バハムート神殿
そこは特段豪華でも竜達が集まっているわけでもなかったが、どこか清涼な雰囲気を醸し出していた、壁には異様な絵が描かれており少しだけ怖かった、神殿の中央には台座があり見事な作りの竜の彫刻が置かれている、ここがバハムート神殿・・・・・・
「さあ、守よ、中央の台座に酒を置いてくれ」
エンぺラルさんの声がどことなく緊張しているのが分かった、彼らにとってここはかなり重要度の高い場所の様だ、彼らの無言のプレッシャーが僕に突き刺さる、・・・とても、帰りたいです・・・
僕はジルベルさんに助けを求めるように目を向けた、が、ジルベルさんも期待するように僕を見ていて、色々諦めた、一歩一歩確かめながら台座に向かう、遂に台座に着いた、そう思った時だった、台座に居る竜の彫刻がいきなり喋り出したのだ
「異世界から遥々よく来た、守、ソナタの事はずっと見ていたぞ」
包み込むような優しい声だ、僕はすっかり安心してへたり込んでしまった、よかったこの竜(神?)も優しいみたいだ、そう思うと今度は疑問が沸いた、
「えっと、ずっと見てたって、貴方が僕を呼んだんですか?」
「・・・世界観の干渉など神々でも出来んよ、勘違いさせてしまったようだな、私がソナタを知っているのはジルベルが原因だ、私は全てのドラゴンとつながっている、ある日ジルベルから強烈な歓喜を感じた、気になって探ってみたのだ」
そう云う事か、じゃあやっぱり僕がこの世界に来たのは偶然なんだなぁ、あ!お酒捧げないと!
「あの、お酒です、どうぞ召し上がってください」
そう言って僕は台座に色々なお酒を並べた、どれも度数が高く、値段も高い
「おお、これが、異世界の酒か、どれ、一つ味見してみるか・・・」
彫刻の竜が器用に酒を飲んでいく、ドキドキ、喜んでくれるといいけど、・・・どうかな?
「むむむ、これは甘露だ、実にうまい!、ありがとう守、実はジルベルが飲んでいたのを見て羨ましかったのだ、実際に飲んでみると予想以上に美味しかったぞ、これは礼をしなければならんな」
「・・・いえ、お礼なんて、ただお酒を出しただけですし・・・」
「いやいや、それではワシの気持ちが済まない、そうだ、これをやろう」
彫刻の竜、・・・もうバハムート様でいいか、バハムート様の体が光り輝き、その光が輪になってこちらに近づいてきた、と思ったら光が収まり、一つの腕輪になってしまった・・・これは一体?
「その腕輪は、装備したものに空間庫のギフトを与えるものだ、ぜひソナタに持ってもらいたい、それがあれば異世界から買った物を好きなだけ入れておけるだろう」
マジか、何かすごいアイテムを貰ってしまった気がする、僕が上げたのたかが酒だよ!?、でもこれがあればかなりこの世界を自由に見て回れるかも、有り難くいただいておくか
「有難うございます、大切にします、もう一つお酒どうですか?」
「うむ、使ってやってくれ、酒は有り難く貰う」
こうして神殿ではアイテムが手に入った、次は何をするんだろう?ジルベルさんに聞いてみよう
「ん?これからする事?、別にないぞ、バハムート様に挨拶したからの、これからは自由時間じゃ、と、ところでの、ワシの分の酒はあるんじゃろうか?」
「え?さっきまでほかの竜達と飲んでたじゃないですか、まだ飲み足りないんですか?」
「全然!全然飲み足らん!、折角竜皇国に来たんじゃ、皆に守の紹介もかねてパーティーがしたいんじゃ、そのパーティーで酒を浴びるほど飲む!」
・・・・・・ハア、まあいいけど、パーティー会場の準備とかはそっちでやってくださいよ、多分食事も僕が用意するんだよなぁ、まあ異世界通販で買うだけだからいいけどさ
僕は今竜皇国の北にあるとても巨大な城の中に居る、そこに大小様々なドラゴンたちが集まって宴の開始を今か今かと待っていた、特に先ほど酒を味わったドラゴンたちの熱気はすさまじく、恐怖すら感じる始末だった
「今日は我らに新たな仲間が加わった、その名は守、異世界からやって来た異世界人だ、この料理は全て守のギフトによって手に入れたものだ、さあ皆の物、今日は大いに飲み、大いに語り合おうではないか!、そして守、この宴の主役として何か一言頼めるか?」
え!?、い、いきなりですな、一言、一言、・・・ダメだ何も思い浮かばない、取り敢えず自己紹介だけでもしないと!
「・・・先ほどご紹介に預かりました、守と言います、地球という星から来ました、此処は地球と何もかもが違いかなり戸惑っています、この世界のルールを知らずに迷惑をかけてしまうかもしれませんが、その時は厳しく教えてくれるとありがたいです、今日は僕の為に集まってくださってありがとうございました、皆さんたくさん飲みましょう!」
一斉に雄たけびを上げて酒や料理に群がるドラゴンたち、初めて酒の味を知った者たちは一瞬動きを止めその後また雄たけびを上げる、・・・彼らの気持ちもわかる、というのも僕は城に来る前この世界の酒を飲ませてもらったのだが、あれは酒ではなくアルコールの香りがする液体だった、また食べ物に関しても、肉をそのまま焼くとか野菜をそのまま食べるとかしていたらしい、つまり、調味料と料理法が存在しないのだ、これは彼らだけでなくこの世界共通らしい(唯一人族だけが料理をするが、やはり調味料は存在しない)、この世界はとても美しいが、同時にとても味気ないのかもしれない
僕がそんなことを考えていると、近くに居たドラグーンの人が話しかけてきた
「新人さん、この料理と酒、最高だぜ!、俺はアキウス、風嵐竜のドラグーンだ、これからヨロシクな!」
そう言ってさわやかに挨拶してくれたアキウスさん、彼は緑の短髪を逆立てたヨーロッパ風のイケメンだ、身長はかなり高く、全体的にスラッとしている、結構強そう
「はい、守です、アキウスさん、今日は楽しんでくださいね」
「ああ、こんなにうまい酒は初めてだ、十分楽しいぜ、それにこの丸いピザ?っていう食べ物も信じられない位にうまい、あんたみたいな奴が仲間になってくれてうれしいぜ」
そう言ってさわやかに笑うアキウスさんは、僕の肩をたたき、料理のある方へ向かって行ってしまった、このあとも次々と客が訪れ、この日も僕は酒やつまみを楽しめなかった、残念・・・