結界が開けられて自由になったとたん色んなやつに追われる日々さ。悪いけど、私にも魔力を少しわけてくれよ」


 僕はアスカの要望を受け入れて魔力を与えた。朝に一度空にしてしまっているのでそこまで多くないけど、アスカには十分すぎるほどの魔力を与えることが出来た。

 このまま二人を連れてもらってあの場所へ行きたいところだけれど、命を狙われているアスカを連れて行ってもいいのかが悩みの種である。


「え、お兄さんが転送される前に呼ばれる場所に行きたいって?」

「お兄さんだけじゃなくて私もお願いします」

「それは構わないけど、行って何をするのかな?」

「お兄さんにとって良くない相手なら戦うし、私はきっと負けないからさ。」

「君が負けようが勝とうが関係ないけど、私はその戦いには参加しないですぐに帰らさせてもらうからね」

「お姉さんがいなくても平気だってことをわかってもらいたいんだけど、出来る事なら1週間くらい待ってもらってもいいかな?」

「じゃあ、1週間後にまた戻ってくるよ」


 アスカは慌てているのが一目でわかるくらい慌ただしく行動していた。その一つ一つに小さな無駄が詰め込まれているようで、いつもよりもどことなくぎこちない感じで消えていった。


「さて、これからどうしようか?」

「私からのお願いなんですけど、約束の時間までお兄さんの力を注ぎ続けてください」

「それは構わないけど、君の体にはそんなに多く貯めることが出来ないんでしょ?」

「そうなんですけど、それなりの相手なんで多少は保険をかけておきたいなと思いまして」

「保険をかけておくにしても、今のマヤさんが他の人になるのは悲しいな」

「それは大丈夫だと思うけど、マヤさんって言ったから罰ですね。罰は何がいいかなぁ」

「お手柔らかに頼みます。そこまで丈夫じゃないと思いますので」

「罰なんて冗談だよ。これからちょっと間だけでも一緒に戦えるのは嬉しいな。それにしても、こんな時にお兄さんのスキルが戦闘向きじゃないって悲しくなっちゃうね」

「それは僕も困っているんだけど、今回はこのスキルでも最適の世界にきてるはずなんだよね」

「ママから聞いたんだけど、お兄さんのそのスキル構成でもお兄さんにとって一番いい結果に導かれているはずだってさ」

「それならいいんだけど、どの辺が良いのかな?」

「えっとね、スピードが速くなるってのは魔力の回復も早くなっているみたいだから1日待たなくてもお兄さんの魔力は全快してるみたいだし、効果範囲を限定しないってのは私一人に魔力を与えてるんだけど、私達全員にその恩恵があるみたいだよ。最初は溢れた分が他の私に行っているのだと思ってたんだけど、それはお兄さんのスキルのお陰だったみたいだね。罠を見つけるやつはママに会った時に効果があったくらいなのかもね」

「へえ、適当に選んだわりには結構効果的な組み合わせだったんだね」

「お兄さんはたまたまそれを選んだと思うんだけど、この世界はお兄さんがたまたま選んだスキルの結果で選ばれたのかもね。選んだのは今のお兄さんを作った人かもしれないんだけどさ」

「1週間後にはその人に会いに行ってるだろうし、今からでも出来る事をやっておかなくちゃね。」

「お兄さんと私ならきっと大丈夫だよ。私にも秘策はあるしね」


 僕達は出来るだけ無駄な体力は使わないように心掛けつつも、必要な事は必要なだけやっていき、約束の時間まで精一杯強くなれるように心血を注いだ。


 その日になると、朝からアスカがやって来たのだけれど、肝心の僕の魔力が回復しきっていなかった。昨日の夜ご飯を食べた後にマヤに魔力を与えたのだけれど、今までなら十分回復していた量のはずが、今は全体の3割ほどしか回復していなかった。僕は戦闘に参加するわけではないので必ずしも全回復しないといけないわけではないのだが、何となく今の魔力量では心もとない気がしていた。


「お兄さんの回復を待ちたいところではあるんだけど、あいつらがいる場所が移動しそうな感じなんだけど、ある程度の回復で我慢してもらわないとな。お兄さんが直接戦うわけじゃないだろうし、一度でも攻撃が通ればそれなりに魔力を奪えるだろうからね」

「僕も出来るだけ邪魔にならないようにしておくけど、ダメなところが合ったらおしえてね」


「そろそろ出発するけど、思い残したことは無いかな?」


 僕達はアスカの言葉に黙って頷くと、展開された『空間』を通って僕には見慣れた場所に移動していた。

 その場所はいつもよりも暗い感じがしていたのだけれど、光の柱が現れてその中にいつもの女が浮かんでいた。


「今回はどういった用件でここにやって来たのですか?」


 聞きなれた声ではあるのだけれど、その言葉の奥にとても冷たく恐ろしい感情が込められているような気がした。僕はその言葉に威圧されて動けなくなっていたけれど、マヤは動じることなく立ち向かっていた。


