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彼自身と彼の思い出の話  作者: 毛利 俊彦
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Ⅱ.誰も彼のことを見てはいなかった

二話です

 道を歩いている間、彼は自身が右手で持っている拳銃のことを注意深く見直していた。その装飾はあらかじめイメージしていたものと違っていて、少し人の手が加えられていた。彼は自分がその拳銃を見たのが祖父の家で一度だけだったからだろう、と考えた(誤って複製したか、元々が装飾されていたかは結局わからない)。そして彼が拳銃を触りながら歩いているところを誰も見てはいなかった。

 それにしても静かな朝だった。人通りも多すぎるわけではなかったし、通り雨で湿った道路に雲の隙間からさした日の光が射してほのかに輝いている光景も決して悪いものではなかった。僕は鞄からあらかじめ用意していた小型のプレイヤーにイヤホンを繋ぎ、ウォルタービショップJrの「スピークロウ」を聴いていた。何だかそれがその場には合っていると思えたし、確かにそれはその空気にマッチしていた。そして変わらず、誰も彼のことを見てはいなかった。彼の門出に家族の誰もが気づかなかったように。

 しばらく歩くと海に出た。ここから彼は小さな島に向かうことにしていた。その小さな島には漁師が定期的に漁のついでに寄っているということを彼は知っていたし、今日がその日だということも知っていた。後はその船に隠れて乗り込めばいい、その算段も彼にはもうついていた。

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