プロローグ«神との会話»
「あー、えっと、ここ、どこ?」
気づいたらそこは真っ白空間だった。
正にラノベの様な状況が今、目の前に広がっていた。
「えーと、ラノベだと女神様が出てきて……」
「はーい、その女神ちゃんだよー!」
本当に出てきたよ…………。
突然目の前に現れたのは、10歳位の少女だった。
髪は金髪、青い瞳で、整った顔立ちをしている。
この子が言うには、女神らしいが………。
「じゃあ、僕は転生するのかな?」
「その通りだよー!いやー、最近の子は話が早くて助かるよー。ラノベだっけ?随分便利な物を作ってくれたよねー」
神に感謝されるって、ラノベって一体………。
と、気づいたら女神様が俺の顔を覗き込んでいた。
「なんですか、女神様?」
「いやー、君が随分落ち着いてると思ってね?今までの子は、状況は分かっても凄い慌ててたからさー」
「ああ、成る程、そういう事ですか。僕は昔からこうなんですよ。で、転生って何をするんですか?」
「あ、そうだった。えっとねー、君がするのはね、正確には勇者召喚なんだよねー」
「勇者召喚?」
って、あの勇者召喚?
え、僕、勇者なの?マジで?
「勇者召喚って、あの勇者召喚ですか?」
「うん、そうだよー!それで、最初に君に向こうの世界、ニーアルの一般常識を覚えて貰わなきゃいけないんだけど、大丈夫かな?かなりの激痛がするんだけど」
「はい、大丈夫です。さっさとやっちゃって下さい」
一般常識が無くちゃ、向こうでやっていけないって。
勇者召喚されて、直ぐに死ぬのは俺、嫌だからね?
「そう?じゃあ、やるよー!えいっ!」
「ぐっ!?」
女神様が俺に向けて手を振るうと、突然俺の頭に酷い痛みが走った。
洪水の様に知らない知識が、情報が流れ込んでくる。
その痛みは、時間が経つにつれて収まっていった。
女神様が首をかしげて聞いてきた。
「どう?ちゃんと思い出せる?」
「はい、ちゃんと覚えられた様です。それで女神様、次はどうするんですか?」
「本当に落ち着いてるなぁー、君ー。えっとねー、次は君のスキルを決めるよー!スキルやステータスについては、分かるよね?」
「はい、問題無く」
ステータスとは、自身の情報を視覚化したものと言って良いだろう。
スキルは、簡単に言えば能力の事だ。
努力して覚えたもの、生まれた時から持っていた才能、神様から与えられたものと様々だ。
「じゃあ、欲しい能力を言ってねー!なんでも良いよー、こっちがほぼ無理矢理やらせるんだし!」
「え、本当にどんなものでも良いんですか?」
「うん、そうだよー!まあ、強すぎるとある程度制限はつけるけど、軽いもんだしねー」
本当にどんなものでも良いんだ。
なら、慎重に考えないといけないな。
異世界に行って役に立つもの………………。
戦闘に役立って、他の事でも役立つもの………………あった!
「女神様、創造の力って大丈夫ですか?」
「んー?大丈夫だよー!だけど、君はそれで良いのー?」
「はい、問題ありません」
「じゃあ、はいっ!」
女神様が、手に光の玉を造り出して、俺に投げてきた。
玉は俺にぶつかって、溶ける様に消えていく。
それと同時に、何かが俺と混ざる様な感覚がした。
これが創造の力なんだろうか。
どっちにしろ、心地よい感覚だった。
先程混ざったものも、既に自分の一部の様に感じる。
「どうー?ちゃんと貰えたー?」
「はい、ありがとうございます、女神様」
「良いよー、別にー。じゃあ、そろそろ勇者召喚されるけど、頑張ってねー!」
「はい、ではまたいつか」
下に魔法陣が現れて、光を放った。
そして、俺の意識はそこで途絶えた……。