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その無傷なもの――それはつまり私自身だった。
私が、傷つきたくないだけだったのだ。
そんな単純なことを、こんな風になるまで理子を傷つけないとわからなかった私は、バカだと思う。本当に大バカだと思う。
でも、そんな大バカな私を理子は好きだといってくれた。誰よりも大好きだといってくれた。
一生懸命な私が好きだって。
初めて好きになった人が私でよかったって。
ありがとうって。
これまでがそうだったように、きっとこれからも私は理子をたくさん傷つけていくだろう。理子も理子で私を傷つけていくかもしれない。そのことで私たちの関係は終わってしまうかもしれない。
それは怖い――けど、でも。
そうじゃない可能性だって、未来だってあるはず。
理子が見る夢のように、理子のおばあちゃんが抱き続けていた想いのように。