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頂上は風が強く吹いていた。陽も傾き始め、あたり一帯を薄暗い影が包んでいる。
ぐるりには柵が廻らしてあって、その下に置かれていた長鉢には真紅い彼岸花が毒々しく咲き誇っていた。それらの中心には見上げるほどの高さの時計台が据えられていて、私たちはそこから出てきたのだった。
時計の針は、当然のように十二時で止まっていた。
私はその下に佇んで、しばらく理子の背中を見ていた。
「あたし、凛が好き」
それまで柵にもたれかかって景色を眺めていた理子は、突然私を振り返って、なんども目にした真剣な顔つきで、なんども耳にした言葉を口にした。
理子の塔がまたひとつ、高くなってしまった。いったいどこまで積み上げるつもりなのだろう。
これ以上積み上がる、その前に――壊さなくては。
私は神さまになるんだから。
大きく息を吸い込んで、いう。