【膝の温もりと、信頼というもの】 四章
「瑠璃様っ! 瑠璃様っ!」
やっと名前で呼んでくれた。ってか、俺いつ名前をエノに教えたっけ? 記憶まで曖昧になってきやがったぜ。
「剣から…剣からから手を離してくださいっ!」
離すもんか…今背中に乗っている奴が死なないと、いつまた襲撃されるか…?
その時には、俺はもうこいつらの身代わりなんてできない。だから…今ここで、この男を殺すっ!
俺はそう言って、灼熱に耐えた。
「ダメです瑠璃様っ!」
お客様にこんな無茶させて…私は…。
「エノ…違う。自分を攻めるな…。俺は自分がやりたくてやっていることだ」
まるで、心を読んだかのように俺はエノにそういう。
「でもっ!」
「ーーでもじゃないっ! ってか、さっさと俺を殺せ!」
俺はそう言って、男の手首をさらにひねる。
「放せっ! …放せっ!」
男はそう言いもがくが、炎で火傷しているせいで俺よりは力が出ない状態になっている。
「放すもんか。ってか、今こうやってお前らが乗り込んできて喧嘩をうってきたんだろう。ただ俺はその喧嘩をかっただけだっ! だから、かった喧嘩はお前を殺すまで続ける」
かった喧嘩は殺すまで続ける。これが現実だったら警察にお世話になるな。
「くそがぁぁぁぁぁっ!!!」
男はそう言い、無理にでも離れようとする。
「こっちももう力が出ねぇんだっ! おとなしくしろっ!」
と言っても、男の手からは何も感じない。ーーどっちも立っている状態。声を出しているだけでもしんどい状態だ。それに、自分の服の上で燃え盛る炎のせいか、だんだんと傷の幅が大きくなっていく。
耐えるか死ぬかの勝負っ…負けられねぇ。
俺は目を閉じ、少し笑みを見せる。
「エノ…あとは任せたぜ」
男の意識はもうなく、俺の意識も薄れていった。
「あっ! アクアっ!」
エノは急いで水の魔法で俺に燃え移った炎を消す。
そして、エノが俺と男に刺さっていた剣を抜く。
「瑠璃様っ!」
エノが瑠璃の名を叫ぶが、もうその時には俺の意識などなかった。
「くそっ…またこの世界かよ…」
意識のないはずの俺はまた、暗闇の世界に突っ立っていた。
「君はよくこの世界に来るね。でも、私のことはまだ知ることはできない。もう少し…もう少しで…」
刹那、俺はまた誰か知らない人の声を耳にし、視界が再び暗くなった。
「うっ…またあの夢…」
俺は閉じた目の上に片腕を乗せた。
あぁ、これでまた俺は殺されるのを逃れるために必死で逃げて戦わないといけないのか…もう疲れたな。
でも、つまらない学校生活よりはましだな…。
「…起きましたか」
急に誰かが俺にそう問う。
「ん? あぁ、エノか」
「良く解りましたね。お客様」
また呼び方戻っている。それに透き通った声、幼さがまだ残る声はエノだとすぐにわかる。それが彼女を見分ける方法だ。
「そりゃあ、俺の場合何度も聞いてきた声だから…」
俺はそう言って腕を目の上からどかし、目を開いた。
「いつもと同じ天井。どうやら、戻ってこれたようだな」
俺はそう言って、起き上がる。でも、いつもと部屋の感じはがらりと変わっている。
部屋は、ガラスが割れ、人の血や死体だらけだった。まるで、
誰かが戦った後のようだった。
「にしても、この部屋、少し荒れすぎていないか?」
そう言う俺に、エノが眉間にしわを寄せる。
「あなたなら、なぜこうなったか知っているはずです。ってか、あなたは目の前で見ていました。そして、あなたが解決したことですよ。身を犠牲にしてまでっ…」
エノは胸に手を当て、俺の目を見る。
「一体、何のことを言っているんだ?」
俺はエノが言っていることがさっぱりとわからなかった。
「冗談ですよね。冗談ならやめてください」
そうエノは言うが、俺の記憶に戦った記憶はない。
「エノ。どう? るりの様子は…?」
エノは首を振ってーー、
「彼が戦った後の記憶がないとおっしゃっています。でも、私は彼がアリア様の仮精霊を使って精霊殺し、襲撃者を操っていた男性を燃やし、殺したところまでこの目で見ております。だから、戦っていないということは絶対にないはずです」
エノは少し汗を流し、焦った様子でそうアリアに伝えた。
「戦っていること。私も襲撃されたことは、はっきりと覚えているわ。…私の精霊の力を少しでも使えば」
