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Re:君と見る異世界景色  作者: 猫鼠真梧
第一章【死んで生き返って】
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【意識が薄れていく中、君は・・・】    一章

 俺は、死んだ。そう、死んだのだ。だが、なぜか、生きていた。

 今まであったことの記憶もある。名前もそのまま頭の中に残っている。本当に謎だ。

 そして、俺は、とある少女と出会った。名はまだ聞いていない。でも、いずれは聞く。と、そんなことを思っている間に。目が覚める。夢の時間は終わりだ。

 

「…それで、君は一体どこにいたの?」

 そして、俺は急にそんなことを聞かれ、少し慌てた様子で答える。

「きっ、近畿地方…?」

 なんで疑問形になったっ!?

「きんきちほう? 何ですかそれ? どこの国ですか?」

 彼女の首をかしげて、そう俺に問う。

「いや…近畿地方は近畿地方だよ。京都とか滋賀とか大阪とかその他えとせとら…」

 まぁ、全部しっかりと覚えていないのだけどね。あほだから…。

「まぁあ、どこかわからないけど、一応町まで案内するね」

 彼女はそう言って、前を向く。

「あっ、ありがとうございます」

 俺は礼を言って、頭を下げる。

「にしても、あなた…めずらしい服をきていますね」

「えっ?」

 自分が着ているものを見ると、学校の制服のブレザーだった。

「これは学生が着ていて普通じゃないの?」

 俺はそう言うとーー、

「学生…あぁっ! 学校に通う生徒の事ねっ!?」

 いや…学生だけでどうやって生徒とわかった。口に出した俺も色々と混乱していて言葉と頭がハチャメチャな状態だけど、この人絶対に学生という言葉知らなかっただろうなということだけは分かった。

「そうだ。学生はこういったしっかりとした制服で学校に通うものだ!」

 俺はそう言って、黒いブレザーをつまみ上げて言う。

「それ、いいかもしれないねっ! 早速うちの国にも入れようかな…?」

 今うちって言わなかったか? これは関西弁として受けてもいいのか? ってか、国とも言わなかった? 

「そういや、さっきから君は国という言葉を発してばっかりだね。この世界には国ってなかった? 日本とかアメリカとか…?」

 俺がそういうと、彼女は首をかしげーー、

「なに? そのにほんとかあめりかとか?」

 そう言っているこの子、言葉からしてかわいい…って今はそんなどころじゃないっ!

「一体どうなっているんだ…?」

 日本もアメリカも知らない少女がいるなんて…一体この家の人はどうなっている?

 その時、金髪の少女の頭の中はーー、

 

 一体この少年はさっきから謎の言葉しか話さないわね。

「にしても、あなた…目の下のクマがすごいわね。それに、寝不足のせいなのかしら?ずっと目を細めているわね。目つき悪いとか言われない?」

 そう私は彼に問う。

「言われたさ。このなん十年も」

 彼は、口をへの字のように曲げ、難しい顔をする。

「そう…まぁあ、そのことはさておき、町に着いたわ。ここから一人で大丈夫?」

「あぁ、まぁあ、一応…」

 俺はそう言って、苦笑いを浮かべる。

「そう…うん、まぁあ、頑張ってね! 私仕事があるからここで失礼するね」

 金髪の少女はそう言い、手を振って走って大きい城が見える方向に向かって走っていった。俺はその金髪の少女が走って行くのを苦笑いをして見送り、俺は城の反対方向に向かって歩いて行った。

 俺は町を見渡しながらひたすら歩き、ため息をつく。

「一体ここはどこなんだ? …ってか、城って!」

 ってか、俺は死んだはずだろう。なんで今こうやって息をして俺は歩いているんだ?

「なんでだろうね~」

 そう言って独り言をつぶやくとーー、

「うわっ!」

 瑠璃は急に服をつかまれ、狭い路地裏に連れ込まれた。

 そして、急に胸倉をつかまれてーー、

「金をだせ…」

 この町に来てからずっと思っていたんだが…なぜ全員日本語が通じるんだ?

 さっきまではここが日本だと思っていたから謎には思っていなかったけど、さすがにあの子と話していたらここが日本じゃないということは分かる。でも、日本語が通じる。しかも、看板まで日本語となると、ここは日本…じゃないかなと思ってしまう。それはしょうがないと思っているんだが、本当にここは一体…?

「おいっ! 聞いてんのかっ!?」

 瑠璃は壁に叩きつけられる。

「言われなくても聞いている。でもっ! 俺のからだ中どこ探しても君たちのいう金なんてないぜ」

 決まったっ! でも、この国が日本だったら、この百円玉が見つかったら終わりだ。

「んだとぉっ!? じゃあ身体検査だっ!」

 そう言って、俺の胸倉をつかんでいた男は俺の服のポケットを探り始めた。

 俺は、良く解らないじわじわに体中が襲われる。なにっ!? 拒否反応?

