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アーサー・リンカ  作者: 由岐
第7章 夜空の岐路
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2.魔導師とは

 それぞれ用事を済ませた私達は、ルーガくんとルフレンくんの二人と時計塔の下で落ち合った。

 そこから大陸の最北端リーカミュへ向かうべく、まずはイゲイルを目指してキャメロットを出発した。

 街道沿いに進んでいると、同じく王都から北に向かう様子の馬車がやって来た。乗っているのはどうやら商人ではなく、魔物討伐を生業とする討伐ギルドの人々のようだ。


「あらどうもー! お兄さん達どこ行くの?」


 馬を操る活発な女性が声をかけてきた。


「あー、これから俺様達イゲイルに行くんスよ!」


 そんな女性に人当たりの良い笑顔で答えるルーガくん。

 アヴァロンのカノンに何かを依頼された彼は、普段と変わらない明るいムードで振舞っている。

 ルーガくんが行動に出るとしたら、イゲイルに到着した日の夜……気を抜けないね。

 彼とアヴァロンとの関係を知っているのは私とアーサー、そしてマルクスさんの三人だけ。

 ルフレンくんには隙を見付けて伝えておいた方が良いね。今夜は凄い事になるだろうから。


「えー、イゲイルに?」

「偶然ねー! アタシ達もこれから行く予定なのよ!」


 テント状の荷台からひょっこり顔を出した奇抜な髪型の大柄な男性……というか女性っぽい男性が、アーサーやマルクスさんの姿を目にした途端表情を一変させた。


「あらやっだぁん! すっごい良い男揃いじゃないのォ!」

「な、何だこのバケモ……んむっ!?」


 余計な事を口走りそうになったアーサーの口を咄嗟(とっさ)に押さえたマルクスさんは涼しい顔をしている。


「それはどうも」

「ねぇ、どうせなら一緒に行きましょうよォ。まだ定員には余裕があるしぃ……馬車でなら五日はかかるところを二日ちょっとで行けるのよ。どうかしらぁん?」

「ありがたいお話だと思いますが……どうしましょうかリンカさん」


 不安の色を隠し切れないルフレンくんが振り向いた。

 ルーガくんとマルクスさんは気にしていないようだし、アーサーもあの鎧を着て長距離を移動するのは大変だろうし……。

 このオネエサンに物凄い不安を感じるのは同じだけれど、皆の事を考えれば確かにありがたい提案だと言えるのだ。


「……是非、お願いします」

「ん? 何このちょうちょさん!」

「妖精さん? 妖精さんなのね!? マジもんのフェアリー発見ですよガトリーヌさん!」


 こ、この人ガトリーヌって言うんだ。何かめっちゃ強そう……

 二人のお姉さんに指差され、私は例のガトリーヌさんにガン見されている。

 凍り付いた笑顔を浮かべその場をやり過ごそうとすると、マルクスさんから解放されたアーサーが私とガトリーヌさんの間に立った。


「……コイツは見せモンじゃねぇんだが」


 いつもの不機嫌そうな表情と鋭い眼差しでアーサーが睨み付ける。

 その様子にガトリーヌさんは目を見開き……


「……あぁん! その視線、ゾックゾクしちゃうわぁ!!」

「ああ……?」

「もっと……もっと睨んで! まだ足りないわ! アタシを満足させてごらんなさいよォォ!!」


 頬を薔薇色に染め上げ、身をくねらせて喜んでいるではないか。

 自然と私達は馬車から一歩退いてしまった。

 やっぱりお誘いは断るべきだったかも……

 そんな後悔ももう遅く、彼女達の馬車に押し込められ早二日が経過した。

 やはりガトリーヌさん達は小規模討伐ギルドのメンバーだったようで、王都に来たのは国中の討伐ギルドが集まるの集会があったからだそうだ。

 この二日間、ガトリーヌさんは隙あらばアーサーやマルクスさん達にちょっかいを出そうとするし、お姉さん二人は私とルフレンくんを可愛がりまくってくる。

 ルーガくんは三人に興味を示されなかったようで、何と無く寂しそうだったけどその方が静かで羨ましい。

 明日にはイゲイルに着く。その日の夜のことだった。


「来たかリンカ、ティジェロ」

「お待たせしました」


 そろそろ魔法の修行を始めるべきだということで、馬車を停めた場所から少し離れた草原にマルクスさんから呼び出されたのだ。


「さて、早速だがまずは二人の得意属性を見極めてみよう。手の平に意識を集中させ、魔力の球を作ってみろ。貴様らならその程度は簡単だろう」


 得意属性を判断するには、使う属性を意識せず発生させた魔力の塊の色を見れば良い。それが本人の得意とする属性となるのだ。

 まあ、私はステータスが見えるからルフレンくんやマルクスさんの属性は知っているんだけどね。ここはマルクス先生に従いましょう。

 私とルフレンくんは右手に意識を集中させ、言われた通りに球を作り出した。


「こ、こうで良いんですか?」

「ああ。ティジェロは青……水属性だな」


 私の手の上には、小さな白球の周りに様々な色のオーラが発生していた。


「マルクスさん、これはどういうことなんでしょう?」

「中心の白は光……周囲のオーラは変幻自在に色を変えるのか。やはり聖霊は特別なんだな」

「変幻自在……。リンカさんは、どんな属性も使えるということなのでしょうか……」

「そうなんだろう。実際、リンカは炎属性と雷属性の付与魔法が使えた。そして聖剣の神殿で仕掛けを解除した際に使った魔力は、聖霊特有の属性……聖属性とも言うべきものまで扱えるんだからな」


 つまり、私はその気になればどんな属性でも魔法を発動させられるということか。

 付与以外にも応用することが出来れば、もっと他にも役立てるかもしれない。


「……ひとまず、ティジェロの得意属性に合わせた魔法から教えていこう」

「はいっ」

「宜しくお願いします!」


 マルクスさんはルフレンくんに杖を構えるよう指示した。


「水は乾いた大地を潤す。つまり、水属性は癒しの効果を発揮させるにはうってつけの属性と言える。回復魔法を学ぶティジェロには丁度良い。貴様にはヒールより効果的な魔法を習得してもらうぞ」

「はい、先生!」


 ルフレンくんにそう返事され、彼はクスリと笑った。


「先生か」

「あっ、す、すみません……つい……」

「いや、それで構わない。魔導師とは、魔法を教え導く師となる者だ。リンカはルフレンの魔力の流れを感じ取れ。回復魔法の基本はまず複雑な流れを汲み取るところから始まる」

「わかりました!」


 こうして、私とルフレンくんは新しい魔法を習い始めることになったのだった。



 

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