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「ねぇ、凛。今日の放課後、ちょっと時間ある?」
彼岸に入り涼しさが増し始めた九月の下旬、いつものように理子が誘ってきた。
場所は学校裏の丘にある、円柱型の展望台だった。
砂まみれの丸太階段をいくつも登った先に、その展望台はほとんど無意味に設置されていた。開けた場所にただひとつ、赤茶けたレンガを積み重ねて、心持ち枯れかけた蔦を全身にまといながら、空へと昇るようにまっすぐ伸びていた。
いつも目にしていたからその存在は知っていた。
理子に誘われる今日まで一度も訪れたことはなかったけど、間近で見ると荘厳な佇まいの中に、不動の重みと悠久の時間を感じた。
あるいはそこだけ、すべてが止まっているかのようだった。