「なんもねぇ~な」

 男はそう言って、舌打ちをする。

「だから言っているだろう。俺を探ってももごもごもご…」

 俺は男に口をふさがれてしゃべれなくなった。

「てめぇは黙ってろ」

 ねっとりとした口調で、俺の首にナイフを突きつけ、脅される体勢に…。

 そして、狭い路地から中央の通りを眺める男。男の目の先にはーー、

「んごぉんごぉっ!」

 俺はしゃべれない口を動かす。そして、男の目の先にはあの金髪の少女がいた。たぶんこいつらが次狙っているのは、もしかしたら…。

 そして、瑠璃は中央通りと真逆の路地の奥を見ると、首を切られた人々の遺体だらけだった。

 瑠璃はそれを見て、目を大きくあけ、手の中でふさがれている口に入った力が抜ける。そして、勢いよく込み上げてくる嘔吐感。頭の中で大きい鐘が鳴らされているような痛み。それからどこからかあふれ出てくる汗。俺は何かをしないとと思っているが、力が出ない。

「さてと…次はあの女を狙うか、それじゃあ、お前はもう用なしだ。あばよ」

 刹那、俺は腹部に激痛が走る。

 なんで…首じゃなくて腹にした…!?

 それから、俺は地面に倒れこみ、口を小さく開き、男が金髪の少女に近寄っていくのを見ていた。

 逃げろ…逃げろ…逃げてくれ…。

 そう、心の中で願い続けた。声に出そうにも出ない。

 生温かい。なんだ…? この生温かい水みたいなものは…? そして、わずかな力で手を挙げると…。

 

 何だ、俺の血じゃないか…。

 

 そして、瑠璃は目を閉じた。

 生温かい…それが現在、最後の記憶だった…。

「ーーじょうぶですかっ!? ーー大丈夫ですかっ!?」

 大きく良さぶられる俺の体。だんだんと重い鎖が解き放たれるような感じ。俺は一体何をされているんだ? そして、この声の正体は一体…どこかで聞いたことのある声だな…誰だっけ…?

「起きてくださいっ!」

 誰かに体を大きく揺さぶられる。

「起きてくださいっ!」

 だから、起きれないんだって…。

 何度も起きようとしている。だが、体が動いてくれない…。

 動け、反応してくれ、再起動してくれっ!

 刹那…俺の体が急に軽くなり、指の先が動かせるようになっていた。

 生温かい液体の感触はなくなっていた。硬くて、少し暖かい硬いところに寝転がっているような感覚。一体何に俺は寝転がっているんだ…?

「起きてくださいっ!」

 そして、瑠璃は目を覚ます。

「うぅっ…」

 頭が痛い。吐き気がする。…でも、俺は再起動に成功したらしい。いや、これは自分の力で起きているのか?

 そして、自分の目の前にいた金髪の少女は、俺が目を覚ましたのを上から覗き込むように確認すると、胸から手をなでおろし、はぁ~と息を吐く。

「…よかった…目を覚ましてくれて…」

 頬を赤に染め、瞳には涙。俺は彼女を悲しませたのか…?

 俺は今何が起こっているのか、そして、なぜ彼女は悲しんでいるのか、ずっと、存在しない誰かに聞いていた。

 何も帰ってこない回答。そして、別世界に一人、突っ立っているような感覚。

「本当に…本当に…心配したんだからっ!」

 そう言って、地面に両手をつき、俺の頬に一粒の小さい涙を落とす。

 何があったのかがわからない俺は、戸惑い、泣いている彼女になぜ泣いているんだと心の中で訴えている。でも、心の中で、だから、彼女にその質問は届かないだろう。

 だから、彼女は何も答えない。答えてくれない。

 そして、やっと出た一言はーー、

「一体、何があったんだ?」

 そう、状況の解らない今、俺は何をすればいいか分からなかった。考えがごっちゃになっていた。

 でも、彼女は何も答えない。泣いていて、答えられないのだろう。

 そんなことを考えていたら、俺の手は、彼女の涙の粒を人差し指で取った。

「まぁあ、今はいい。でも、俺が関連しているようなことだろうし、のちに教えてくれ」

 今は泣いていてもらおう。俺も、頭の整理がついていない。少しぐらい考える時間が欲しい。だから、今は…彼女が泣いている間は、俺も少し…考えさせてくれ。

 

 そしてその後、二人は一度裏路地から出て、大通りに置いてあるベンチに座った。

 それから、彼女は涙を手で取り、一度息を吐く。

「何かあったらしいけど。たぶん俺のせいだろう。ごめん」

 俺はベンチに座ったまま、頭を下げる。

 すると、彼女は首を横に振って、俺と目線を合わす。

「違う。今回は私の注意不足。でも、今回は君に予備精霊を付けていてよかったよ」

「予備精霊…?」

 初めて聞く言葉だ。

「予備精霊のことも知らないのね。あなた本当にどこの人?」

 だから、最初にあった時に行っただろうに…俺…言ったかな?

「予備精霊とは、ですね…」

 なんだ? 俺はこれから上から目線で何かを教えられるのか?

