親愛なる隣人 ドワーフ
「ん?人間?なぜこんな所に人間がいるのだ?あッさては人間、ジルベル様の貢ぎ物を奪いに来たか!カーッそうはさせん!盗人めこの大斧でカチ割ってやるぞ!」
「・・・え、なんですかこの暑苦しいオッサン、ジルベルさん?」
「おお!、もうそんな時期じゃったか、紹介するぞ守、こ奴は近くの山に住むドワーフの一人で名はドワゴじゃ、ドワゴ、守は敵ではない、何と異世界から来た人間で3日前にドラグーンになった、いわばワシの眷族じゃ、仲良くせい」
「ん?ジルベル様の眷族?と云う事はノーカチ割り?」
「ノーカチ割りじゃ」
こいつらの会話聞いてると頭いてえ、っていうか何故そんな残念そうな顔をするのだ、・・・怖いぞ
「ヨロシクな人間!俺はドワゴ、見ての通りドワーフだ!本当は人間が嫌いなんだがジルベル様の眷族なら仲良くしてやるぞ!アクシュアクシュ」
「え、ああ、はい、よろしく、名前は守です」
そう言って僕たちは握手した、何だこの状況?、君も異世界にきてドワーフと握手!・・・何かのヒーローショウか!
「そうだ守よ、ドワゴにも酒をふるまってはくれないか、ドワゴよお前も異世界の酒を飲んでみたいであろう?」
「異世界の酒?、それは興味あるな、一つ貰えるか?」
「・・・まあいいですけど、で、どんなのが良いんですか?、色々ありますけど」
「度数の高いのを頼むぜ、薫りが高けりゃなおいいぜ!」
度数が高くて薫り高いのか・・・えーと、これなんてどうかな、バーボンウィスキーのハーシュ・セレクション・スペシャル・リザーヴ、1万円で48度、度数高すぎるかな?
僕はこれを何本か購入して渡した、ドワゴは見事なギヤマン細工だなと言いつつウィスキーを眺めている
「せっかく買ったんだから眺めてないで飲んでくださいよ、多分美味しいですよ」
「ふむ・・・じゃ、早速一口」
「あ、あの、ワシにも・・・」
ドワゴさんは一口と言いながらグビグビと全部飲んでしまった、隣でジルベルさんが羨ましそうに見ている、おいおい、一口で全部飲んじゃったよ、ジルベルさん泣いてるよ、僕はそっと何本かのうちの一本を渡した
「プハーーーーーーッ、旨い、何じゃこれは!、何なんじゃ!、芳醇にして味わい深く、そして、そしてこの火を飲んでいるかのような感覚、これは、これはもはや神の酒じゃーーーーーーウホーーーーーー」
「旨いのぅ旨いのぅ、もうちょっと飲みたいのぅ」
良かった、皆大喜びだ、1万円もするからね、そりゃ旨いよ、僕も飲もう、そう思って瓶を手に取り蓋を開けると、さっきまで騒いでいた二人がじっとこちらを見ている、・・・分かったよ差し上げますよ
「へへへ、悪いな、おお、この感じだ、臓腑に染み渡るぜ」
「すまんのぅ、旨いのぅ」
「もういいです、好きにしてください」
二人はまるで砂漠でオアシスの水を美味しそうに飲むように酒を味わっていた、そんなに美味しいのかな、えーっと、いつも僕が飲んでいるビールがアルコール度数7位だろ?、この酒は48度・・・およそ七倍か・・・あんな風に飲んだら死ぬんじゃね?
「ふう、旨かったのぅ、ところで今回の貢ぎ物はなんじゃ?また、また金貨かのぅ?」
「・・・う、嫌、違う、今回は・・・言いづらいんだが酒にした」
「・・・・・・ああ、それは・・・この酒を飲んだ後ではのぅ」
「・・・そうだな、はっきり言って異世界の酒と比べるとこっちの酒はただの水だ、・・・よしッ、何か欲しいものはないか、この酒の礼もしたい」
「そうじゃの、この酒は守が振る舞った、であるならば、礼は守が欲しいものを与えてやってほしい」
おお!、ジルベルさんすごく優しい、さっきまでこの飲んだ暮れダメ竜がとか思っててごめん
「そうか、じゃあ人間、いや守、欲しいものを言ってくれ、流石に国宝クラスの物は渡せないができる限り言われたものを作ってくる」
うーん、そう言われてもこの世界で欲しい物か・・・あッ、じゃあ、あれが良いかな
「あの、ジルベルさんに掴まって竜皇国まで行くことになったんですけど、そこまで掴まっていくのはしんどいから背中に着ける鞍か何か作ってくれると嬉しいです」
「・・・なんでもやると言ったのに欲が少ない奴だ、分かった乗るのは一人だな、任しとけ、立派な物を作ってやるよ」
「そうなんじゃよ、守は若いのに欲が少ないんじゃ、ワシちょっと心配、じゃが、欲深いよりはいいじゃろ」
ドワゴは、そうだなと言って男臭い笑みを浮かべた、どうやら認めてくれたようだ
「ところでな、さっきの鞍の話じゃが、出来ればすぐに欲しいんじゃよ、何とかなるかのぅ」
「・・・ジルベル様、これから作るんだぜ、今すぐにってのは無理さ、そうだな、3日、3日くれ、鍛冶魔法を使って仕上げて見せる!」
「待ってください、鍛冶魔法って、金属で鞍を作る気ですか?、お尻が痛くなるのは嫌なんですけど」
「違うぞ守、鍛冶魔法は生産系の魔法全般を言うんだ、革生成も形成も鍛冶魔法なんだぜ、急いでいるなら今から帰って作るがその前に・・・その、お土産として酒を幾つか貰えんか、親父殿に飲んでもらいたい」
そう言ってモジモジしながらこちらを見ているドワゴ、全く仕方ないな、僕は幾つか酒を見繕って渡した
「おお!、有り難い、では、3日後必ず持ってくる、期待していてくれ!」
ドワゴは意気揚々と帰っていった、何か嵐みたいな人だったな・・・さて、3日経つまで何してようか?