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「あたし、凛が好き」
初めて告白されたのは半年前――ようやく桜が八分咲きになり始めた、四月のある日の昼休みのことだった。校舎裏の、暗く湿っぽいところに呼び出して、普段とは違う真剣な顔つきで、理子はその言葉を口にしたのだ。
「友達として、とかじゃないよ?」
いわれなくてもわかっていた。
それがどういう意味かも、その気持ちが冗談でないことも、その顔を見れば明らかだった。
それまでの一年を振り返ってみれば思い当たる節がないわけじゃなかった。でもそれは私が気づけなかっただけのことで、理子にしてみれば昨日今日の話ではなかったのだ。