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アーサー・リンカ  作者: 由岐
第6章 光の試練
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1.夢から目標へ

 メインストーリーイベント【光の試練】は、キャメロット神殿の祭壇エリアに到達すると始まる。


「ここから先は、わたしと勇者様のお仲間だけで進まなければなりません。それがキャメロットの試練です」


 ソディと戦った丘を登った先に、祭壇のある建物への入り口があった。

 扉の先は地下へと続く階段になっていて、奥に渦巻く闇の気配が濃い。この身体になってから、本当に闇の気配を強烈に感じられるようになってきた。

 いかにも危険そうな気配……。前にゲームで来た時はルフレンくんが居たから良かったんだけどな。


 ゲームの〈ファンキス〉では、この時点でルーガくんは仲間ではなかった。本来ならこの神殿に来る前にイベントが発生して、後方支援専門の魔法職ルフレンくんが居るはずだったのだ。

 しかし、ゲームが現実になったかの世界ではあらゆるイベントの発生に前後が生じたり、違う展開が起きている。


「この先は魔物で溢れかえってますね。濃密な闇のエネルギーを感じます」

「その通りです。聖剣に力を与える光の試練は、巫女と共に光の精霊に祈りを捧げること……。本来ならばどの神殿よりも簡単な試練なのですが、今はこんな状況ですから……」

「難易度が跳ね上がってるっつー訳か。良いじゃねぇか、魔物を斬りまくってりゃ祭壇まで行けんだろ?」

「それはそうかもしれないッスけど……」


 乾いた笑顔を浮かべて地下を覗くルーガくん。

 確かにアーサーの言う通りテノジェさんを守りながら祭壇まで行けば、それだけで試練はクリア出来たも同然だ。


「試練に挑めるのは、勇者様の旅に最後まで同行する覚悟がある方だけです。エルザ様やシンク様、ファルータ様は一緒に行けません」

「レオールの言う様に、魔物を倒すことは正しい。そうしなければ祭壇には到達出来ないだろう。だが、数で攻められればこちらが圧倒的に不利だ」


 マルクスさんがそう言えば、アーサーはすぐに眉間に皺を寄せて睨み付けた。


「んな事わかってる。俺とルーガとマルクス、それとリンカの戦術と支援だけじゃ、回復までカバーして進めねぇのはどうしようもねぇ」

「ご、ごめんなさい……」

「お前が謝るこたぁねぇだろ。マルクスが回復魔法バンバン使えてりゃ、こんな事で悩む必要も無かったんだ」


 それはそうかもしれないけど……


「あ、あの……マルクス・リッグさんは、こちらにいらっしゃいますでしょうか……!」


 丘を登ってきた少年は、息を切らしながらこちらにやって来た。


「俺がマルクスだ。貴様は何者だ?」


 少年はマルクスさんを見上げると姿勢を正す。

 アーサーとルーガくん達は、そんな二人のやり取りを何だ何だと眺めている。


「ええと……ぼ、僕はルフレン・ティジェロと申します。マルクスさんにどうしても魔法を教えていただきたく、ここまで来ました」

「はぁ……マルクスの弟子になりてぇってのか」

「そ、そういうことに……なります」


 おちょくるような目で彼を見るアーサーに、少し怖がった様子で答えている。


 まさかこのタイミングでルフレンくんが来てくれるなんて……!

 細く滑らかで、少し癖のある優しい空色の長い髪を持つ少年ルフレンくんは、ほんの数ヶ月前に魔法を勉強し始めた魔法使いの卵だ。

 天才とまで言われるマルクスさんに強い憧れを抱いていて、そんな彼に教えを請う為に私達の旅に同行してくれるパーティーメンバーの最後の一人。それが彼である。

 近いうちに会いに行かなきゃとは思ってたんだよね。


「……ティジェロ。貴様は何の為に魔法を学びたい?」

「人を、生かす為に……です」

「生かす為だと?」


 ルフレンくんは聞き返したマルクスさんの言葉に頷き、俯いた。


「僕は、体力がある方じゃなくて……部屋で大人しく本を読んでいるような、インドアな性格です。そんな僕は、ある日魔法について書かれた本を読みました。その本には簡単な魔法の使い方が載っていて、試してみたらすぐに使えたんです。それを知った両親が、僕の将来の為にと町の魔法教室に通わせてくれました」

「そこで俺の名を耳にしたのか」

「はい! ……マルクスさんのような、素晴らしい魔導師になりたいと思いました。それが、四ヶ月前の出来事です」


 四ヶ月前、という言葉にマルクスさんの眉がぴくりと動いた。


「……貴様の出身は?」

「……アルマク島です」

「そこって確か、ものすごい伝染病の……!」

「はい……。僕が島を出て、こちらの大陸にやって来たのが四ヶ月前。そして、伝染病が流行り始めたのも……」

「時期が重なってんのか」

「はい。僕は幸いにも伝染病にはかかっていませんでした。でも……あの島には、僕の家族が居ます」


 そう。ルフレンくんは運良く伝染病が蔓延する前にアルマク島を出ていたのだ。

 島ではなく、大陸側の魔導師に魔法を習いに行っていたのが不幸中の幸いだった。


「僕は……家族や、島のみんなを助ける為に魔法を極めたいんです!」



 

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