表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/79

転生者として生きるべきか

「今回はあまりスキルを使うことが出来なかったみたいですね。その分余計なことに集中していたみたいですけど、あなたは自分の運命を理解しているんですか?」


僕が死んだ時に現れるこの女の人はいつもと違って不機嫌なようで、僕は少しだけ戸惑っていた。


「リンネも言っていたと思うんですけど、あなたとあの女の子はあまり深く関わるべきじゃないと思うんですよ。もう手遅れな感じはしていますけど、あの女の子が消えればやり直せると思うので、次にあの女の子に出会った時は躊躇せずに殺しちゃいましょうね」


「ちょ、ちょっと待ってください。そんな簡単に殺せとか言わないでくださいよ。それに、僕がアスカを殺せるわけないじゃないですか?」


「何言っているんですか、あなたは今まで散々人を殺してきたじゃないですか? 今更一人二人増えたって変わらないですよ。それに、これからももっともっと殺してもらわないと世界が平和にならないんですからね」


「それにしたって、僕には戦う手段も武器もないんですよ? アスカは僕が使っていた鎌も魔法も使えるんです。僕が勝てる要素なんてないじゃないですか?」


「そんなことはやってみないとわからないですよ。あなたは何度でも生き返ることが出来るし、そのたびにスキルを組み替えたり強化出来るんですから大丈夫なんです。精神的につらくなったとしても、その辺は私とリンネで何とかしてみますから安心していいですよ」


「そう言われましても、僕があのアスカと繋がっているってことはアスカも生き返れるんじゃないですかね?」


「それは無いでしょう。生き返れるとしたらあなたを利用するような真似はとらないと思いますし、もっとなりふり構わずにそれぞれの『力』を奪っていたんじゃないですかね?」


「そうかもしれないですけど、なんでそんなに邪魔者扱いしているんですか?」


「それはですね、私達の目的達成の障害になると思うからですよ。私達はこの世界を平和で安全な物にしたいと思っていまして、そのためにも不安分子は出来るだけ排除していきたいと思っています。あのような得体のしれない存在は危険だと思うのです」


「あの、大変申し上げにくいのですが、僕から見るとあなた達も得体のしれない存在だと思うんですよ。色々と助けていただいている事は感謝しているんですけど、どうして僕なのかもいまいちわかっていないし、その辺はどうなんですかね?」


「そう思われていても仕方ないとは思いますが、今は詳しく申し上げることが出来ないのです。今のあなたが知ったとしても特に不都合なことは無いのですけれど、これからあなたが撮る行動に制限がついてしまいそうなので、もう少しあなたがスキルを使いこなせるようになってからご説明いたしますね。ただ、私達は世界を平和にしてそれを継続させていきたいと思っているだけなのです」


僕が感じた限りではあるけれど、嘘はついていないように思えていた。


僕に人を見る目があるとの自信はないけれど、これまで何度も助けてもらっていると思うし、リンネにも色々と教えてもらって助かったことも多かったので、僕はこの人達を信用していいのだと思った。


今のところではあるけれど。


「さっきのとは違う質問なんですけど、僕が殺されたり自殺をしないで寿命まで生き残った時って老人のまま転生してやり直すんですか?」


「あら、気付いていなかったのですか?

