旅立ち (竜皇国)
ストック終了
ついにこの日が来てしまった、僕が竜皇国に旅立つ日だ、ジルベルさんは鞍を背負い行く気満々だ、ドワゴは昨日帰ってしまった、僕は考えてみたんだが、別に僕自身が行く必要はないような気がする、ジルベルさんに酒やつまみを渡しておけばそれで良いんじゃ無いだろうか?ジルベルさんに言ってみた
「そんなに行きたくないのかのぅ、じゃがこれは守のお披露目でもあるんじゃ、古来よりドラグーンとなった者は竜皇国に有る神殿ですべてのドラゴンの神バハムート様に新しい眷族ですと挨拶する、これは決まりなんじゃ、なに、道中休み休み行く、そんなに苦労は掛けんから耐えてくれんかのぅ」
そこまで言われては僕も黙るしかない、大体ジルベルさんに迷惑をかける気は毛頭ないのだ、仕方ないと割り切る事にした、そうなると今度は竜皇国に対する興味がわいてきた、どんな国なんだろう竜皇国
「ん?竜皇国について?、これから行くのにおかしなことを聞くのぅ、そうじゃなまずワシの様なドラゴンが沢山いるな、それだけではなく守の様なドラグーンも沢山おるぞ、後は見事な山脈、その国は雲の上にあり、全ての種族の平和を見守っている・・・なんての」
「かわいい子、かわいい子は居ますか?」
「フッ、守もお年頃じゃな、勿論居るぞ、沢山居る、そうじゃな、暫くあそこで羽休めでもするかの」
ウォーーーーーーーテンション上がって来た、行こう、ジルベルさん早く行こう!素敵な女の子たちが僕を待ってます!
「やる気が出てきたようじゃな、ではいざ参らん、幻の竜皇国へ!」
「おーーーーーッ」
これからの冒険と出会いに胸を躍らせながら鞍に飛び乗り、雄叫びと共に僕たちは出発した、山頂から飛び出し雲の中を駆け抜ける、下にはバカバカしいほど大きなジャングルが有り雲の切れ間から偶に緑の瑞々しい雄大さを痛感出来た・・・・・・美しい、その言葉ばかりが胸に去来する、これが竜の背に乗って飛ぶと云う事なのか、ビビってた自分がバカみたいだ、だが、この世界からのサプライズはこれだけでは無かった
「見ろ守、あの一本の巨大な樹を、あれは世界樹、世界が始まる時にできた、最初の樹だ、雄大であろう?」
その樹はまるで世界に向けて胸を張る様に屹立していた、この世界の物をその全てを許し、包み込むような優しさがその樹にはあった、ジルベルさんが気を利かせて近くまで寄ってくれる、デケェ、デカすぎて樹の天辺はまるで見えない、ジルベルさんはまるで挨拶をするかのようにホバリングし(空中で一旦停止する事)キュルルルと啼いた、枝が挨拶を返すかのように震える(意識があるの!?)、枝の近くにはその巨大な枝を利用して誰かが住んでいるようだ、彼らは耳が長くエルフの様だった、皆一様に僕たちに跪いている、何なんだろう
「ジルベルさん、彼らは何で跪いているんですか?」
「彼らはエルフじゃ、エルフは自然に敬意を示す、超自然的な存在であるワシたちに畏敬の念を抱いているのじゃよ、付き合ってみると意外といい加減な所も有るんじゃがの、礼儀は正しい奴らじゃ」
へー、そうなんだ、指輪物語とかじゃ竜とエルフは敵対してるんだけどな、まあ、僕の世界の常識なんてこの世界じゃ通用しないか、それにしてもでっかい樹だな、どの位あるんだろ?