アリアはそう言って、俺の寝ているベッドに近づいてくる。そして、人差し指、中指をくっつけて、アリアは俺の額の前にその二本の指を近づけてきた。
「ちょっと失礼するね」
そう言って、アリアは俺の額に二本の指を接触させた。すると、俺の額にくっつけた指から眩しい光が放たれる。
「一体なに…を…」
俺は急な眠気にやられ、後ろに頭の重さがいって、倒れた。
「アリア様。やはり人間にはその魔法はきついです」
エノは心配そうに俺を見て、そうアリアに言う。
「でも、記憶を確認するにはそうするしかないの」
アリアはそう言って、指を俺の額につけながら靴を脱ぎ、俺の乗っているベッドの上で正座をする。
「今のところ、まだしっかりと記憶の確認ができていないけど、もう少し探ってみれば記憶があるのか、記憶が無くなっているかがわかる。これはエノにとってもるりにとっても知りたいことなんでしょ。なら、少しぐらい協力させて」
そう言って、アリアは俺の頭をそっと片手で上げて、自分の膝の上に頭を下した。
「でも、アリア様はしっかりと戦っていました。役に立っていなかった。そんなことはありませんよ」
エノはそう言って、アリアの近くに来る。
「でも、るりにこんな無茶させたのは事実。るりも、必死になって戦ってくれて、ここまでるりを運んできてくれたエノにも、少しでもお礼をしたくてね」
そうアリアが言うと、エノは少し笑みを浮かべ。アリアと一緒に俺を見ていた。
「瑠璃様。なんで泣いているのでしょうか?」
エノはそうアリアに聞く。
「瑠璃の過去、少しのぞかせてもらったけど、悲しい過去ばっかりだった。もう、だれにも信頼されていない。誰も自分に振り向いてくれない。って、感じの記憶ばっかりだった」
すると、アリアは俺の頭をなで始めた。
「相当つらかったんだよね。苦しかったんだよね。よく頑張ったね。るり…」
頭をなでられている俺は、寝ながら涙を流していた。
そして、寝ている俺に、アリアは、
「今までよく頑張ってきたね。死にたくなるような日々を我慢してきて、君は本当にすごいよ。だけど、たまには人に頼って、泣いてくれてもいいのよ。私は、これから先、るりの味方だから…」
アリアはひたすら俺の記憶を見て、泣きながらそう言う。
「アリア様。私はこれで失礼しますね」
エノはそう言って、ドアの方を向いて歩いていく。
「うん。今日はありがとうね」
エノはドアに手をかけ、一礼してから部屋を出た。
そして、寝ている俺とアリアは二人っきりになった。
ひびが入ったガラス窓から差し込んでくる夕日の光。
アリアは俺の額から手を離すことなく、過去を見続けた。
見続けている時、アリアは何度も涙を零した。家族が割れたガラスのように破滅し、学校でのいじめ、胸が張り裂けそうな悲しみや苦しみに襲われていた瑠璃の過去を見ながらアリアは涙を零し続けた。
本当に、見ている方も悲しくなり、苦しくなった。
過去のアリアはまだ、幸せだった。そんな自分の過去と違って、瑠璃はずっと苦しみ続けてきた。
アリアはそう思うと、涙が止まらなくなっていた。
「本当に苦しかったんだね。本当につらかったんだよね。私が君の近くにいて、手を差し伸べられたらよかったのに…」
俺は寝ながらだが、心の中でアリアに礼をする。
当然、声は届かないが、気持ちぐらいは届くだろう。本当にありがとな…アリア。
その後、アリアは俺の記憶内に戦闘した記憶がないことを確認し、膝枕をしながら俺が起きるのを待った。
気持ちよさそうに寝ている俺を、笑顔で眺め、頭をなで続けた。
やがて、沈みかけていた太陽は沈み、部屋はろうそく二本の火の光だけで灯されていた。
「うっ…んん~」
俺は目を覚まし、少し来る頭痛を我慢しながら、起き上がる。
「俺、寝てしまっていたのか…」
俺はボロボロになっていたはずのブレザーが治っていることを確認し、心の中で驚く。そして、アリアがいて、俺と目が合うと、にこっと笑った。
「おはよ。るりっ!」
そうアリアは言ってくる。そして、俺はーー、
「あぁ、おはよう。アリア」
俺はそう返答した。
暗い夜、俺とアリアは挨拶を交わす。
その後、俺はまたこっそりと城を出ようとしたが、ドアの前で剣を持ったエノがいて、礼を言って城内から出ようとするが、なぜか剣を突き付けられてーー、
