利害の一致?
グレン様、書いてて楽しい。
「では私を利用してはいかがですか?」
曲が終わるとグレン様と共に壁際へと移動した。
この関係はグレン様は令嬢達から、私は令息達からの誘いを断るため。
とてもありがたい申し出ではあったけれどグレン様のメリットが全く見当たらない。
元々グレン様は自身で令嬢達からの誘いを切り捨てていたのだから。
その事をグレン様に問いかけると、
「そうですね…では理由は可愛い弟の恋人の従姉妹だから、と言うことではいかがですか?」
そんな事だけでこんな面倒な事をしようと思うかしら?
訝しげに見上げる。
「まぁ、一番の理由を挙げるならば面白そうだから、ということでしょうか?」
「…面白そう、ですか?」
彼の意図しているところが分からず、小首を傾げるとグレン様の大きな手が私の頬を撫でた。
「そう、例えばこうしたらあなたはどんな反応をするのだろう?…とかね」
グレン様にそっと抱き寄せられる。
「…っ」
周りがざわめいた。
グレン様の行動に吃驚はしたが、決して嫌な感じはなかった。
それはその所作がスマートなものだったからなのか相手がグレン様だったからなのか。
グレン様を見上げれば彼は慈しむように頬笑むと私の髪を一房とりそっと口づけた。
「グ、グレン様…こんなことする必要がございましたの?」
グレン様に抱きしめられたまま彼を見上げるとそれはそれは綺麗に微笑まれた。
「もちろん、令息達に牽制は必要だろう?」
あまりにきっぱりと言われてしまったのでそれ以上言うことが出来なくなってしまった。
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「ちょっとオリヴィア!どういうことなのか説明して?」
目の前のルイーズが私をがくがくと揺さぶった。
今私はルイーズに誘われてルイーズのお屋敷の東屋でお茶をしている。
右にはルイーズ、そして左には何故だかジャン様がいる。
「どういう…と言われても私にもよくわからないの」
私は小首を傾げるとと困ったように呟いた。
「オリヴィアとグレン様はこの前の夜会で初めてあったのよね?」
「えぇ、そうよ?」
「ジャンと私がダンスをしている間に一体何があったの?
グレン様が私以外にあんなに優しく微笑みかけているのなんて初めて見たわ」
口を尖らせて拗ねるルイーズは端から見ると大好きな兄を取られた妹のようだった。
「ルイーズ話がずれてるよ。お茶でも飲んで落ち着いて」
ジャン様がルイーズに座るよう促すと焼き菓子を勧めた。
お茶を飲んで落ち着いたルイーズは深呼吸をすると口を開いた。
「グレン様は所謂女性嫌いで有名なの。本当に嫌いではないとは思うんだけど私以外とは進んで話してるのを見たことがないわ。
前にグレン様に思いをよせている侯爵令嬢が話しかけたんだけど絶対零度の笑顔で華麗にスルーされていたわ」
私だったらグレン様に無視されるなんて耐えられないわ。とその様子を思い出したのかルイーズは自分の肩を自身の両の手で抱きしめた。
「結論から言えば別に兄上は別に女嫌いではないよ。ただたくさんのご令嬢方が宰相補佐という肩書きの兄上に群がってくるから兄上は嫌気がさしているんだと思うよ」
ジャン様がそう説明してくれる。
ならば可笑しな話しである。
何故グレン様はわざわざ面倒な事に足を突っ込んだのだろう?
宰相補佐であるグレン様に面と向かって何かを言える令息はほとんどいないだろうけど、別に私と関わる必要もなかったはず。
―解せない。
「もしかしてグレン様は以前からオリヴィアに興味を持っていたんじゃないかしら?」
何故なのか考えているとルイーズがとんでもない発言をした。
「そんな事あり得ませんわ。先日の夜会で初めてお目にかかったのよ」
困ったように眉根を寄せるオリヴィアの両の腕をガシッとルイーズが掴んだ。
「オリヴィア!あなた、自分の美しさをちゃんと自覚しているの?私が男性なら一目惚れしてると思うわ」
何故か自信満々にそう言い放つルイーズを隣のジャン様がオロオロと見ている。
ジャン様、オロオロしてないでルイーズを止めて下さいませ!
残念ながらオリヴィアの心はジャンには伝わらなかったようだ。
「ジャン、私良いことを思いついたわ。オリヴィアとグレン様、私とジャンとでダブルデートをするのよ!」
とっても良い案だとにっこりと笑うルイーズを私もジャン様も止めることが出来なかった。
一筋縄じゃいかない展開が書けたらなーと常々おもいます。