「お願いします。お兄さんを自由にしてください。それが叶うなら私達を好きにしていいですから。お願いします」

「ごめんなさい、言っている意味が分からないのですが」

「お兄さんが自分の意志で未来を選べるようにしてほしいです」

「それって今と何が違うんですか?」

「今はお兄さんが選んでいるように見えてるけど実際はあなた達が決めてるんですよね?」

「それについては答えるつもりもないけど、あなたは少し邪魔になりそうね」


 光の中からマヤに向かって強大な力が向かってきている事はわかったのだけれど、その場にいた誰もが動けずにいて、マヤの体に触れた時には全てを飲み込むようにして消えてしまった。

 何が起こったのかはわからないままだったけど、マヤの体も鉱石も消えてしまった。何も出来ないまま消滅してしまったわけだが、僕はこれからどうしたらいいのだろうか。

 アスカはすでにいなくなっているし、僕が出来る事はもうほとんど残っていないだろう。そんな中でも僕はどこかに希望がないか探してみたのだけれど、この街に残されているのは絶望と後悔だけのようだった。


「あなたは道を踏み外すことが多いみたいですけど、これから先はそんなことが無いようにお願いしますね」


 マヤは一瞬で何事もなかったかのように消えてしまったけれど、僕にはそれが信じられなかった。今でも人懐っこい笑顔で僕の前にやってくることを期待してしまう。

 僕が道を踏み外していたのは気付かなかったけれど、あの人の都合のいいように動かされているんではないだろうか。


「あなたは一人になってしまいましたね。では、これから今までの事を水に流しますので、より一層あの方の為に励んでくださいね」


 その言葉に思わず頷きそうになっていたけれど、僕がうなずくよりも早くアスカがこの場所に戻ってきてくれた。それも、一人で戻って来たのではなく、新しいマヤが一緒だった。


「待たせてごめんね。私も頑張ったと思うんだけど、色々と網の場所が決まっているので直せなくてさ」

「私達もこれから一気に攻めていく事にするからさ」


 マヤの言っていた保険がこれなのかわわからないけれど、複数のマヤが同時にこの場に立っていた。それも、その一人一人が先ほどまでのマヤと違って物凄いエネルギーを秘めているのだ。

 一人が光の柱に攻撃魔法を放つと、それに続いて攻撃が繰り返されると、ほんのわずかではあるが光の柱に亀裂が入っていった。その亀裂は少しずつ大きくなっていき、最終的には光の柱全体が大きなひび割れに覆われているような状態になってしまった。


「このまま壊れてくれればこっちのモノですね」


 アスカは『空間』を展開したままそう言うと、その中からまだまだマヤが出てきていた。綺麗な隊列を組んでいるマヤ達は次から次へと魔法を繰り出し、とうとう光の柱は完全に消滅してしまった。そのままマヤの攻撃は続いて行き、中にいた女も何も出来ずに攻撃を受け続けるだけになってしまった。

 女は何らかの抵抗を試みていたようだったけれど、新しく張ったバリアも早々に破られていき、マヤ達の攻撃が届いたころには無数の攻撃を受けるだけになってしまった。その攻撃はしばらくの間続いていたのだけれど、攻撃がおさまるとそこには女の亡骸が横たわっていた。


「おめでとう、これでお兄さんは自由になれたね。私もこの子達もお兄さんが自由に慣れて嬉しいよ。ところで、何か思い出せたかな?」

「ありがとう。でもね、何も思い出せていないし、自由になった実感もないかも」

「そんなにすぐに変わるもんでもないだろうしね。マヤちゃんもたくさんいる事だし、この部屋の中をもう少し調てみることにしようよ」


 アスカの言葉を合図に全員でこの部屋を調べているのだけれど、特に変わった場所も無ければ、出入り口も見当たらなかった。アスカの能力が無ければ自由に出入りすることも不可能だと思ったのだけれど、それにしてはいつもとは何かが違うように思えていた。


 僕も色々と見て回ったけれど、この部屋の中を自由に歩いているのは初めてのような気がした。それでも、どこに何があるかわかっているのは凄い事だと思った。どうしてわかるのかは謎だけど、わかってしまうのは問題ではないのだ。