「人には必ず一匹、精霊が付く。だけど、精霊はその人の体を守ることだけで、戦いの時に魔法を使えたり、そんなことはできない。でも、しっかりを戦える精霊もしっかりと、存在している。私の精霊もそうだけど。今は私の体の中で、休んでいる。さっきの戦いで少し疲れたみたい」

 彼女は一息だけで話していたせいか、一度息を整える。

「まぁ、私は戦闘が可能な精霊をもっているということ。そして、予備精霊は、その人の中にいる精霊の活動を一切邪魔しない精霊。つまり、その人にとってもう一匹の精霊に当たる」

 金髪の少女は人差し指を立てて、目を閉じ、説明を続行する。

「もう一匹の精霊は、今体を動かしている精霊以上の力を発揮してくれる。だから戦闘、守り、この二つをことをやってくれる精霊。まぁあ、人間の限界を超えさせる精霊」

「限界を…超える…精霊…?」

「そう、限界を超える精霊。今以上に力を出せるようになるのです」

 そう彼女は語尾を強調して言う。

「でも、魔法って、魔力とかなんかで使える回数は限られているとかあるのか?」

 俺は彼女にそう問うと、金髪の彼女は少し笑みを浮かべーー、

「もちろん。関係するよ」

 にこっと彼女は笑い、急に立ち上がる。

「さっ、行こうかっ!」

 彼女はそう言って、ぴょんと跳ねて俺の方に振り向き、再び…いや、今まで見た彼女の笑顔よりもさらにいい笑顔を浮かべる。だけど…彼女、ミニスカートだから結構きわどいんだよな。

「…えっ? …あぁ、でもどこに?」

 俺がそう問うとーー、

「私の家に、だよ」

「…はぁ?」


 そして、その後。

 俺は彼女に連れられるまま、城の方に手を取られ、少し早歩きで向かっていた。

「んで、なんで手をつなぐ必要が?」

 そう俺は金髪の彼女に問うとーー、

「迷子にならないためです。この世界のことを知らない男の子。そして、この世界で一番危ない男の子だから、心配で手が離せませんっ!」

 世界で一番危ない男の子って…意味を変えると結構危ない、犯罪者みたいな扱いになりそうだな…。

「でも、知らない人が急に人の城を訪れて迷惑では?」

 城っていう時点でいろいろと驚かない自分もアレだがな。

 そして、俺は少し息を切らし言う。だが、彼女は一度も止まることなく走り続ける。

「大丈夫です。今まで何度も知らない人を城に入れたことがありますからっ!」

 いやいや、知らない人とかお城に入れちゃあだめだろっ! って、これは口に出して言った方がいいのかな…?

「さっ、もうすぐです! もう少し頑張ってくださいっ!」

 刹那、俺はなぜ彼女が走っていたのかがわかることになる。

 背中の方から伝わってくる冷たい何か…その何かはーー、

「アイスストームっ!」

 金髪の少女は急に手のひらを後ろに向け、魔法陣らしきものを出した。

 その刹那だった。氷の塊が空中を舞い、立った一本の矢を落とす。

「本当にしつこい人たち。このままでは…あなたは城に向かって走ってっ! ここは私がっ!」

 そう彼女は言うが、彼女…女の子を置いていくなど、片腹痛い。だからーー、

「ここは頼むぞファンタジー世界っ!」

 俺はそう言って、地面に魔法陣を描き始めた。

「俺の黒歴史っ! 今こそ中二病であったことを感謝する時っ!」

 うろ覚えだが、確かこんな魔法陣だったはず。でも、確か今描いている魔法陣って…。

「ちょっと待ってっ! その魔法陣はーー」

 金髪の少女が俺の手を止めようとしたが、もう遅かった。

 魔法陣の円をつないだ時、その場で大爆発が起きた。

 体中が熱い…いや、違う。これは痛みだ。爆発音が鼓膜を破りそうで、でもキーンと高い音が耳に響く。

 熱い…熱い…痛い…。

 ずっと、そう心の中で俺が無意識に言っている。だけど、その心の中に何かが侵入してきた。そして、俺に何かを離している。一度頭の中を整理して、その声だけに集中して、その声だけを聞いた。

「君はまだ生きていかないといけない。ここでは死なせない。それと、もっと苦しめ」

 一体何なんだよ…。苦しめ…? 今、十分に苦しんでいるよ…。

 でも、改めてわかったよ。俺が来た世界が、異世界だという…こと…を…。

 必死になっていて、つないでいた意識も、もう限界が来たようだ。瑠璃の意識は暗いくらい深い何かに沈んでいくような感覚だった。

 沈んでいく…俺は海の深いところに沈んでいっているよう。

 視界は、真っ暗で、揺れている水面が目に入る。でも、その水面ももう見えなくなってきた。そして、沈んでいく間に、やっとわかったことがある。

 

 俺は、この深き海の底に沈んだ時、死ぬんだな…と。

 

 一体さっきの声は何だったんだろうか…。結局死ぬんだ…。

 何が苦しめ…だ…………。

 

 現実ではない世界の中、俺は再び意識を失った…………。

 

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