あなた達はずっと生きていたとしても肉体的に時間が止まっているので、成長することも老化もしませんよ。

あちらにいる時にスキルが成長したりや体力が増えたりしないのもそう言うわけなのですよ。

ここに戻って来るとその止まっている時間が動き出して、肉体的にも精神的にも成長が一気にやってくるのです。

ただし、成長しないと言っても新陳代謝は起こっているので汗もかきますしエネルギーも使います。

あちらに居て何もしなくてもお腹は空くでしょうし、疲れたら眠くもなると思います。

成長はしなくても人間らしい生活を送らないと肉体は疲弊してしまい最悪の場合は死んでしまいますね。

その場合は自殺扱いになるので気を付けてくださいね。

あなたも体験しているのでわかると思いますが、お腹が空きにくくなったり少しのエネルギーで効率的に動けていたのも、その辺を操作できるスキルのお陰ですね。

最終的には日の光と水分だけで活動できるとは思うのですけど、そんなスキルを選ぶよりも魔王を葬れるスキルを身につけるべきだと思いますよ。

さあ、あなたは今回どんなスキルを選びますか?」


僕がこれから選ぶスキルによって行く場所が変わる事は知っているので、慎重に選んでなるべく罪のない人と関わらないようにしなくては。


スキルをほぼ使わなかったため成長のなかった前回の反省を踏まえて、今回はなるべく日常的に使えるスキルを選ぶことにしよう。


意外と日常的に使えそうなスキルは無いもので、気が付くと自分が安全に過ごせそうなスキルばかりが目に付いていた。


前回の転生で多くの人を殺してしまっていたので、今回はなるべく人を殺したくないのだけれど、それを許してもらえるか少し不安になってしまう。


料理系のスキルがあるとよかったのだけれど、見たところそう言った日常の家事で使えそうなスキルは見当たらない。


代わりになりそうなスキルも見当たらなかったのだけれど、どうしても一つだけ気になるスキルがあった。


『死者を呼び出す』スキルがあればもしかしたらサクラに会えるのではないかと思ってしまう。


サクラも転生者なので死んだとしても僕と同じように生き返ってしまうとは思うのだけれど、死んでいる瞬間はあるだろうし、何度も試していればそのうち会えるかもしれない。


その淡い期待に希望を込めてこのスキルを選ぶことにしよう。


他に選ぶとしたら、なるべくなら痛い思いをしたくないので強くなるスキルか回避できるスキルがよさそうだ。


そんな中で目に付いたのが『隠されている罠を見つける』スキルだった。


これがあれば不意打ちで痛い目にも合わないだろうし、上手く使うことが出来れば鉄壁の防御を築くことが出来るのかもしれない。


最後はどうしたものか。


攻撃的なスキルを一つくらいは持っていた方がよさそうだとは思うけれど、武器を使う系のスキルは前回選んでしまっているので使えないし、他に戦いに役立てそうなスキルは見つからなかった。


どうせなら人の役に立ちそうなスキルも探してみることにすると、なかなか良さそうなスキルがあったのでそれにしてみることにしよう。


「決まりました、今回は『死者を呼び出す』と『隠されている罠を見つける』と『魔力を分け与える』スキルにします」


「わかりました、その三つで間違いありませんね?」


「はい、この三つに決めたので大丈夫です」


「と言いましても、魔法を使えないあなたが誰かに魔力を分け与えることが出来るんですかね?」


「アスカから貰った魔力があるから大丈夫じゃないですかね?」


「深くは追及しませんが、今回は結構いいスキルを選んだと思いますよ。とくに、『死者を呼び出す』スキルは私も見てみたいと思っていましたので楽しみです。あなたが呼び出した怪物と魔王が戦う姿は絵になりそうですよね」


僕が呼び出した怪物?


呼び出せる死者って人間じゃないのかな?


「怪物を呼び出すってどういうことですか?」


「あなたが選んだそのスキルは死んだ怪物を使役して戦わせるスキルですよ」


「え? 死者って書いていたからてっきり死んだ人を呼び出せるのかと思っていましたけど、違うんですか?」


「死んだ人間を呼び出したって何の戦力にもならないじゃないですか?」


「それはそうですけど、変化する前は死んだ人と話が出来ましたよ?」


「あなたは怪物と会話が出来るのですか? 出来ないですよね? それなら会話が出来る人と話すのが普通だと思いますけど、呼び出して戦わせるなら怪物の方が確実じゃないですか?」


「それなら、死んだ魔王とか呼び出した方が戦力になると思いますけど」


「それはそうだと思いますし、もっともな意見だと思います。でも、死んですぐに転生する魔王をどうやって呼び出すんですか? 呼び出した途端に生き返ったらあなたが殺されちゃいますよ?」


