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3話 近衛騎士団団長


 部屋に戻ってきたが、まだメイドさんは来ていなかった。

 安心してベッドに座ると、それと同時に扉からノックが聴こえてきた。

 本当にギリギリだったんだな。


 「アコウ樣、夕食のお知らせに参りました」

 「うん、今行くよ」


 僕はベッドから立ち上がり、扉を開ける。

 そこには、20歳位のメイドさんが立っていた。


 「えー、貴方が僕の専属メイド、なんですか?」

 「はい、アコウ樣の身の周りのお世話をさせて頂きます、専属メイドに任命されました、メリカと申します」

 「知ってると思うけど、僕は勇者の阿皇律紀……いや、リツキアコウ。これから宜しくね」

 「はい、宜しくお願いします、アコウ様」


 メリカさんは、明るい茶髪を肩で切り揃えていて、顔は整っていて、大人の魅力の様なものを感じさせた。

 メリカさんについていき、塔から出て夕食に向かう。

 夕食をとる部屋は近くにされていたみたいで、数分と経たずに着いた。

 部屋に入ると、既に皆が席についていた。

 空いていた席に座り、目の前の料理に目を移す。

 そこには、向こうの世界では味わった事の無い様な程、豪華な料理が並んでいた。


 「うわ、凄い料理だなー。じゃあ、いただきまー「ちょっと待て」……なんですか、幸希さん?」


 料理食べようとしたら、幸希さんに止められた。

 一体、なんだって言うんだ。


 「幸希さん、他人の食事を邪魔しちゃいけませんよ。食事の恨みは凄いんですから」

 「す、すまん、俺が悪かった………て、そうじゃない!律紀、お前、その服はどうしたんだ?お前、さっきは学生服だったじゃないか」


 チッ、やっぱりその事だったのか。

 まあ、そりゃこっちの世界に来たばかりなのに服が変わってたら、驚くだろう。

 しかも、その服がこっちの世界には無いスーツだったなら、尚更だ。

 だけど、僕だって自分の切り札を明かしたりはしない。

 僕がとった手段とは…………。


 「服?何言ってるんのかな、幸希さん。僕は最初からスーツだったじゃないか」


 シラを切る、これしか思いつかない。

 バッチリ見られちゃってるんだし、もう誤魔化すしかないじゃないか。

 案の定、幸希さんは疑惑の視線を僕に向けながら、聞いてくる。


 「最初から?何言ってるんだ、最初は学生服だったじゃないか、なあ?」

 「おう、俺もそうだったと思うぞ」

 「私はよく覚えてないですね。でも、霜狩さん、別にそんな事、どうでもいいんじゃないですか?私達に害がある訳じゃないし、他人には話したくない事だってありますよ」

 「む、た、確かにそうだが…………」


 妃美奈さん、良い事言うなぁー。

 幸希さんも、正論に何も言えないでいるし。


 「その通りだよ、幸希さん。まあ、僕は最初からスーツだったけど。それよりも、早く夕食を食べましょう?」

 「むう、仕方ない。この事は忘れておくか。じゃあ、さっさと食べるぞ。明日から訓練が始まるみたいだから、ちゃんと食べておけよ」

 「「「はーい!」」」


 ふぅ、なんとかしのぎきれたな………。

 その後は皆で色々話ながら夕食を食べた。

 食べ終わったら、皆で一緒に塔に戻り、各自、部屋に戻った。


 「はぁー、美味しかったー」


 僕はベッドに用意されていたパジャマ?に着替えて、ベッドに横になる。

 いや、本当に美味しかったんだよ。

 向こうの世界では、食べた事が無い程美味しかったね。

 これから夕食は、この塔の広間から入れる大部屋で食べるみたいだ。

 まあ、勇者全員で食べるのに変わりは無いが。


 「明日は訓練みたいだし、早く寝よっと」


 僕は明日に備えて、さっさと眠りについた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 朝は最高の目覚めだった。