「この世界樹ってどの位の大きさなんですか?」
「ん?そうだのぅ、1000年位前に聞いた話だと軽く神界までは届いているそうだ、今どれほど大きくなっているかはわからん、さて挨拶も済んだことだしそろそろ行こうかのぅ、飛ばすぞ守、しっかり掴まっとれよ!」
「はいッ、行きましょう、この美しい世界をもっともっと魅せてください!」
「ほッほッほ、美しいか、この世界を作った神々も喜んでいるじゃろう、その素直な感性を大切にな」
その言葉を皮切りに僕たちはギュンと加速した、風景がすごい勢いで流れていく、雄大なジャングルを置き去りにして僕たちは進んでいく、エメラルドの草原を越え、人々が生活を営む豪華な国々を越え、遂には全ての生命の原点、サファイアブルーの海に出た、しかしその海すら僕たちは越えていく、そうやって2つの大陸をあっという間に移動してしまった、だが何だ、何もないじゃないかと思っていたら、急にジルベルさんが上昇した、そこで僕が目にしたのは、雲を下敷きにした空中に浮かぶ巨大な大国だった、大国の端から端には虹が掛かり、そこから太陽の光を優しく変えた何かが国を覆っている、まるでベールを掛けているかのようだ、中央には大きな泉があり何人もの竜が羽休めをしている、・・・とてもいい場所の様だ
「着いたぞ守、皆に挨拶する時に紹介するから礼儀正しくの」
そう言って泉で休んでいる竜に近づいていく、ウッ、何か緊張してきた
「皆の衆、久しぶりじゃな、ワシが帰って来た、背に乗っておるのはワシの初めての眷族、守じゃ、何と守は異世界人なんじゃ、ほれ守挨拶じゃ」
「は、はい、ご紹介頂きましたジルベルさんの眷族になりました守です、若輩者でこの世界の事は何も知らない未熟者ですが、どうか皆さんよろしくお願いします」
僕は頭を下げた、こんな感じでいいんだろうか?そっとジルベルさんを見ると優しくうなずいてくれた、良かった僕はまだ学生で本格的な礼儀を知らないけれど何とかなったみたいだ、
僕が安心していると、休んでいた竜達がこちらに寄って来た、皆さぞかし名のある竜達なのだろう、威圧感がすごい、そのうちの一人が進み出てきて僕を見つめて言った
「よくぞ来た、ジルベルの眷族、新しきドラグーンの守よ我々はそなたを歓迎する、この皇国でゆるりと休まれるがよい」
「はい、お気使いに感謝します、失礼ですがお名前を伺っても宜しいでしょうか?」
「おっと、これは失礼した、我はこの国の皇、エンぺラルという、ああ跪いたりするのはやめてくれ、これでもフランクな方でね」
ウインクしながらそう言った、良かった、優しい竜みたいだ、落ち着いてみてみると周りの竜は誰も僕を敵視していない、まるで孫を見るお爺ちゃんお婆ちゃんみたいに微笑んでいる、あッそうだ!お酒、お酒振る舞わないと
「ジルベルさん、お酒振る舞っていいですか?」
「フフ、守も彼らを気に入ったみたいじゃな、ああ良いとも、皆の衆!守はさっきも言ったように異世界から来た、その時ギフトを得て地球という世界の物が買える様になった、皆も異世界の酒には興味があるじゃろう、守が振る舞ってくれるそうなので頂こうではないかの」
・・・異世界・・・酒?・・・異世界の酒が飲めるのか?・・・異世界人珍しい・・・お酒ぺロペロ・・・
興味は持ってもらえたようだ(お酒ぺロペロ?)よし、何を買おうかな?、まずウィスキーは確定っと、後はブランデー、リキュール、スピリッツ何かも買ってみるか・・・
「はい、こちらが異世界の酒になります、種類は右からウィスキー、ブランデー、リキュール、スピリッツです、リキュールとスピリッツは特に度数が高いので気を付けて飲んでください」
「ほう、これが・・・どれも嫌に美しき色合いだな、ありがとう守、では早速一口」
ゴクッと一口飲んだ後、とても驚いた顔をして(竜の顔の変化は余り分からないがそんな気がした)その後一気飲みした、えッ!それってリキュールで度数が68もある奴じゃないか、・・・大丈夫かエンぺラルさん
リキュールを飲み終わった後も無言で新しい酒を開け、飲み続けるエンぺラルさん、周りの竜も興味津々でその姿を見ている、中には酒だけを見ている竜もいる
ゴクッゴクッゴクッ、プハーーーーーーー、旨い!旨すぎるぞーーーーーー!