「アリア様からの命令なので、あなたはこの城をアリア様の許可なしに出ることはできません。さぁあ、引き返すっ!」
「はっ、はいいっ!」
と、こんなことがあって、俺はこの日、女の子二人しかいない城の中で過ごすことにな
った。
少し消えている記憶、俺に残っているのはエノが俺を殺したと判明したとこらへんで終わっていた。後の記憶はもやがかかって思い出せない状態にあった。
多分、その記憶はもう戻らないと思う。
俺は、誰かに殺されることには避けようにも避けきれないことだ。俺は記憶喪失の事を調べると同時に、生き返りを利用して、この先起こりうることを解決していきたいと思っている。
生き返りを利用するのは少し気が引けるが、これを使わないとできないことだ。
それに、この力は、もしかすると、彼女たち、そして自身を守ることができるかもしれない。
エノの信頼をもらったら、これから起こることと面と向かって、戦っていこう。決して、仲間の血だらけの血戦にはしない。敵の血だらけの戦いにしてやる。
俺はこいつらを…これから先…守ると決めよう。必ず。
そして、俺との会話が終わり、アリアは部屋に戻っていた。
コンコン、と誰かがアリアの部屋をノックした。
「エノです。失礼しますね」
そういって入ってきたのは、この城のメイド、エノだった。
「どうしたのエノ?」
アリアは筆を置き、エノの方を見る。
「実はですね。私…まだ瑠璃様を…」
エノはうつむく。
「まだ、信頼できないのよね」
アリアはそう言って、笑みを浮かべる。
「そんなの、しょうがないよ。まだ来てばっかりの人、あなたが信頼できないのは私も分かる」
彼女の過去には、お客様というのは敵だということが頭の中に叩き込まれていたから。
ーーだから、この城にはほとんど来客なんて来ない。
「これから先、私はるりをここにいさせて、少しは面倒を見ようと思っている。だから、少しずつでもいい、徐々に慣れていく、じゃなくて、信頼していけばいいよ。あれ? 慣れていくの方があっているのかな?」
アリアは慌てた表情で考え始めた。エノはアリアの姿を見て笑みを浮かべる。
「アリア様。言いたいことは解りました。色々と心配させてしまい、申し訳ありませんでした。そして、ありがとうございました」
エノはスカートの両端をつまんで上げ、頭を下げる。
「いやいや大丈夫よっ!」
アリアの慌てる姿は収まらず、アリアは少しでも落ち着かせようと、さらに質問をしようとする。
「アリア様。あと一つ」
エノは人さし指を立てる。
「ん、どうしたの?」
アリアはそう首をかしげる。
さっきまでの慌てる様子がすぐに消えた。とエノは思いながらも質問をする。
「私の本名も、信頼してからの方が…」
「そうね。あなたの名前を言う時は、信頼してからの方がいいよね。信頼もしていないのに言ったら、心配でしょうがないもの」
アリアはそう言って、椅子から立ち、エノの頭をなでた。
「少しずつでいいのよ。少しずつ…」
再び笑顔を見せ、なでられるエノは、顔を赤らめてはにかんだ。
「本名リア。その名前をるりに言う時は、信頼してから…ねっ」
アリアはそう言って、エノ、本名リアの頭から手を離した。
「はい。わかりました。それでは、私は失礼します」
エノはそう言って、アリアの部屋を出た。
「分かっては、いるのですけどね…」
エノはそう言って、キッチンの方に戻って行った。
なぜ、エノは瑠璃を殺してきたか…信頼できる人じゃなかった。そんな理由で殺したわけではない。ただ、瑠璃の目が、自分の家族を殺した軍団、精霊殺しのリーダーらしき人に似ていたからだった…。
アリア、エノの過去には、瑠璃以上につらい過去がある。だけど、アリアは自分以上に瑠璃は苦しんでいると思っていた。まっ、それはそうだろう。アリアにはまだ家族がいたのだから…。
その後、瑠璃は食事を終え、まとめた荷物…っていっても、そこまでなかったのだが、まぁあ、ボロボロになったパーカーくらい? ブレザーの中に着ていたことをすっかりと忘れていた。
そして、俺は暇つぶしに城の中を探検していた。そして、道中一つ明るい部屋があったため覗いてみると…。
「エノ…。一人で大変そうだな…」