 ベッドが最高級品だから、よく疲れがとれたんだろうな。

 今日は訓練があるので、スーツに着替えて広間に出る。

 そこには、既に皆と、この塔に案内してくれたメイドさんが居た。


 「皆さん集まった様ですので、修練場に案内させて頂きます。私についてきて下さい」


 メイドさんについていき、塔から出る。

 その後25分程移動すると、塔から反対側の、大きく開けた何も無い場所に着いた。

 そこでは、鎧を着た壮年の男性がこちらを向いて立っていた。

 僕達はメイドさんに連れられて、その男性の近くに移動する。


 「ヒューアム様、勇者様をお連れしました」

 「うむ、ご苦労だったな、下がっていいぞ」

 「はい、では失礼させて頂きます」


 メイドさんは、そう言ってここ…………修練場から去っていった。

 男性が僕達を見て言う。


 「勇者様、私はヒューアム・ケルィ・シュルーチ。近衛騎士団の団長をさせて頂いております。勇者様の戦闘訓練を任されました、これから宜しくお願い致します」

 「いえいえ、こちらこそ。これから訓練、宜しくお願いします!」

 「「「宜しくお願いします!」」」


 ヒューアムさんは、置いてあった木箱を指して僕達に言った。


 「それは訓練用の武器です。最初は勇者様の今の実力を計る為に、一回私と戦って貰います。その木箱の中から好きな武器を選んで下さい」


 ヒューアムさんの言葉に、僕達はそれぞれ武器を取っていく。

 僕は……剣で良いかな。

 素人が扱いの難しい武器とか、使えるとは思えないし。

 出来れば刀があれば良かったんだけどな。

 やっぱり刀は格好いいから使える様になりたいしな、今は無理でも。

 後で創造で創ってみるか。

 さて、使う武器も決まったし、誰から戦うかだけど………。


 「最初は幸希さんで良いんじゃないかな」

 「俺はそれで構わないぞ」

 「私も霜狩さんで良いと思います」


 うん、全員一致で幸希さんが最初だな。


 「そうか?じゃあヒューアムさん、宜しくお願いします!」

 「はい、シモカリ様以外の勇者様は少し離れていて下さい」


 僕達はヒューアムさんの言葉に従って、城の通路まで下がった。

 ヒューアムさんと幸希さんは、少し距離を空けて武器を構えている。

 ヒューアムさんの武器は剣で、幸希さんも剣を使うみたいだ。


 「幸希さんも剣を使うんだ。健也と妃美奈さんは、どっちが勝つと思う?」

 「俺はヒューアムさんが勝つと思うぞ。いくら幸希さんが元自衛隊でも、こっちでの戦い方はヒューアムさんの方が分かってるだろう」

 「えー、そうかなぁ?」


 健也はヒューアムさんが勝つと思ってるのか。

 ちゃんと理由もあるし、参考になるな。

 妃美奈さんは、別の意見があるみたいだ。


 「じゃあ、妃美奈さんは幸希さんが勝つと思うの?」

 「うん、だって霜狩さんだよ?こっちには無い戦い方で、ヒューアムさんに勝てるんじゃないかなぁ」

 「成る程ねぇ………」


 妃美奈さんの言う事にも、説得力はあるな。

 あっちの戦い方はこっちの世界の人は知らないから、意表をつけるかもしれない。


 「あ、始まったよ。幸希さんがヒューアムさんに斬りかかった」

 「ねぇ、阿皇君はどっちだと思うの?」

 「僕?僕は引き分けかな」

 「うん?何でそう思うんだ?」


 僕の答えに、健也が聞いてくる。

 何でって言われてもなー。


 「ヒューアムさんは近衛騎士団の団長をやってる程の強者。でも、幸希さんは勇者で戦い方も分かってる。基礎能力だとヒューアムさんの方が高いけど、この戦いは実力を計る為のものだから、ヒューアムさんは本気をだせない。だから、この戦いだけなら引き分けになるんじゃないかな」


 まあ、そうなるって保証は出来ないけど。

 幸希さんの技術にもよるしなー。


 「成る程な、それなら分からなくなってきた」

 「はー、凄いね、阿皇君。そんな風に考えられるなんて」

 「別に凄くないよ。ほら、それより今は幸希さんの方を見ないと」


 二人は今、剣で斬り合っている。

 幸希さんが斬りかかって、それをカウンターでヒューアムさんが斬りつけている。

 うーん、このままじゃ幸希さんの体力が先に切れちゃうな。

 それは幸希さんも分かっているのか、最後に強く斬りつけ、一旦距離をとる。

 幸希さんはまた攻撃に移ろうとしたが、ヒューアムさんが剣を下げて止まった。

 幸希さんの分は終わったみたいだ。

 ヒューアムさんが幸希さんに近づき、話始める。


 「これでシモカリ様の今の実力はある程度分かりました。まあ、何かを隠している様ですが。本来は別の武器を使うのでは?」

 「ありゃ、分かっちゃったか。でも、あれは威力が高すぎて、模擬戦じゃ使えないんだよ」

 「成る程、ではいつか見せて頂けますか?その武器に、とても興味があるので」

 「ああ、今度見せてやるよ」


 なんか話してるけど、さっきより仲良くなってるみたいだ。

 一回戦ったからかな、よく分からないけど。


 「勇者様、次は誰がやりますか?」


 ヒューアムさんがこっちに聞いてくる。

 次か、誰がやるかな?


 「ねぇ、次は誰がやろうか」

 「律紀で良いんじゃないか」

 「阿皇君じゃないでしょうか」


 えー、二人揃って僕なの?

 仕方ない、行きますか。

 僕は幸希さんと代わって、ヒューアムさんに向き合う。


 「アコウ様ですか。本気でやって下さいね」

 「あはは、お手柔らかにお願いします……」




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