なんてことだ、僕の目論見は外れてしまったけれど、これも何かの役に立てると信じて行動しておこう。


「それでは、あなたもスキルを選んでくれましたし、相応しい場所に転生させますね」


女がそう言って手に持っていた本を掲げると、僕の周りを眩い光が包みこんでいた。


あまりの眩しさに目を閉じていたのだけれど、目を開けることが出来るようになっていると、そこには光に包まれる前と何も変わらない光景があった。


「どうしてあなたはここに戻ってきたのですか?」


僕はその質問の意味が分からなかったのだけれど、以前だと光に包まれた後は別の世界に転送されていたと思う。


今回は転送が失敗したのか僕は一歩も動いていない状態でそこに立ち尽くしていた。


再び本を掲げると僕の周りは光に包まれていったのだけれど、先ほど同様僕は転送されることが無かった。


何度も何度も繰り返されてはいたけれど、僕はその場から転送されることが無かった。


「どうして? あなたが私の魔法で転送しないなんておかしいじゃない。いったいどういう事なの?」


「ちょっと失礼します」


そう言ってリンネが登場すると、何やら女の耳元で話をしている様子だった。


「それがですね、あの男はあの金髪女の魔法以外は受け付けないみたいなんです。私も信じられないんですけど、実際そうなんで仕方ないんですよね。こうなったら、結界の一部を解いて金髪女に協力してもらうしか転送させる手段がないと思いますよ」


「それはそうかもしれないけれど、結界の一部でも解いてしまったらこの場所が漏れてしまうかもしれないのよね。でも、仕方ないわ。一部だけ解放して会話だけでも出来るようにしましょう」


女が持っていた本をパラパラと捲ると、目的のページを見つけたようでその場所を真剣に見ていた。


大きくため息をついた女が両手で小さな輪を作ると、そこに魔力を集中させて光の玉を作り出していた。


僕にはわからないけれど、結界の一部が解かれたようで、その開いた場所からアスカの声が聞こえてきた。


「ああ、やっと話すことが出来た。私が貰った能力でそっちに行こうと思ったんだけど、結界があると『空間』の出口を作れないみたいなのよ。それにしても、早くお兄さんをこっちの世界に送り返してもらえないかな?」


「それが出来ないからあなたと話せるようにしてるんじゃない。良いから早くこいつを転送できるように妨害している魔法を解除しなさいよ」


「その声は、もしかしてお兄さんに付きまとっている精霊みたいなやつかな?」


「付きまとっているって何よ。私はこいつの事をあんた達みたいのから守っているのよ」


「あはは、その割には結構失敗してるみたいだね。私からもお兄さんを守れてないみたいだし、そもそも、守るって何かしら」


「そんなことはいいから、転送できるようにだけでも解除しなさいよ」


「それは構わないけれど、君が転送させるわけじゃないんでしょ? 転送させる人の魔力がわからないと解除のしようがないかな」


「それなら私の魔力をお見せいたしますので、それでよろしいですか?」


「ええ、ずいぶんとお若い声のようですね。お兄さんを呼んだ人とお話しすることが出来て光栄に思いますよ。それに敬意を払ってお姉さんの魔法を無効化しないようにしておきますね。でも、お姉さんの魔力覚えちゃったら今後何かあった時に私が得しちゃいそうですね」


姿が見えないけれど、アスカはこの二人と会話をするだけで僕が無意識のうちに無効化していた魔法を有効化しているようだった。


その作業にどれくらい時間がかかるか見当もつかなかったのだけれど、僕が予想していた時間よりも大幅に早く終わったようだった。


「お姉さんの魔法がお兄さんにも効くようになったよ。そこじゃなかったらどこでもお兄さんに会いに行けるんだけど、出来るなら私の目の前に転送してもらえると助かるな」


「ごめんなさい。転送先は私が決めているわけじゃないのよ。だから、あなたが探して近くまで行くといいわ。それが出来るのならね」


そう言った後に女が手に持っていた本を掲げると、僕の周りを眩い光が包みこんでいた。


あまりの眩しさに目を閉じていたのだけれど、目を開けることが出来るようになっていると、周りの環境が一変していた。




僕が目を開けるとそこは何とも薄気味の悪い寒々とした墓地のような場所であった。


死者を呼び出すことが出来たとしても、この場所で呼び出すのは気が引けてしまう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