一つ明るい部屋。ーーそこはキッチンだった。
「あぁ、お客様。どうされましたか?」
エノは相変わらずの冷たいような視線と話し方。
「いや、少し暇だったもんで…。それにしても大変そうだな」
そう瑠璃が言うと、エノは目を閉じ、食器洗いを再び開始した。
「いえ、いつもの事です」
「そうか…なら、俺にも少し手伝わせてくれ」
そう言って、瑠璃は腕をまくり、キッチンに入った。
「大丈夫ですよ。お客様にそんなことをさせられませんし、私もこの仕事を何十年ともやっています。だから結構慣れって! もう始めている…」
瑠璃は手を一度洗って、食器洗いを始めていた。
「何十年か。俺と同じくらい家事やってそうだな。俺も、家族が崩壊して、親に憤りを感じ始めた頃、家出して、ばあちゃん家で暮らしていた。だが…おばあちゃんは病院に入院。そして、残された俺は一人暮らしの状態になった」
そう、過去の俺は…。
一人暮らしの状態になった俺は、一人ですべてをやっていかないといけなくなり、ひたすら自分で食事を作り、洗濯して掃除しての日々を送っていた。家事全般はもうほとんどなれていたが、勉強の方はおろそかにしていたため、成績は最低。でも、高校には行けた。
まぁあ、通信制の方だが…でも、いじめにあってしまった。そして、自殺で今のこの状況。
「ってわけ」
瑠璃はそう言って、笑みを浮かべながらエノの方を見る。
「少しわからない言葉が多々出てきましたが、非常に苦しくて孤独で悲しい話だとは分かりました。そして、家事全般にも慣れている事にも、否定はしません。もう慣れている手つきで食器を洗っていますからね。だけど、お客様にはーー」
「させてくれ。これが、俺からの礼だと思って」
そう言って、瑠璃は食器を洗っていく。その瑠璃を見て、エノは一度ため息をつく。
「そうですか」
エノはそう一言。それ以降何も言わず、黙々食器を洗い続ける二人。
やがて、食器すべてを洗い終わり、
「ふぅ~やっと終わったな~」
ものすごい量の食器だった。俺たちがいた所と違って、便利グッズとかなかったから、エノも料理を作るのが大変だったんだろうな。それに、今回は俺が参戦して洗った食器だが、エノはいつもこれの半分以上洗ってんのか…。これは結構きついだろうな。
「瑠璃様。今回は手伝っていただき、ありがとうございました」
エノはそう言って、頭を下げる。
「いいってことよ。まぁ、俺にできることがあれば、言ってくれ! なんでもするからなっ!」
そう言って俺は両手のひらをエノに見せてキッチンを出る。
エノは瑠璃がキッチンから出るのを頭を下げて見送り、エプロンを外して、自分もキッチンを後にした。
エノは自分の部屋に戻る最中も色々と考え事をしていた。
瑠璃を信頼してもいいのか…それだけが私の悩みだった。
私は…一体…どうすれば…………。
翌日。
俺は目を覚まし、再び身に覚えのある天井を眺める…。
「殺され…ていない…………」
そうつぶやき、起き上がる瑠璃。
気持ちい朝だが、少しまだ警戒心が解けない。今回殺されなかったのはまぐれかもしれない。だから、まだ警戒を続けるつもりでいる。
にしても、昨日は本当にひどい寝顔をアリアに見せてしまった…。
後からエノに聞いたことだけど、どうやら俺はアリアの膝の上で泣いていたらしい。本当に恥ずかしいことを…。でも、それのおかげか、今、心の中がすっきりしている。まぁ、今日会ったら、再び礼をしていおこう。
「あらよっとっ! …あぁぁぁっ!!!」
勢いよく起き上がると、目の前にエノの姿があって、俺は大声を出してびっくりする。
「あぁ~びっくりした~」
そう俺が言うと、
「びっくりしたのは私の方ですよ」
そうエノに言われ、俺は『すみません』と言って頭を下げる。
「でも、起き上がって目の前に人がいるって、結構びっくりするよ!」
俺はそうエノに言うが、エノは腐った魚を見る目でーー、
「いいえ、別にびっくりするまではいかないでしょう。それに朝食の時間です。それでは失礼します」
エノは頭を下げて、部屋を出た。
「朝食の知らせ、それだけか」
俺は、少し安堵するがやはり心配している。いつ殺されるか、どうやって生き返りの謎、エノが俺を殺す謎を解くか…その二つのことが俺の脳を支配していた。