 お姉さんがいたところも調べてみたのだけれど、そこにも何もなかった。お姉さんの亡骸もどこかへ消えてしまっていた。


「ちょっと気になるけど、そこにいたお姉さんって確実に仕留めたんだよね?」

「うん、確実に息の根を止めた自信はあるよ。反撃しようとしてたみたいだけど、こっちの数に圧倒されて最後は抵抗もせずに散っていったからね」

「でも、そこにあったはずの遺体が消えているんだけど」

「漢方の素材だからもってかえったのかな?」

「さあ、それはさっぱりわからないけれど、この機会に色々試してみたらいいんじゃないかな」


 僕達は慎重に壁や床も調べていたのだけれど、特別変わったところは見られなかった。それどころか、光の柱もいつの間にか元に戻っていた。柱の中には誰もいないのだけれど、その存在感は僕達を威圧するにはもってこいだった。


 色々調べ回ってみたところ、魔王の痕跡も無ければ役に立ちそうな知識もなさそうだった。


 これ以上ここに居てもしょうがないとの結論に至り、我々はそれぞれ自分の世界へと戻る事になった。

 僕は文字通り何もせずに今回の件が解決したわけなのだが、その分物足りなさも感じているのはみんな一緒だろう。今は、何も考えずに思いっきり運動していたい。


 アスカが『空間』を展開して元の世界へ戻ろうとしているのだけれど、アスカが展開している『空間』が開かなくなってしまっていた。今まではこのような事も無かったので、単純に魔力切れで消えたのでしょう。僕の魔力をアスカに注いでみたのだけれど、状況は変わらなかった。


「どうして展開出来ないんだろ。今まではこんな事無かったのに、何が原因なんだろう?」

「どれか一つが悪いってわけでもないみたいだし、一度時間をおいて試してみよう」


 僕達は出来る事も限られているのだけれど、そのまま黙って時が過ぎていくのを待ったいるわけでもなく、みんなそれぞれ新しい技を考えているようだった。


 しばらく考え事をしていると、部屋の中なのに雨が降り注いできた。濡れるのはイヤだなと思って傘を取り出したのだが、僕以外は傘を持っていなかった。

 その雨はたたきつけるようなものではなく、しっとりとした優しい雨のように感じていた。マヤ達も雨を避けたいようだったけど、傘やそれっぽいものはどこにもなく、みんな雨に濡れていた。

 水も滴るイイ女がたくさんいる状況になっているのだけれど、何だか様子がおかしかった。少しずつではあるけれど、雨に当たっている人達が少しずつ力を失っているようだった。


「この雨って危険かもしれない」


 たくさんいるマヤの誰かがそう言っていたけれど、今気付いたところで間に合わないだろう。間に合ったとしても、今の状態ではまともに戦えないと思う。

 それでも、戦ってくれた選手に大きな拍手を送りたいものです。


「君達は少しやりすぎてしまったようだね。反省してもらうためにもみんな仲良く死んでもらおうかな」


 老人が手を掲げると雨はやみ、そのままアスカとマヤ達はその場に倒れていた。僕は傘を差したままその様子を見ていたのだけれど、何も出来ずただただ傘を持って見ている事しか出来なかった。


「やはり、お前だけは生き残ることが出来たのか。よろしい、お前にはもう一度チャンスを与えよう。今度こそ全ての魔王を駆逐して安寧秩序を維持するのだ」

「その力を使えばあなたが魔王を駆逐する事も出来るのではないでしょうか?」

「私に意見できるほど偉くなったのか、それとも、私の事を理解していないだけなのか。まあ良い、私はこの地を離れることが出来ないのだ。やつらにここを奪われるようなことがあってはならないのだ。そのためにも、お前の力が必要なのだ。さあ、私の為に再び立ち上がるのだ」

「そんな事を言われたってどうしたらいいのかわからないですよ」

「そうだな、今まではお前にある程度の自由を与えていたが、今回からはこちらで全て決めておくことにしよう。その方がお前の為にもなるであろう」


 僕はなぜかこの老人の言葉に逆らうことが出来なかった。今では意見を述べた事にも後悔しているくらいだった。なぜそう思っているのかは自分でも理解できないでいた。この人に逆らう事は神に歯向かう事と同じだと感じていた。この人が神なのではないかとすら思ってしまうほどだった。


「よし、今一度お前の力を示してくれ。先ほどの様な事は無いようにくれぐれも頼むぞ。お前には他の誰よりも期待しているのだからな。なぜか私が意図していない者がお前の行動に関わってくるのだが、ソレに惑わされないように自分をしっかり保つのだ。よいか、お前が私の代わりに世界を平和に導くのだ。よろしく頼んだぞ、我が右腕となりし者ルシファーよ」

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