5話 魔法の適性
あれから数日が経った。
勇者のスキル『成長』は色んなところに作用しているらしく、僕を含めた勇者は武器の扱いが格段に上手くなっていた。
それでも将来性がある、ぐらいだが、それでも驚異的な成長速度だ。
僕が刀を訓練に持っていった時は驚かれたが、諦めたのか、もう何も言われなかった。
書庫でも無理をして情報を理解したので、既に書庫の全ての情報は頭に入っている。
そして、今日はいよいよ、魔法を習う日だ。
皆で一緒に、修練場に移動する。
修練場では、ヒューアムさんではなく、一人の女性が待っていた。
僕達が近づくと、彼女はこちらを向いて挨拶をしてきた。
「初めまして、勇者様。私はムユル・イチュードと申します。シキャント王国の、魔導師団の団長をしておりまして、勇者様の魔法の指導の任を与えられました。以後、宜しくお願い致します」
僕達もムユルさんに自己紹介をしていく。
ムユルさんは、クールな金髪緑眼の、20代前半位の女性だった。
だが………………………。
「ムユルさんは、エルフなんですか?」
彼女の耳は長く横に尖っていたのだ。
書庫から得た情報からすると、その特徴をもつのは、エルフの筈だ。
「ええ、その通りです。そのお蔭で、この地位まで上り詰めました。努力は人一倍してきましたが」
まあ、種族の特性だけじゃあ、魔導師団の団長にはなれないだろうな。
エルフは、魔法の扱いに長けた、長命種だ。
産まれながらに高い魔力と、魔力の親和性が高い身体を持っていて、その長い寿命を活かして、他の種族よりも高水準の魔法技術を持っている。
基本的に彼等は森の奥深くにある、エルフの国、ビオンラ王国からは出てこない、他の種族には排他的な種族だ。
他の種族を見下す傾向が少なからず見られ、今森の外に居るエルフは、余程の変わり者か、外で産まれた者だ。
ムユルさんはどっちなんだろうな?
と、そんな事を考えていると、ムユルさんがローブの裾の中から、丸い水晶を取り出した。
「皆さんには、最初にこの水晶を使って、魔法適性を調べて貰います。誰からやりますか?」
今まで通り、最初は幸希さんがやる。
使い方は、魔力を流すだけだ。
この水晶で調べる様に、魔法には属性がある。
それは、<火><水><風><土>の基本属性、<炎><氷><雷><地>の上位属性の八つに、<時間><空間><呪><死>等があるらしい。
他には、一人しか持っていない、固有属性というものもあるらしい。
さて、幸希さんはどの属性を使えるのだろうか?
幸希さんから魔力が水晶に流れるのが見える。
魔力が見えるのは、新しいスキルの効果だ。
で、幸希さんの属性は…………。
最初に水晶の真下に、大きな眼が現れた。
次いで、眼が消えて、水晶と一緒に幸希さんの姿が消えた。
その次に、幸希さんが姿を戻し、水晶の上に大きな時計が現れた。
時計が消え、水晶を中心に風が吹き荒れる。
直ぐに風は消えて、辺りには何の痕跡も残っていない。
今までに起こった現象は、水晶が作った幻だ。
この水晶は流された魔力の適性属性を判別して、その適性の高さに合わせた幻を作り出すのだ。
「シモカリ様の適性属性は、<視覚><時間><空間><風>で、氷が一番高い適性みたいですね。次は誰がやりますか?」
次は僕、これもいつも通りだ。
僕も、幸希さんと同じ様に水晶に魔力を流す。
最初に水晶からもの凄いオーラの様なものが吹き出した。
オーラは消え、次に僕の姿が消える。
僕の姿は直ぐに戻り、水晶の上に大きな時計が現れる。
時計はあっという間に消え、最後に、水晶からピンク色の煙が出て、消えた。
「凄い、最初のは固有属性でしたね」
「うん、僕は<時間><空間><淫>と固有属性を持ってるみたいだね」
しかし、淫属性か…………………。
時間魔法はその名の通り、時間に干渉する魔法だ。
空間魔法は空間に干渉する魔法。
そして、淫魔法は……………簡単に言うと、エロ魔法だ。
対象の性感帯を変えたり、興奮させたり、痛みを快楽に変えたりなど、エロに特化した魔法属性だ。
なんか、この属性を持ってるってだけで、恥ずかしいな………。
もういい、淫魔法はもう置いておこう。
考えるべきは、固有属性についてだ。
この魔法適性が判明すると、ステータスに魔法のスキルが加わるらしい。
急いで、ステータスを開く。
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«リツキ・アコウ»
«種族»
[人間<Lv1>]
«職業»
[勇者<Lv1>][創造士<Lv2>]
体力値 B
魔力値 A
筋力値 B
耐久値 B
敏捷値 B
知力値 A
精神値 S
«スキル»
[固有スキル]
『創造<Lv3>』『英知<Lv2>』『オーラ魔法<Lv1>』
[創造スキル]
『絶対再生』
[種族スキル]
『幸運<Lv1>』
[職業スキル]
『異世界言語理解』『経験値1/2』『成長』『予想図』
[通常スキル]
『整理<Lv2>』『理解<Lv5>』『鑑定<Lv3>』『思考加速<Lv4>』『刀術<Lv4>』『気配察知<Lv2>』『魔力感知<Lv2>』『魔力視<Lv1>』『時間魔法<Lv1>』『空間魔法<Lv1>』『淫魔法<Lv1>』
«称号»
[異界の勇者][創造神の加護][性の調教師]
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『オーラ魔法』
・魔力をオーラに変換し、操る魔法。
『時間魔法』
・時間に魔力で干渉する魔法。
『空間魔法』
・空間に魔力で干渉する魔法。
『淫魔法』
・性に対する全てに干渉する魔法。
[性の調教師]
・性的な事に対する全てに補正がかかる。調教が順調に進み、相手の弱点が分かる。
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オーラ魔法か、オーラって何が出来るんだ?
固有スキルだし、かなり強力なんだろうから、後で試しておこう。
時間魔法と空間魔法もだな、淫魔法は相手がいないし…………………。
(てか、性の調教師って何!?何で僕は初めてもまだなのに、こんな称号を貰ってるんだ!?)
くそぅ、神様の悪意を感じるぞ………!
と、落ち込むのはこれで終わりにする。
あ、そうそう、これが数日間で変化したり、増えたスキルだ。
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『整理』
・頭の中で情報を整理する。
『気配察知』
・使用者を中心とした範囲内の気配を察知する。
『魔力感知』
・使用者を中心とした範囲内の魔力を感知する。
『魔力視』
・魔力を眼で目視出来る様になる。
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この様に、かなり便利なスキルが身に付いた。
因みに、理解は得た情報、スキル等全てに使用しているが、整理のお蔭で負担は全く無い。
色々やっていたからか、ステータスも上がった。
Lv1でこのステータスは、いくら勇者でも成長が早すぎるんじゃ……………。
と、そんな事を考えてる間にも、残りの二人の適性が判明する。
健也は、<呪><時間><空間><雷>の様だった。
呪魔法とか、陰陽師だしそれっぽいな。
妃美奈さんは、<回復><時間><空間>と、固有属性の様だった。
妃美奈さんも、固有属性持ちか。
水晶の反応からすると、<歌>かな?
全員の適性を調べ終わり、ムユルさんが話始める。
「じゃあ、これから魔法のお手本をお見せしますね」
お、やっと魔法が使えるのか!
メリカさんが木材を浮かべてたのも、多分、魔法だよな。
僕も異世界に来たんだから、魔法は使いたいなー。