全部飲んだ後いきなり叫び出した、ちなみにお零れを狙っていた竜達は涙目である、後で上げるからね、今は我慢してね、
「じゃろう、旨いじゃろう?、むふふ、これで貴様も守の酒の虜よ」
「ああ!、旨い!、守よ、この酒は何というのだ、この様な美酒は神々でさえ飲んではおらんだろう」
「えーっと、ウィスキーはザ・マッカラン、ブランデー、リキュール、スピリッツはそれぞれヘネシー、ぺルノ・アブサン、スタルカです」
「なるほど、異世界の酒は変な名前なのだな、だが、旨い、・・・あッ、ぜ、全部飲んでしまった、すまない守、出来ればもっと分けてほしい」
「あ、はい、今買います、」
僕は急いでさっき買った銘柄を買い足した、全て買い終えてから皆の前に並べていく、皆はギラギラした目で酒を見ている、・・・えっと、もう飲んでいいよ?そう言うと待ってましたとばかりに一斉に瓶を傾け飲んでいく、いや、だからその酒一気飲み様じゃないからもっと味わって飲んでよ
「「「「「ウォーーーーーーーーーーーー!旨い!」」」」」
彼らの喜びの咆哮で大地が揺れる、振動がすごい、飲み終わった後は口々に異世界の酒を褒めたたえている、度数が良いとか香りが良いとか、分かった!分かったから叫ぶな!吠えるな!
そんな中エンぺラルさんは深く何かを考えていた、一体どうしたんだろう?
「どうしたんですか?お酒美味しくなかったですか?」
「ん?、いや、守がもたらしてくれた酒はまさに極上の一品だ、だからこそな、何を返せばいいか悩んでいたのだ、それに、出来ればこの酒、我らが神バハムート様に献上したくてな、守よ、何か欲しいものは無いか?」
えっと、いきなり言われてもな、どうしたもんか、ぶっちゃけこの世界の事まだあまり知らないからどんな物が有るか分からない状態なんだよね、んーでも、ジルベルさんに聞いた処によるとこの世界って結構危険だから防具とか武器とかほしいかな?
「そう・・・ですね、なら防具や武器が欲しいです、こんなに綺麗な世界に来たんだからすぐに死にたくない」
「ふむ、ならば我らの素材を使った武具でどうだろうか?、ドワーフに鍛えさせればそれこそ神すら殺せるだろう、ドワーフに知り合いはおるか?」
そう言われて、ドワゴのお父さんの手紙を読んでなかったことを思い出した、後で必ず読んでみよう、大丈夫ドワーフの知り合いは居る、ただ、そんなに強力な物でなくても良いのに、神と戦う予定はありません
「大丈夫、ドワゴって人と知り合いです、あッジルベルさん、後で手紙読んでください、僕まだこの世界の文字読めないと思うので」
「手紙などいくらでも読んでやるわ、どれ、出してごらん」
そう言って手を差し出される、え、此処で読むの?、竜神様にお供えは?そう思いながらも懐を探し手紙を出して渡した
「なになに、拝啓、異世界からの客人、守様へ、このたびは大変おいしいお酒を頂き本当にありがとうございました、一族の誰もがその味に驚き、また幸せを感じました、何か作ってほしい物がありましたら是非お気軽にご相談ください、最優先で検討させていただきます、では、寒い季節になってきましたので風邪などにお気をくださいますよう、ドワーフの王より感謝を込めて・・・と書いてあるな、」
・・・礼儀正しすぎじゃね、ほんとにドワゴの父親?、いや、まあ、無礼よりはいいんだろうけど・・・
「ドワーフとの関係が良好なようで大変結構、これで、お返しは決まりだな、早速で悪いが神殿にきてくれるか、一刻も早くバハムート様に異世界の酒を味わって貰いたいのだ」
「あッはい、只今、行きます、案内してもらえますか?」
こうして僕は竜皇国について早々、竜達が崇める神殿、バハムート神殿に向かうことになった
此処からは亀更新です