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アーサー・リンカ  作者: 由岐
第6章 光の試練
33/47

3.背中を預けて

 階段を降りていくにつれて、痺れるような空気を肌で感じる。

 神殿とは、邪悪な気から精霊を護る為に建てられたものだ。

 本来なら聖なる気を留めておくのに適した場所。そこへ破れた結界から流れ込んだ闇の気が充満しているのだから、外よりも魔物を活発化させてしまう。

 さっきのソディとの戦いで皆レベルが上がり、それにルフレンくんも来てくれた。


「えっと、アーサーさん……僕、自分で歩きますから!」

「あ? ……まぁそれもそうだな」


 階段を降りきってから、アーサーは入り口から担いできたままだったルフレンくんを下ろしてあげた。


「ほらよ」

「あ、ありがとうございます」

「てめぇすげぇ軽いのな。ちゃんと飯食ってんのか?」

「食べてるはずですけど……」

「子供の体重なんてそんなもんじゃないッスかね」


 全員降りてきたことを確認して、光の祭壇のマップを脳内イメージでチェックする。

 ゲームの頃と同じ、見覚えのあるマップだ。


「……敵が近付いて来てます。皆、戦闘準備をお願いします」

「巫女は俺とティジェロの後ろに居ろ。魔物には指一本触れさせん」

「はい! みなさん、どうか無理はなさらずに。危険だと思ったらすぐに引き返しましょう」


 十数メートル先から近付いて来る敵のアイコンを把握しながら、皆のステータスを開いた。


イドゥラアーサー・レオール

LV.25

・HP1935/3062

・MP126/160


マルクス・リッグ

LV.25

・HP1996/1996

・MP12/30


ルーガ・ルーチェ

LV.24

・HP1840/2701

・MP174/218


ルフレン・ティジェロ

LV.23

・HP1768/1768

・MP273/273


 よかった。ルフレンくんのレベルがそんなに離れてない。後衛は任せられそう。


「ルフレンくん。私は魔物の気配や弱点がわかるの。付与魔法は私に任せて! ルフレンくんには今回は回復に専念してもらいたいんだ。お願い出来るかな?」

「わかりました!」

「敵と接触する前に、アーサーとルーガくんの回復をお願い。アーサーは前衛を、ルーガくんは状況に応じて短剣と弓を切り替えて戦って! 回復と付与でサポートします!」

「はいよっ、リンカちゃん!」

「やってやろうじゃねぇか」


 ルフレンくんは杖を構えた。


「回復いきます! 暖かき光、汝を癒す……ヒール!」


 柔らかな光がアーサーとルーガくんを包み、二人のHPが回復した。


「お、マジで回復魔法使えんだな!」

「これで思う存分戦えそうッスね!」

「えへへ……」


 照れて頬を掻くルフレンくん。

 この動作は計算ではなく天然でやっているのだから、彼の加入後、美少年好きはルフレンくん沼に間違いなくはまってしまうことだろう。

 私もルフレンくんの天使っぷりに悶えるタイプだったりする。あー可愛い。癒し系ショタっ子万歳!


「おっと、魔物の群れが見えてきたッスね!」


 祭壇へ続く通路には大量の魔物が密集していた。


「あれは……ゴブリンだな。何だ、ただの雑魚じゃねぇか」

「集団戦闘を得意とする連中だ。取り囲まれれば雑魚でも脅威となる。油断は命取りだぞレオール」

「普通のゴブリンより凶暴性が増してるから、間合いには気を付けて!」

「チッ、わかったよ」


 森で遭遇したキノコブリンやタケノコブリンのような小さな身体のゴブリンは、鋭い爪を武器にする者や剣を持った者まで様々だった。

 アーサーはエクスカリバーを引き抜き、眼前のゴブリンの群れを睨み付ける。


「こっからあのゴブリン共を片付けて、奥の祭壇まで巫女を連れてきゃ良いんだろ? 全滅させるには流石に骨が折れそうだが、結界を張る間はどうすんだ。俺とリンカもてめぇを手伝わなきゃならねぇんだろ?」

「お二人の力添えがあれば、結界を張るのに時間はかかりません。一度結界を張り直してしまえば魔物の活発化も抑えられます。その後完全に殲滅すれば良いかと思います」

「少しの時間稼ぎなら俺やルーチェに任せておけ。先駆けは頼んだぞ、レオール!」

「ハッ、てめぇに任されるまでもねぇ! 覚悟しやがれゴブリン共!」


 敵陣へと駆けていくアーサーは、向かって来るゴブリン達に剣を振るっていく。

 ルーガくんもそれに続いて短剣で次々と敵を斬り裂いて、光と共に消滅させている。


「これはドロップアイテムの回収が楽しみッスね、アーサーの旦那!」

「終わったらたらふく飯食いてぇな……おらぁ! 微塵斬波!」


 多少のダメージは受けてしまうものの、アヴァロンのソディに比べればゴブリンの群れは楽な相手だ。

 ルフレンくんにはこまめに回復してもらい、アーサー達が倒しきれずに近付いてきたゴブリンはマルクスさんが杖で直接攻撃をしたり、私が囮になることでテノジェさんから引き離していく。

 そういったゴブリンは私達だけでは仕留めきれないから、遠距離からルーガくんの弓で倒してもらうしかない。


「アーサーさんもルーガさんも、とても強い方なんですね。僕も見習わないと……!」

「その若さでそれだけの魔力があるんだ。貴様はまだまだ伸びるさ」

「ルフレンくんの魔法、すっごく頼りになるよ。私もマルクスさんに魔法を教えてもらうから、一緒に頑張ろうね!」

「は、はい! 頑張ります!」


 十四歳で生まれ育った島を出て、魔物に臆することなく戦場に立っているルフレンくん。

 マルクスさんの言う通り、きっと彼はこれから更に成長して素晴らしい魔導師になることだろう。

 誰かを助けたいと強く思う心と、健気な向上心がルフレンくんを立派な大人にしていくはずだ。


「祭壇までもう少しです! 皆さん、気を抜かずにいきましょう!」


 彼の輝く未来を守る為にも、この旅は失敗させられない。

 ゲームの頃と同じなら、この先にはボスが居るはず……!


「な、何なんスかあのでっかいゴブリンは!?」

「コイツらの親玉登場ってかぁ?」


 祭壇の前で私達を待ち構えていたのは、杖を持った巨大なゴブリンだった。



 

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