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これまで理子が一方的に想いを伝えていただけで、私の気持ちを尋ねることや返事を求めてくることは一度だってなかった。もちろん私からいう機会はいくらでもあったのだけど、わざわざ口にしなくともいずれ理子のほうから離れて行くだろうと、そう思っていたから、あえていわなかった。
でも、理子は離れて行かなかった。
だから、私から離すしかなかった。
夢を覚ますしか、塔を壊すしかなかった。
好きだった絵本の塔は、神さまの手によってこなごなに砕かれてしまっていた。
それなら、私も神さまになろう――。
そう、決意したはずなのに。
不規則な足音は階段を登り切るまで続いた。