6話 オーラ魔法
魔法は、魔力を感じるところから始める。
魔力を感じたら、頭に魔力を集めて、『何処に』、『何が』、『どうなる』のかをイメージする。
ムユルさんは、火属性の初級魔法<ファイアーボール>を使ってくれたが、これは、『杖の先に』、『火の球が』、『出現する』のをイメージする。
その後に、魔力を更に頭に集めて、起こした現象をコントロールするのだ。
お手本のファイアーボールなら、的を焦げさせるぐらいの威力なのだが……………。
「やり過ぎちゃいましたね」
「「「「…………………………」」」」
ムユルさんが放ったファイアーボールは、的を塵すら残さず燃やし尽くし、的を中心とした半径5m程が焼けていた。
「まあ、やり方は分かりましたよね?的はいっぱいありますので、自由に魔法を使ってみて下さい」
ムユルさんは無理矢理話をそらしたが、僕達はそれに素直に従う。
直感的に理解したのだ、この人は教えるのが下手だと。
僕は一番端の的を使う事にした。
何度も創造を使ったので、魔力は完璧に感じれる様になっている。
創造を使った時の感覚を思い出して、頭に魔力を集めていく。
使うのはオーラ魔法の初級魔法の一つ、<氣弾>だ。
右手を前に開いて出し、『手の前に』、『オーラの球状の塊が』、『出現する』のをイメージする。
すると、蒼色の半透明な空気の様なものの拳位の塊が、イメージ通りに手の前に現れた。
そして、威力を高める為に、回転しながら真っ直ぐ的に放たれる様に、イメージする。
氣弾は、そのイメージ通りに凄まじい速度で的に向かい、的にぶつかって爆発した。
大きな音をたてて爆発し、その爆風で砂煙が巻き上がる。
砂煙が晴れて的を見てみると、的は亀裂が入っていた。
「うわ、凄い威力だな。初級でこれなのか。中級とか上級だと、どうなるんだろう…?」
まあ、その分消費魔力も高いみたいだけど。
今のやつだけで、僕の保有魔力の二分の一がごっそり抜けていくのが感じられた。
初級でこれだからな……………使いどころが難しい魔法だなー、これ。
皆は………僕ほどじゃあないけど、普通よりは強いみたいだな。
流石勇者、なのかな?
ムユルさんが、全員が魔法を使い終わったのを確認して、集合させた。
「魔法は使えましたね?魔法は使い手によって、様々な可能性を持っています。魔法陣のスキルを持っていれば、自分だけの魔法を作る事も出来ますよ」
魔法陣のスキルは僕も持ってるけど、使った事は無いんだよな。
そもそも、さっきまで魔法を使った事すらなかったし。
「つまり、私から魔法について教える事はもう無い、って事です。ちゃんと訓練は見てますから、分からない事があったら聞いて下さいね」
ムユルさんがそう言った後、その日の魔法訓練はおしまいになった。
どうやら、初めて魔法を使った時は、通常よりも魔力を使ってしまうらしい。
訓練は終わったので、昼食を食べた後は自由行動になる。
僕はそのまま直ぐに自室に直行する。
さて、そろそろ僕がこの数日間で創ったものを紹介するとしよう。
一つ目はこれだ。
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«魔聴のヘッドフォン»
・スキル『創造』によって創られたヘッドフォン。銀と水晶が混ざった、銀水晶で出来ている。銀色のスリムなフォルムに蒼いラインが入った、メタリックなヘッドフォン。聴覚を異常までに強化する。
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何故ヘッドフォンなのかといえば、何となくだ。
頭装備が無いなー、と考えて何となく創ったのがヘッドフォンだった、それだけの理由だ。
二つ目がこれ。
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«守護のペンダント»
・スキル『創造』によって創られたペンダント。銀で出来ている。チェーンに盾の形がしたトップがついている。生死に関わる攻撃を一回だけ無効化する。
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これは他の三人の分も創って渡しておいた。
メリカさんにも渡しておいた。
メリカさんとは、この数日間でかなり距離が縮まったと思う。
下の名前で呼んでくれる様になったし、笑顔も見せてくれる様になった。
と、それより次だ。
三つ目はこれ。
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«薬草の凝縮薬»
・スキル『創造』によって創られた回復薬。薬草で出来ている。濃い緑色で仄かに甘い香りがするが、味は気を失う程に不味い。効力は通常の回復薬よりもかなり高い。
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これも大量に創って、いくつかは皆に配って、残りは部屋に木箱に詰め込まれて山積みになっている。
まあ、他にも色々創ったけど、重要なのはこのくらいかな。
他のは完全に趣味で創ったやつだし。
「と、そろそろ外が暗くなってきたな。夕食ももうすぐだろうし、先に行ってるか」
確認に予想以上に時間をとられていたのに気づいた僕は、夕食に遅れない様に、早めに大部屋に向かった。