新しい学校生活のはじまり シーン1:もうすぐテストだ、勉強しよう!
サンドーノはさっそく、テストのための体力作りや勉強をボイコットしようと、こそこそと教室を離れようと……。
「おっ、サンドーノ!! わざわざジャージに着替えて、やる気満々だな!!」
「え、あ……これは……」
制服を汚したくない一心で、着替えただけなのだが。熱血で熱い先生、ベルンには、それが全く、欠片ほど理解されていない。そう、ボイコットしようとしているなんて、微塵も感じていない。
「えっと……先生?」
「さあ、行くぞ!! やる気のある生徒は大好きだ! しかもお前はあの英雄の弟だからな、期待して居るぞ」
「え……あ……その……」
逃げようとしたのだが、ベルンのガッツリホールドに抵抗できる力は、残念ながら、サンドーノ、持ち合わせていなかった。
ちょっぴり涙目で、ベルンに引きずられながら、サンドーノは外のグラウンドへと運ばれていった。
「フィリア、大丈夫?」
少しだけしんどそうに走っているのは、フィリア。ライは、汗をかきながらも、まだ余裕を残しているようだ。
「まあ……なんとか、ね……。でも、あの先頭に行ってる……えっと黒髪のあの子」
「ああ、アキラだね。確か体力はあるって言ってたっけ」
「そうそう、そのアキラ! 凄すぎない? こんなに差を付けられちゃって……」
「悔しいの?」
「私、運動しか取り柄がないから……これはもう少し、走り込まないと、だな……」
むっとした表情を浮かべて、フィリアは徐々にそのスピードをあげていく。
「ちょ、無茶したらダメだよ。先生も言ってたじゃないか」
「少しくらい無理してもいいの! だって、校長先生に見て貰いたいもの!」
突き進むフィリアに、ライは思わずため息をついて、彼女の後を追いかけるのであった。
と、もの凄く後ろの方では……。
「ぜえっ、ぜえっ……て、天才に腕っ節や足の速さなど不要……最後にモノを言うのは頭脳なのだっ……」
エメットがふらふらしながら、走っていた。
その隣では、かなり余裕の顔で、メルヴィナがやる気なさそうに走っている。
ついでに先ほど捕まったサンドーノは、エメットと同じようにへろへろになっていた。
「だ、だから……休みたかったのに……」
「ほらー、三人とも、頑張ってー!! まだまだ先は長いわよー!」
後ろから、自転車に乗ったシエナが応援していく。
「……なんか面倒になってきた。先に行こ」
「え? ちょ……」
「抜け駆け……なんて、ゆる……さない……ぞっ!」
止めようとするサンドーノとむきーと不機嫌になっているエメットを余所に、とっとと先へ向かい。
「お、頑張ってるな。あまり無理するなよ」
と、歓迎会に使う荷物を運ぶグレイグと、もう一人。
「ん? ……ああ、走ってるのか。まあ、頑張れよ」
クレイグの荷物運びを手伝う、リンフォードが声を掛けた。リンフォードは走る学生ら全員へと声を掛けたつもりだったのだが。
「リン!? ええ、ええ!! メルは貴方のためにトップを目指すわ!! 今から!!」
驚くべきスピードでメルヴィナは駆け出す。
「ちょ、ちょっとメルヴィナ!! ペース速すぎよ!!」
シエナが急いで、メルヴィナの後を追う。
「……大丈夫かな、彼女」
「大丈夫なんじゃないか。……たぶん」
クレイグの言葉に、リンフォードはちょっぴり心配そうに駆けてゆく生徒らを見送ったのだった。