完成しない、記憶と謎のパズル。いつまで未完成のままでいるか…。
そんなことも俺は心配していた。なぜ、俺が早くパズルを完成させたいか、それはーー
「もう犠牲者を出したくないからだ」
一人で部屋で、声に出すのもなんだが、こうやって口に出した方が頭に残りやすい。
記憶にあるほど、守ろうと勝手に反応する。
それに、知り合いが傷つくと悲しい。俺の場合はエノ、アリアの泣く姿を見るだけでも胸が張り裂けそうになる。
だから…俺は…。
「瑠璃様。早く朝食を」
もう一度入ってきたエノがそう俺に言う。
「あぁ、今行くよ」
そう言うと、エノは再び部屋を出た。
そして、俺は寝ている時に来ているパーカーを脱いでたたんで、ベッドに置く。
中はカッターシャツという。もう首襟の色が変色してそうだが、まぁ、もうそこは気にしない。
そして俺は、ネクタイ締めて、ブレザーを着て部屋のドアを開ける。
「瑠璃様」
ドアを開けると、エノがたたんだ状態のカッターシャツをもって、俺の方に差し出してきた。
「申し訳ございませんが。これに着替えて、今着ているカッターシャツを私に渡してください」
そうエノが言うから、俺は何度か小さく頭を下げて受け取る。
「あっ、あぁ」
そして、俺は少し笑みを浮かべて、
「エノ。ありがとな」
そう言って、俺は部屋に戻って、綺麗なカッターシャツに着替える。
「さてと、行くかっ!」
そう言って、再びドアを開ける。
「着替えましたか。それでは、カッターシャツを」
エノはそう言って、手を伸ばしてくる。
「あぁ、頼む」
そう言って、俺はエノにカッターシャツを渡した。
「はい。承りました」
エノは頭を下げて、俺に背を向けて廊下を歩いて行った。
その後、俺はエノの作った朝食を食べて、食器をキッチンまで運んだ。
もちろん。食べている時にアリアはいた。そして、アリアが使っていた食器に俺は一切口につけておりませんっ! そこまで変態じゃあないからな。
「それじゃ、始めるかっ!」
エノがまだ戻ってきていない中、俺は勝手に食器洗いを始めた。
俺は、アリアの膝のぬくもりを少し、頭の端に置きながら、一人、笑みを見せながら食器を洗っていた。
そんな光景を、エノはキッチンのドアに隠れて見ていた。
そして、俺がどういう風に自分の信頼度を覆すか、考えていた。
「まっ、別に覆されなくても…」
エノはため息をつき、キッチンに入る。
「おぉエノ。おはよう」
俺は言い忘れていた朝の挨拶をする。
「はい瑠璃様。おはようございます」
エノはそう言って、食器洗いを始めた。
俺は、一体この違和感のあるエノとの付き合いをこれからどう変えようとするかを考えていた。
でも、当分はこの状況が続きそうだと俺は苦笑いをする。
「瑠璃様は表情豊かなんですね。ってか、コロコロ変わっていきますね」
エノはそう言って、俺の顔を見る。
「そりゃあどうも」
俺はエノと目を合わせて、笑みを見せる。
「…あっ」
エノは少し顔を赤らめて、すぐに俺と合わせていた視線を手に持ってた食器に移した。
まだ信頼度は上がらなさそうだと思いながらも、俺は苦笑いし食器洗いの続きをやる。
「瑠璃様。そこの食器がまだ洗えていません」
「あっ、すみませんっ!」
俺はなぜかエノに敬語で謝り、一番端に置かれている食器を手に取った。
二人の信頼しあえる日は、そう遠くないかもしれない。そんなことを思いながら黙々と食器を洗っていく二人…。
この先、この二人がどうなるのか、そんなことは誰も知る由もない…。
皆さんこんにちはこんばんは! 猫鼠しんごです!
吐息が白くなるような寒さに変わってきましたね。今日で十二月。
自分で考えた毎日投稿達成になるかとかいろいろと心配事はあります。それに今月は番外編も出す予定にしています。11月に出す番外編は来年にということで、よろしくお願いします。 いろいろと事情がありまして・・・。
あともう一つ。つい最近誤字報告の機能ができたらしいですね。ありましたら、できたらでいいですので報告をいただけると嬉しいです。
最近感想や評価をつけてくださる方がおおくいらっしゃって、本当に本当にありがとうございます。
まぁあ、十二月は本気で挑むつもりをしているので、よろしくお願いします!
それでは皆さん、お体にお気を付けて。




