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彼自身と彼の思い出の話  作者: 毛利 俊彦
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Ⅰ.寒い朝だった

導入です。

 寒い朝だった。自分の寂しい家の前で猫が鳴くのを聞きながら彼は自室で荷造りをしていた。折り畳可能なイスに小型のテント、保温の可能な水筒を少し大きめの鞄の奥に入れ、その上の浅いところにライターやナイフを入れる。少し間を置いてその他細々としたものも鞄に入れ終わり、彼のチャックを閉めさっきまで寝ていたベッドの上に投げ置いた。

 彼はそこに置かれた鞄を見ながら、右手の人差し指と親指でL字を作りその右手を少しだけ左右に振った。ベッドの上に一丁の拳銃が落ちる。彼が頭の中で想像していたのはコルトM1911で、それは確かにその実銃であった(少し想像していたよりも古く錆びれたものだったが)。

 彼がそれをその安全装置を確認した後に鞄に入れてしまうと、鞄を背中に背負い自室を後にした。廊下を歩き階段を下り、家族の集うリビングにも寄らず玄関に向かう。玄関で靴を履き、外に出て、きっともう戻ってくることはないだろう自分の家を一瞥し、すぐに歩みを再開した。誰も、彼が家を出たことに気づかなかった。



 それが彼自身の怒りを果たすための復讐の旅であるということはその時彼の、正確には、誰もが知るところではない。しかしどちらにしろ彼はついにその日、彼自身の不足を、空っぽな心を補うために旅に出たのであった。

お読みいただきありがとうございました、良ければ次話もご覧ください。

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